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革命運命  作者: 安田勇
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第五章 ゴミのような現実を、たたきつぶせ 「1」

   

 一


「二秒以下で、四体を全滅させるとはな……」

 マウスを操作しながら吉沢元文はつぶやいた。

 ここは、静煙街・神童産業第一支部。吉沢は電脳分析室で、パソコンに向かっている最中だった。

パソコンの画面には数日前のテストバトルを記録した映像が、スロー再生で流れていた。


 被験者は神崎月矢。対戦相手は四体の護衛人形。神崎はたくみな動きで敵の弾をかわし、正確な射撃で人形を一体づつ、始末してゆく。


 何度も見ている映像だった。だが、スローで確認しなければ何が起きているか分からないほどの高速の戦闘だ。神崎にうめこんだ陰陽線は、作り手でも予測できない超人的な力を、持っているのだと思い知らされる。

 思考にふけっていると、ドアが開いて女子社員が入ってきた。大きな茶封筒を手にしている。


「郵便がとどきました」

「ありがとう」


 女子社員が部屋を出たのを確かめてから、吉沢は封筒を開いた。

 中にはCDケースが一つ入っている。テストバトルの映像を停止させてから、パソコンのディスクホルダーを開いて、CDをたたきこんだ。

 すぐに映像ソフトが動き出す。

花畑の中。神崎月矢が走りながら、銃を撃っている様子が画面に映される。場所は波津街と養神街のあいだにある、どこかだろう。


 対戦者が一級神童の平塚修一であることは知っていた。次のシーンでは、神崎が敵に撃ちこまれたショット・ガンの弾をよける動きを見せていた。

神崎が平塚に接近して、銃をつきつける所までくると、吉沢はマウスをクリックして映像を停止させる。


「いくら一級神童でも、平塚には勝ち目はないか」

 最後まで見なくても、戦いの結果は知っていた。この映像の記録者から、すでに報告を受けていた。


 重要なことを思い出して吉沢は携帯電話を取った。平塚修一の名前を呼び出し、通話ボタンを押す。


『す、すみませぇ~ん。吉沢さぁ~ん。この前は、なんかうまくいかなくてぇ~、無傷儚をラチできませんでしたぁ~』


 間のぬけた若い男の声で、謝る言葉が聞こえた。


「かまわないよ、平塚君。それより、傷の具合はどうだい? 君は入院していると聞いたが」

『そうなんですよぉ~。敵の中にスゲエすばしっこいやつがいて、そいつに銃で目ん玉をブンなぐられちゃって、マジで最悪でしたぁ~』


「大変だったな。それほどの傷を負ったならば、この仕事はギブアップした方がいいんじゃないか? 任務に失敗しても、報酬の半額は払わせてもらうよ」


『ま、待ってくださいっ! 今度は絶対にあいつらをブッ殺しますっ! 一級神童の俺をバカにしてきたし、死ぬほどむかついてるんですよぉ! だから、もう一回チャンスをくださいっ! 次は本当に無傷をラチってきますからぁ!』


「分かったよ、平塚君。しかし、次は気をつけてくれよ。人間には命は一つしかないんだ。死んでしまったら何にもならないからね」


 危険をいましめる言葉をかけて、吉沢は電話を切った。人を動かすには思いやりや人情が大事だと知っていた。人はけなされるより、はげました方が自分の思い通りに動くことが多い。

 次に記録者という名を呼び出して、通話ボタンを押す。


「私だ。届けられた資料は確認した。平塚修一は、神崎月矢にリターンマッチをいどむらしい。おそらく、戦いに敗れて死亡するだろう。彼の戦死についてくわしい分析をしたいから、平塚の死体映像を記録してくれ」


『了解しました』

 真面目くさった男の声で記録者はこたえた。

 この男はいつも、感情というものをあらわさない。知り合って、半年が過ぎていたが、一度も世間話をしたことさえない。


「今後、神崎月矢は運命調律師と接触するだろう。二人は高い確率で交戦すると思われる。神崎が生き残る可能性は、高くても五十%前後。

 もし神崎が死亡した場合は、鮮明な死体映像が欲しいな。できれば、死体そのものが手に入れば最高だ。強化戦士の敗戦原因について、知るのに役立つ」


『では、現物が入手できしだい郵送いたします』

 吉沢は電話を切り、ため息をついた。 

 平塚に無傷儚のラチを命じたのは自分だった。しかし、級外神童の少女を手に入れても、自分には一円の利益にもならないだろう。


 本当の目的は神崎月矢を平塚と戦わせて、陰陽線を装備した強化戦士の実戦テストをすることにある。無傷儚のラチは、平塚をあやつる口実にすぎない。


 ――神崎月矢君。君は最大に戦って、最大に勝利してくれなければ困る。

 ――そして、何よりも将来的には最大の敗北をしてもらいたい。新しい強化戦士を作るためには、君の犠牲は必要不可欠なのだよ。


 吉沢は一人で笑みをもらした。今のところ、すべての人間が自分の思い通りにうごいている。

 自分が神になったような気分だった。そして、文字どおり神のように、神童産業全体を支配する日は、そう遠くはないだろう。

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