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夢の心139
「貴方次第なのです」と女性が妻と同じ声で言った。
不条理で混沌としている夢の迷路を、私は女性の声を頼りにして、振り返ることなく先に進む。
妻は白い闇の目の化身だったのだろうかと私が寸暇考えると、それに呼応して女性が言った。
「考えても仕方ありません。夢の迷路は貴方自身の心の問題なのだから、貴方自身が突破するしかないのです」
私は泣き笑いの表情を浮かべつつ言った。
「僕は僕自身の心に嘘をついて自分を騙して、欺き苦しめているのか?」
女性が答えた。
「そうです」
私は歩調を速め、見慣れた道程を家に向かって進んで行く。
「僕が自分の心に嘘をつかないようにするにはどうすれば良いのだ?」
女性が即答した。
「嘘をつかないように努力するしかありません」
私は苛立ち訊ねた。
「だからその努力はどうやったら実るのだ?」
女性が妻と同じ声で答えた。
「貴方次第なのです」




