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第1話



「うっ…うぅぁ」


ゆっくりと瞼が持ち上がる。


覚えのない天井だ。


ベッドから周りを見回せばカーテンのような物で仕切られている。


それはまるで病院の大部屋を仕切るためのカーテンでほのかに消毒液のような匂いもしてくる。


「どこだここ…?病院…?」


左腕を見ると点滴がつけられている。


「いっつつ…さっきまで部屋にいたはず…まじで何なんだよ…!」



まだ微かに残る頭の痛みを我慢しておきあがろうとした時シャッと仕切りのカーテンが勢いよく開けられた。



「お兄ちゃん!!良かった!本当に良かった…!うぅ…」


開いたカーテンから出てきたのは妹の楓であった。




「かえ…で…?」




兄が言うのも何だが楓は小柄ながらも気が強く人形のような整った顔は雪のような白をしている。


そんな顔が散々泣いたのであろう目は真っ赤に泣きはらし顔も赤くなっている。


こんな顔を見たのは楓が部活でやっている弓道での全国大会で惜しくも2位になった時以来だ。


人前で泣くなんてめずらしいなんてものじゃない。


「うぅ…楓だよ!こ、ここは、ぐすん、学校!自衛隊の人が部屋で倒れてるのを見つけて保護してくれたの!すごい熱で…すごく心配したんだよ…!ぐすん」


「自衛隊…?何で?何かあったのか!?」


言うやいなや倒れる前の記憶が蘇ってくる。


「そうだ!ニュース!ニュースで避難がどうだって!どうした?何があったんだ!?楓!何があったのか教えてくれ!」


楓がびくっとするも構わず勢いよく肩を掴む。


掴んだ肩はか細く奏太を冷静にさせるには十分であった。


「ご、ごめん。ちょっと混乱してて…」


「大丈夫だよ。混乱するよね…私だってまだよくわからないんだもの。話さなきゃいけないことが沢山あるけど取りあえず先生を呼んでくるね!お兄ちゃんはまだゆっくり休んでて」


楓はゆっくりと立ち上がり鼻をすするとドアへ向かい足早に出て行った。


改めて一人になった奏太は周りを見回す。


部屋には蝋燭が数本立てられておりその火に照らされてぼんやりとだが部屋全体がうつしだされる。


ここは記憶にある…


少し荒れてはいるが1年前まで通っていた高校の保健室だ。




「蝋燭って…停電でもしてたのか?」




外はもう暗くなっており倒れたのが恐らく正午くらい。


今の時期は夏前で日が落ちるのは6時頃だ。



「だとすると俺は最低でも6時間は意識を失ってたってことか…まさか卒業してから母校の保健室を使うことになるなんてな…」


現状もわからず一体何がどうなっているかもわからないがその事実に何となく笑いがこぼれてしまった。


しかし自衛隊…


あの揺れが原因か?


いや、家や道路に壊れた形跡はなかった


頭が朦朧とはしていたがそれは間違いない。


災害支援や救助って線は薄いな。



じゃぁテロか?


いや、テロこそありえない。


テロリストが狙うのは国の重要拠点や人混みの多いところでありうちの周りと言えば環状線くらいしか目立ったものはない。



あれ…でも政治家とか有名人の家は多いか。



でもそれならなんでその家を狙わずにこんな自衛隊が出動するような避難を!?



あぁー!もうかんがえてもわからん!


よし!今は考えてもしかたないか…


取りあえず楓が先生をつれてくるまで待つか。


考えるのを放棄し窓からカーテンをあけて外を見ようとした瞬間パァァッンという乾いた音が外から数回聞こえてきた。



驚き咄嗟に屈む。


そーっと顔を上げてゆっくりと窓に近付く。

ゆっくりとカーテンをあけて窓から顔を出して覗くと数人の自衛隊員が校門の先に向かって発砲している。


校門の先はライトで照らされており光の先では怪我をおっているであろう数人の民間人の姿が見えた。


そのライトの先の数人は発射された銃弾に打ち抜かれ動かなくなった。


どうなってんだ!?借りにもここは日本だ。


自衛隊が学校の校庭で民間人に銃をぶっぱなすなんてありえない。


「どうなってんだよ!自衛隊は俺達を守るためにいるんじゃないのか!?」


額からは冷たい汗が流れる。


ここにいたらやられる!?


そうだ!楓!楓が危ない!


奏太は点滴の針を強引に外して廊下へ駆け出した。


廊下にでると保健室と同様に蝋燭に火が灯っており約3メートル間隔で並んでいる。


昔の記憶を頼りに学校のマップを思い出す。


保健室が一階の角で真逆に食堂と下駄箱、それに会議室と売店がある。



一階から探そうとゆっくりと歩を進める。


会議室には人の気配はなく食堂も暗い。


売店も閉まっている。


となると次は2階を探すか。


そんなことを考えていると階段から足音が聞こえた。


咄嗟に壁の影に隠れる。


「お兄ちゃんには私から話します。」


「奏太君は私も面識があるわ。辛かったらいいのよ?」


どうやら足音の正体は楓と保険医の相沢優子先生だ。


ちなみに優子先生はまだ若く可愛い学校でも人気の先生で奏太も仮病でよくお世話になっていた。


それだけに見知った二人で安心したこともあり壁から身を出した。


「いえ、私もちゃんと頭を整理したいですし…ってお兄ちゃん!?休んでてっていったじゃない!」


「二人とも!自衛隊の奴ら気が狂ってる!民間人を殺してた!逃げよう!」


楓の話を無視して奏太は二人の手をとる。


「「ちょ、ちょっとお兄ちゃん(奏太くん)」」


急に手を引っ張られ走り出そうとしている奏太に力一杯抵抗しながら二人は同時に引き止めた。


「大丈夫だよお兄ちゃん!」


「そうよ。それとさっきの発砲は民間人に向けて打ったわけじゃないわ。正確には民間人だったもの…よ。」


民間人だった…もの?



「良い?奏太くん。きっとすぐには現実を理解できない。だけどあれは…」



奏太は一瞬二人が何を言っているかわからなかったが二人の次の言葉で唖然としてしまった。



「「あれは生きる屍『リビングデッド』よ(だよ)」」



あぁもう何だってんだよ糞ったれ。

第1話

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