1-1 森は静かに、少女はさまよう。
小説書くのも投稿するのも初めてなのでテストを兼ねて投稿。物語の展開のめどが立ったら定期的な更新をできるようになりたいですが、今のところ不定期という形でやらせていただきます。
少女はただ一人、薄暗い森の中を歩いていた。
森が暗いのはいつものことだ。鬱蒼と生い茂る森林は重く厚い。木肌だけでなく葉までが黒みを帯びていて、明らかに普通でない木々は太陽の光を地上に届けさせない。この景色を一目見れば分からない者はいない。ここは異常地帯だ。
そんな人の入ることの許されない森で、平然と悠然と歩みを進める少女は、人としてとても異質なモノに見えた。漆黒の髪は暗闇支配する森の中でも目につき、伸ばした前髪は両目にかかって表情を隠しているため人間味が感じられない。
しかしそれでも少女が不機嫌であることは少女の発する尋常ならざる苛立った雰囲気から明らかだった。
——私はイキモノが欲しいのに——
この森のような異常地帯、被侵食領域では全ての生物が外部の生物とは全く異なる生態を持っている。そしてその全てが外部からの侵入者に対して攻撃的な反応をすることが知られている。
——どうして森がこんなに静かなのよ!——
森の生物、通常とは異なりより強靭で、より凶暴な生き物たちは変質生物と呼ばれ、人類の存続を脅かす恐るべき存在だ。彼らはテリトリーに入った人間に容赦なく襲いかかり、外部の生物より遥かに強化された肉体と攻撃性は人間を狩られる弱者の立場へと追いやった。
——いない……いない……どこにもいない! 何もいない! なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでいないのよ!! お腹が空いたお腹が空いたお腹が空いた食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい!!——
森の中では人間は弱者。入るのならば命を懸けて、覚悟を持って挑むもの。
そんな森の中でも表情の見えない少女には圧倒的な余裕があった。強者として、獲物を求めて森をさまようのだった。