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革命運命  作者: 安田勇
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第三章 もどらない時代  「2」

  

   二


「ねえねえ、堕星さん。けっこう、あの二人。うまくいってるみたいですよ~。狂暴少年神崎くんも、なんだかんだ言いながら結局はいっしょに行ってるしぃ~。本当に素直じゃないですよねぇ~」


 堤はくすくす笑いながら、両手につかんだ双眼鏡をのぞきこんでいた。二つのレンズは、並んで歩く月矢と無傷を追っている。


 彼女は自分のことは人に話したがらないが、他人の恋愛については、首をつっこみたがるタイプらしい。

 まじめそうに見えても、ふざけた部分もある。女ってのは分からねえなと、堕星は思った。


 堕星と堤は海猫亭から、ひそかに月矢と無傷の後をつけていた。今は遊歩道のわきでしゃがみこみ、植えられたツツジの間にかくれている状態だった。

 月矢と無傷からは百五十メートル以上、距離をとっている。二人がふり返ったとしても、気づかれる可能性は低いだろう。


「あぁ~あ。私も行きたかったなぁ~。どうして、私たちは参加できないんですか?」

「俺たちにゃあ、害虫駆除のお仕事があるからね。……ほら、見ろ。来なすったぜ」


 堕星は堤の双眼鏡をつかんで、強引に向きを変えさせた。

 遊歩道のツツジを乗りこえて、やってくる集団がいた。ハデな金色の髪をした女たち。数は六人。女たちは三十メートルほど後ろで立ち止まって、月矢と無傷をうかがっている。


 へたくそな尾行といえた。あの大人数では通りすがりの人間には、絶対に見えない。

 堤の声が急に硬くなっていた。


「だ、誰なんですか? あの人たち?」

「なんか、娘さんのチンピラ集団みたいだねえ。昨日この街にきてから、ずっと俺っちをつけ回してたよ。

 たぶん、無傷ちゃんか神崎ちゃんに、用事があるんだろうなぁ。しかも、今日の神崎ちゃんは銃も持っていない。襲われたら、ヤバイんじゃねえか」


 堕星は他人ごとのように、のんびりした調子で言った。緊急事態であっても、なぜか心配したり緊張したりできない体質だ。 


「ほっとけませんね、これは。でも、どうして分かったんですか、堕星さん?」

「何か起きる時には、ピーンとくるんだよ。本能というか、第六感ってヤツさ。――堤ちゃんはビリビリする棒を持ってただろ? あれ、用意してくんない」


「え~? ありますけど、何に使うんです?」

 堤は双眼鏡から目を外して、まじまじと見つめてきた。堕星は、ツツジの間から立ち上がっていた。


「悪いニンゲンをひっぱたくのに使うのよ。ついてきな」

 不敵に笑いながら、相棒にそう答えた。

堤は無想鉄道に入る前、神童産業でセキュリティー関係の仕事をしていたと聞いている。並の警官以上に戦いのトレーニングを積み、悪者をけちらしてきたらしい。


 堕星もこの仕事をする前は、街から街をさまよう旅人だった。拳や刃物を使った争いならば週に一度のペースでこなして、生き残ってきた。

 堤とのコンビならば、六人を相手にしても楽勝だろうと堕星は判断した。また、自分にはとっておきの技がある。誰にも語りたくない秘密の奥義だったが。


 月矢と無傷は遊歩道を右に曲がって、一般道に入ってゆく。その後ろを追う六人組の女たちも右に曲がる。連中は遊歩道のはじに植えられたツツジをくぐって外に出た。


 裏道から先回りをするつもりなのだろう。 

 堕星と堤も走り出した。女たちが通ったツツジの間をぬけて右へ向かう。先は路地裏だった。左右を民家にはさまれた細い道で、三人の人間がならんで歩けるぐらいのスペースしか開いていない。


 ほとんど太陽の光がとどかず、深い影になっている。地面には、古タイヤとつぶれたアルミ缶が、いくつか転がっていた。誰かが捨てたマンガと、スポーツ新聞も落ちている。


 都会の汚れが一度に集まったような場所だった。

 路地裏の奥。六人組の女たちは、壁から頭だけを出して相手を観察している。月矢と無傷を襲撃するタイミングを、狙っているのだろうか。


 堕星は自分の口に人さし指を当て、静かにしろと合図をした。堤は何も言わずにうなずく。

 足音を殺して、敵に忍び寄った。六人の金髪女は観察にのめりこんでいるため、背後に気づいた様子はない。堕星と堤は、敵の数歩前まで近づくことに成功した。


「おはようございます! 気持ちの良い朝ですね!」

 堕星は腹の底からの大声で、見知らぬ女たちにあいさつをした。


「ちょっと、あなたたち! あの二人に何か用があるんですか!」

 一方、堤は犯罪者をとがめる女警官のような、第一声をかけた。 


 金髪女たちはおどろいて、壁の外を見ていた頭を引っこめた。全員がそろって、後ろをふり向く。


「うるせぇ~なぁ~。だれだよぉ~? おめえぇ~らぁ~?」 


 リーダー的な女が返事をした。女とは思えないほどの異常に低い声。よっぱらいオヤジでも、ここまで汚らしい声は出せまい。 


「うっひゃあぁぁっ~! き、君たち、スゲエめずらしいかっこうしてるねえ~! 西暦時代の不良ファッションってやつか? 一九九五年ぐらいの『ヒボン』人みたいだなぁ~!」 


 堕星はその集団を見て悲鳴を上げた。衝撃的な外見には、おどろかずにはいられなかった。

 チンピラじみた六人の若い女たちは、ペンキをぬったようなケバケバしい金色に髪をそめていた。顔はさびた鉄のように茶色く日焼けしている。

目はおばけのような濃いアイシャドーをぬりつけている。


 女たちは全員がそろって、セーラー服を着ていた。スカートの長さはひざ上三十センチ以上。

 むきだしになっている足は、電信柱のように太い。


グニャグニャにたるんだ靴下をはいていたが、それが足の短さを強調している。六人とも同じ顔つきと同じ服装で、工場で大量生産された商品みたいだった。商品の一人が文句を言った。


「あんだよぉぉ~? おめえらぁ~、補導員なわけぇ

~?」


「皆さんはあの少年と少女を尾行してるみたいですね

ぇ? 何でそんなことをやるんですか? ちょいと、理由を聞かせてもらいたいんですがねえ、へっへっへ」 


 堕星はもみ手をしながらたずねた。時代劇に出てくる悪徳商人のようなしぐさで。

 一見、相手をおだてている態度だったが、内心は思いきりバカにしていた。


「はぁ~? なんでオメエらにそんなこと言わなきゃならねえのぉ? 何しようと、アタシらの勝手じゃねえかよぉ~」


「勝手なわけないでしょう! よその人を、意味もなくつけまわすなんて、ふつうの人はしないんじゃないですか!」


 きびしい目つきになって堤が反論する。この状況を楽しむ心の余裕は、彼女にはないのだろう。

「この女ぁぁ~! 学校のセンセエみたいなこと言ってるよぉ! すげえ、ムカつくよなぁ! なぁ? なぁ? ムカついちゃうよなぁ~?」


 別の女が大声をはり上げた。自分の仲間を見回して、賛成を求めようとする。

 ぴくりと堤の眉がけいれんした。彼女の中で怒りが限界をこえたらしい。

 真っ赤な顔になって、堤はさけんだ。


「何言ってんのぉ! ムカつくことをしてるのは、あんたたちでしょうがぁぁっ!」 


 仲裁をするのは自分の役目だと悟り、堕星は女と女の間にわりこんだ。まあまあと両者を手で押さえつつ、にこやかな笑顔でチンピラ集団に語りかける。


「悪かった、悪かった! 君たちのようなすばらしい女性が、親とか学校の先生に怒られるワケないよなあ~? 


 君たちは本当にかわいいよ~! 台所にいるゴキブリも、ドブにいるナメクジも、君たちに一目ボレしちゃうぜ。ああ……何だか気持ち悪くなってきた。君らの美しさにノックアウトされて、俺は吐きそうになってきたぞ。うええぇ~」


 堕星はのどを両手で押さえて、おおげさに苦しむ演技をした。女たちを挑発して、怒らせるのが目的だった。

 予定どおり、六人の金髪女の茶色い顔が、みるみる怒りでゆがんでゆく。


 金髪女の一人が、細長い金属片を取り出して、中心の割れ目を開いた。

 中から銀色の刃が突き出てくる。金属片は、百八十度回転をしてグリップへ変形した。――バタフライナイフ。


 女はナイフの先を、堤に向けて凶悪に笑った。

「おぉ~い。あんまりバカなこと言ってると、グサグサしちゃうけどいい~?」


「あぁ~あ。そんなモンでグサグサしたら、楽しい楽しい女子刑務所に入ることになるぜ? 男とエンのない女だらけの世界で、青春時代を終わらせちまうのか? つまんねえ人生だな」


 金髪女のおどしを、堕星は陽気に笑い飛ばした。今まで観察していて、連中の平均年齢は二十二歳以上だと見当をつけた。

セーラー服を着ているのは、西暦ファッションをマネしているからだろうし、異常なまでに濃い化粧は、十代の若さを演じるためだろう。

 女リーダーは、おやじのようにザラザラした声で仲間に命令をした。


「あぁ~っ! こいつら、なんかマジでむかついてきたぁ~! みんなぁ~! 朝だし警察もこねえから、

しばいちゃおうよぉ~!」


 四人の女チンピラはそろって、バタフライナイフを取り出した。

 その瞬間、彼女たちは女チンピラから、女ギャングに格をおとした。

 リーダーだけはナイフを出さなかった。右手を背中に回している様子からすれば、何か別の武器を出すのだろうと堕星は気づいた。


「いよおぉぉっ~! 待ってましたあぁぁっ! 実は君たちと話し合いをする気は、全然なかったんだよなぁ~!」


 期待どおりの展開に、堕星は歓声を上げながら右のそでをまくった。右腕には手首からひじまで、蛇のようにまきついている腕輪がある。それが、らせん状にほどけて、スルスルとのびてゆく。


 長さ二メートル弱の細長いムチに、腕輪は形を変えた。

「これは『カメレオンの舌』っていうムチなのよ。引っぱたかれると痛いぞぉ~」


 堕星は先端にあるグリップをにぎり、猛獣使いの手さばきで地面にムチをたたきつけて威嚇した。


「もう、害虫駆除しかないみたいですね。こういう場合は」 

 堤も黒ぶちのメガネを胸ポケットにしまうと、げんなりした顔でつぶやく。彼女は腰にくくりつけていた棒を引きぬいた。


 長さ四十センチほどの警棒。特徴として、グリップには赤と白の二種類のボタンがついている。両手でグリップをにぎり、堤はふり下ろした。


 ジャキッ――という金属音とともに警棒は三段にのびて、八十センチほどの長さになる。両手持ちの伸縮式警棒だ。堤は長大な警棒を正眼にかまえて、引きしまった表情で敵を見すえた。


「堤ちゃ~ん。この姉ちゃんたちは悪人だけど、天国まで行かせちゃダメだぜ~」

 堕星はとなりの相棒に、楽しげに声をかけた。


「当たり前です! 堕星さんこそ、力加減に気をつけてください!」

「バカじゃねえのぉぉっ! 六対二で勝てるわけねえじゃん!」


 先頭の女ギャングの足が動いた。バタフライナイフで突きかかってくる。堕星よりもはやく堤は前に出た。路地裏に、耳ざわりな金属音が鳴りひびく。

「……くっ!」 


 堤の口から力のこもった声がもれる。彼女は警棒で刃物を受け止めていた。

 おたがいの武器が接触している状態で、グリップについている白い丸ボタンを押した。警棒からむらさきの光が走り、火花が飛ぶ。


 二十万ボルトの電流が、警棒からナイフへ、ナイフをにぎっている相手の右腕へ、一瞬で伝わる。

 女ギャングは体をふるわせて、白目をむいた。生気のぬけた顔で地面にたおれこむ。

堤の警棒は、スタンガンとしての機能もそなえているのだ。


「おらよ!」 


 堕星は二番手にひかえていたギャングを狙ってムチをふるう。敵の手にあったナイフをたたき落とすことに成功した。女は負傷した手を腹にかかえながら、その場にうずくまる。


「バカ女ぁぁっ! 調子に乗ってんじゃねぇぇ!」


 憎しみに燃えた目のギャングが堤にせまっていた。女は大きく腕をふりまわした。横なぐりのナイフの一撃。堤は頭を下にかがめて、数センチの差で敵の刃物をかわす。

 逃げおくれた彼女の後ろ髪の三本が、ぷちりと切られるのを堕星は見た。

大ぶりの攻撃をしたため、女ギャングは体のバランスをくずしている。


「覚悟なさい!」 


 堤は女の背中に警棒をたたきこむ。かん高い悲鳴をあげて女は頭から二度、三度と地面を転がってゆく。これで、前列にいた三人はたおされた。 

 堤の戦いぶりに堕星は感心していた。彼女とケンカをするのは、絶対にやめようと心の中でかたく誓う。三十歳前の若さで、早死にしたくはない。


 堕星は『カメレオンの舌』を、後列の二人にむけてくり出した。

 ムチは二人の右足と左足にからみついた。二人三脚の選手のように、足首をかたくしめあげる。二人のギャングはオロオロするばかりで、身動きをとれずにいた。


「よいしょおぉ~!」 


 堕星は気合を入れながら、綱引きをするように両手でムチを引いた。つながれたギャングの足首は、手前へずらされる。

 二人は片足だけでは立つことはできなくなり、背中からたおれて後頭部を地面に打ちつける。泣き声の合唱がはじまった。二人の相性はバッチリだ。

 その直後、堤が鋭い声で警告をした。


「堕星さん! あぶない!」

「へっ?」


 間のぬけた声を出して、堕星はふり向く。

 最後に残った女リーダーの手の中に、ピストルと同じ形をした小型の十字弓があった。ハンド・クロスボウいう名の武器だと堕星は知っていた。

 弦はすでに張られて矢もレールにセットしてある。いつでも、射撃ができる状態。

 勝利を信じきった笑顔で、女リーダーは引き金を引いた。


「くそオヤジ! 死ねええぇ!」

「やだああぁ~ん! 死んじゃうぅ~ん!」


 堕星はオカマのようなふざけた悲鳴を上げた。

 クロスボウの弦が勢いよくちぢんで、レールに入っていた矢は前へ押し出される。

 矢はまっすぐに、堕星に向かってくる。


 堤は反射的に、自分の顔を両手でおおった。起きるかもしれない最悪の光景を見ないために。

 口ではふざけていたが、堕星は真剣だった。意識を一点に集中させる。銀色の矢の軌道が、はっきりと見えた。

 タイミングを合わせてムチを動かす。

 一瞬の差だった。『カメレオンの舌』は矢にからみついて、止めることに成功した。


「おっと……本気出しちゃったよ」 


 釣り竿で魚を引き上げるように、堕星は何気なくムチを引く。先にくくりついている得物は、針のように鋭いアルミ製の矢だった。


 無事でいる堕星の姿を見ると、堤は胸に手を当てて、ほっとため息をついていた。

「こんなモンが心臓に当たったら、アンタの言うように死んじゃうね。返すわ」


 堕星は指のあいだにアルミの矢をはさんだ。手首のスナップを使って、持ち主に投げつける。ダーツの矢のようにまっすぐに飛んだ矢は、ミニスカートの上から太ももに命中。


「ひいぃぃぃっ~!」

女リーダーは足を押さえて、かん高い声を上げる。

 堕星は両腕を横に大きく広げて、判定を下すスポーツの審判のように、大声で宣言をした。


「ハ~イ! ゲームセット! あんたらの負け。戦闘シーンは終了で~す!」

「そうよ! もう、いい加減にしなさい! どうして、あの二人を追ってたのか、白状したらどうなの!」


 堤は警棒を手の平に当てて、もとの長さに縮ませながら言った。

 戦いに敗北した女ギャングたちは、堕星の前にも堤の後ろにもたおれていた。

 だが、全員がねばりつくような汚い目つきをしている。自分たちが負けたことが、納得がいかないような、いじけた表情で。


「お……い……オヤ……ジ」 


 ふるえた声がした。堕星が目を向けると、五人の女ギャングが地面にはいつくばっていたが、一人だけ立っている女がいる。

 クロスボウの矢を太ももに受けて、ミニスカートから血を流している女リーダー。傷による痛みをこらえながら、両手に拳銃をにぎっていた。


 西暦時代から再生暦の現代まで、使われつづけているオートマチック・ピストルの一つ。――ベレッタ九二F。おそらく、実銃。


「こ、殺してやる。本当にオメエら、殺してやるからなぁ! ひっ、ひっ、ひぃ~!」 

 血走った目つきで、安っぽいおどし文句をリーダーは口にした。

 だが、ベレッタの銃口はぐらぐらと横にゆれている。どう見ても、一度も射撃訓練をしたことがないような、ド素人の手つき。


 銃を見た堤の顔が、一気に青ざめてゆくのが堕星は分かった。 

 さっきまでの強気を失い、彼女は堕星のわき腹をひじでつついて、ないしょ話をするようにささやいた。


「こ、これって、ま、まずくありません~?」

「まずくねえ、まずくねえ。だいじょうぶだから、俺に任せときな」


 堤の心配をよそに、堕星は平然と言いはなつ。たとえ、実銃であっても、どうにかする自信があった。胸ポケットから『セツナ』を出して、タバコを一本くわえると、百円ライターで火をつける。


「うぅ~! 頭がさえて、力がモリモリわいてくるなぁ~」

 のんびり一服をしながら堕星がなごんでいると、堤が思いきり肩を引っぱたいた。


「ちょっと! タバコなんか、吸ってる場合ですか!」

「いってえなぁ! これは、俺のエネルギー補給なの。そう怒りなさんな」 


 顔をしかめながら、堕星は煙を吐き出した。銃弾が当たるより、堤さんのパンチの方が痛いかもなあと頭の中で考えながら。


 堕星と堤の様子を見て、女リーダーは笑った。自分の最終兵器の前では、誰もが命ごいをするのが当たり前というように、強気でくだらない質問をしてきた。


「なあ? あたしらがナイフしか、持っていないと思っただろぉ? なあ? なあ? なあぁぁ~?」

「思った、思った。まさか、テッポウを持ってるとは分からなかったぜ。でも、そういうモンを使うってことは、それ相当の覚悟はできてんだろうなぁ? チンピラ姉ちゃんよ?」


 相手の意思を確かめるために、堕星は質問を返す。余裕を見せつけるように笑っていた。同時に、おびえさせるために鋭くにらみつけてやった。

 銃を向けても怖がらない堕星に、女リーダーの怒りは限界をこえた。


「か、覚悟すんのはテメエらだろぉぉ! ボゲエェェ

ッ!」


 アイシャドーでむらさきになったまぶたは最大に開いて、目玉は巨大化していた。

 激しく二酸化炭素を吐き出す鼻の穴は、二倍に広がっていた。

 特殊メイクなしで、ホラー映画に出演できそうなほどの、おぞましい表情。

 ベレッタの引き金にかかっている、リーダーの指が動く。一発の銃声が、路地裏にひびいた。


「ご、ご、ごわわぁぁぁっ!」

 男のような絶叫が上がった。男のように聞こえる、長く尾を引く女の絶叫を堕星は聞いた。


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