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夢の心138
「駄目です。振り返れば貴方は白い闇の目になり、自我崩壊して果てるのです」と女性は言った。
私は妻の射ぬくような視線を背後に感じ、振り返ろうとすると女性が再度諌めた。
「駄目です。振り返ってはいけません。振り返れば貴方は白い闇の目になり、自我崩壊して果てるのです」
その言葉を聞いて私は振り返るのを止めて訊ねた。
「僕は黒い闇の快楽にはなれないのか?」
女性が答えた。
「それが突破口になると思うのならば、貴方はそれを目指すしかありません」
振り返るのを止めると、今度は私は自分の手の平に妻の射ぬくような視線を感じ取り、それを握り締めつつ言った。
「分かった」




