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夢の心109
「邪魔だから、出て行きなさいよ」と妻は白い闇の心である私に向かって言った。
自分自身の断末魔の絶叫を遠くに聞きつけ、私は瞼を開いた。
すると私は私ではなく妻になっていて、妻である私の視線は幼い二人の子供達に虚ろな感じで注がれている。
子供達は児童公園の遊具で、他の子供達に混じって無邪気に遊んでいる。
白い闇が凝固して、妻の心にそっと入り込み、苦悩と悲しみを帯びた心持ちを湛え、そこはかとない憂いを帯びているのに、その心に入り込んだ私の白い闇の心には、その憂いが何故か伝わって来ない。
妻の心に入り込んだ私の空っぽの心。
その空っぽの心には妻の苦悩や悲しみが伝わって来ないのだ。
そんな面持ちのまま、私は慈しみも愛も失せた虚ろな視線を二人の幼子に注いでいる。
すると哀愁を湛えている妻の心が、入り込んだ私の白い闇の心に向かって静かに言った。
「邪魔だから出て行きなさいよ」




