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夢の心132
「分かったが、僕には家族愛は芽生えていない」と私は言った。
私は怖じ気づく気持ちを奮い起たせ、鏡の渦巻く反射を直視した。
その途端無数の白い闇の目に激痛が走り、私はもんどりうって、のたうち回り叫んだ。
「痛い、痛い、痛い!」
妻もどきの女性が言った。
「見つめるのを止めて下さい」
その声は私自身が発しているのか、妻もどきの女性が発しているのか分からないままに、私は見つめるのを中断した。
すると無数の針に刺されているような激痛が嘘のように消えた。
それを確かめつつ妻もどきの女性が言った。
「貴方の心次第だというのが分かりましたか?」
私は息を切らしながら答えた。
「分かったが、だが僕には家族愛は芽生えていない」




