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一話一話が短いですが長く書くって難しいです。
事の起こりは現在補佐としてついている管理神の下に配属されたことだったか。そのときすでにいた先輩補佐とのウマが合わず、衝突ばかりしていた。そんなある日、日課の作業が終わって管理世界を見ている時異常を発見した。すぐさま管理神へと報告に向かおうとしたのだが、先輩補佐はあろうことかこの異常事態を握りつぶすべく、襲いかかってきた。補佐役はその性質上神に近しいレベルの力を有している亜神とも呼べる存在。そんな二人が本気を出してぶつかりあえば至高界を揺るがすほどの衝撃が出るのも当然のこと。この争いで未処理の魂が一つ行方不明になるなど思いもしなかったが……。
補佐役がスキル選びに没頭した天音から意識をはずし、とりとめもなく昔を思い返していると、その天音から声がかかった。
「補佐役さん、選び終わりました」
「……ああ、見せていただけますか?」
つい物思いにふけってしまったために反応がじゃっかのくれはしたものの、補佐役は己の職務を全うせんと動き出す。
アマネ・クロウ
[身体強化・極]
[装備強化・極]
[精霊の眼]
[完全解語]
[衝撃伝導操作]
スキルブックの表紙の裏を見た補佐役はつい苦笑した。
「また変わった物を選びましたね。[精霊の眼]は物の本質であったり力の流れであったりを見ることができる魔眼系スキル。[完全解語]はこれから行く世界のあらゆる言語をマスターした常態になる言語系スキル。ここまでは分かりますが、[衝撃伝導操作]はなぜ?」
「前からやってみたかったんですよ。内側から破壊するパンチって」
「怖いこといいますね。まあ、構いません。これは天音さんへの慰謝料ですからね。正直魔法でも選ぶかと思っていましたが」
「それも考えましたけど、自前で持ってるスキルを活かせそうだったので」
「……ああ、確かに強化状態で叩いた方が強いでしょうね。ではこれで慰謝料の支払いは完了となります。次はあなたを召喚世界側に送る作業ですね。天使たちは通常業務に戻ってますし、邪魔にならないうちにさっさとやってしまいましょう」
そう言って補佐役はささっと天音の足もとに魔法陣を展開する。
「では、天音さん。貴女の人生がこれから幸多からんことを」
「神様の慰謝料も貰いましたしきっと良いことがあるでしょうね」
光に包まれる天音に対して補佐役は幸運を祈り、天音は若干の皮肉とともに光の中に消えていった。
「彼女が『ヴァレーアラウンド』で何を成すか。面白そうですね」
補佐役はそう言って自分の上司の下に帰っていく。必要な報告を携えて。
黒鵜天音は困惑していた。自身の眼の前にある光景が信じられなかったのだ。
きらびやかな内装。豪奢な玉座。そして眼の前で二人の女性に対して土下座する王冠を冠した男性。
「どういうこと?」
真っ先に出るのはやはりこの疑問であった。しかしそれに対して答えはなく、女性の1人が言葉を紡ぐ。
「ようこそ異界より喚ばれし勇者。なにゆえ貴女はここへ来たのか?」
自身の疑問は棚上げにして、おそらく呼びかけられたのだろうと考えた天音は少し考えてから言葉を返す。
「私は勇者ではないので分かりかねます」
修羅場って怖いですよね。