表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬の雷(かみなり)

作者: クレヨン

 知ってる?

 雪って音がするんだよ。


 祥子はそう言うと、空を見上げた。

 

 遠くに、雷の音が木霊する。

 北陸の冬は、雷と共に雪がやってくる。


 鉛色の重い雲は、低く立ち込めていた。

 息は白いが思ったほど、寒くはなかった。

 この雲のおかげだ。

 ここに降る雪は、重い。

 重い雲から、シャーベット状の雪が落ちてくる。ぼた雪というものだ。

 

 「今年も来たね。」

 白い息を吐いながら、地面に目をやった。

 アスファルトに雪が染み付いていく。はじめは、すぐに溶け水になった。アスファルトにまだ温かさが残っていた。


 遠くで、雷がなった。

 おそらく、5回目の冬のシンボルをきいた。

 

 祥子と私は、顔を上げた。

 辺り1面、町は泣いている。

 冬の澄んだ空気は、私たちの心を洗ってくれる。このギャップが私は好きだ。


 「お靴、濡れちゃう」

 ピンク色の長靴は、祥子のお気に入りだ。

 このために履いたのと聞かせてはいたけど、祥子には伝わっていない。

 

 毛糸の手袋を触ってみた。

 冷たい!

 「祥子ちゃん、おてて平気?」

 祥子に聞く。

 「平気」

 赤いぽっぺに、きのう抜けた前歯がわかる笑顔になんだか、ありがとうの想いが込み上げきた。

 

 私は祥子を抱く。

 心臓の音が聞こえた。

 同じ時間を刻む証だった。

 

 「どうしたの?」

 不思議そうな娘の声に、鼻をすすりなが首をうんうんと頷いた。

 

 一台のクルマが、止まった。

 「お待たせ」

 「遅い」

 「遅い」

 祥子も真似をした。


 「さっ、乗った。」

 私たちはクルマに乗った。


 雷は、まだなっていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 子どもの何気ない言葉は そのままで詩のようだと思う時があります。 祥子ちゃんの雪の降る音が、どんなだったか聞きたくなりました。 北国では雷が雪を連れてくるとか、 雪を起こすとか言いますね…
[良い点] この度はなろうコン感想希望という事で一言残させて頂きます。 不勉強ながら冬にも雷が鳴る地域があることを知りませんでした。 故にちょっと調べてみると……なるほど、その土地の景色が見えてくるよ…
[良い点] 雪の大関。 芦原に近い田舎駅。 雪の降りしきる夜でした。 知人宅に不幸があって赴いたことがあります。 とはいっても私は雪道を走れません。 それで鉄道にしたのですが、えきからの道順を忘れて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ