Card 3-2
「……遅い」
「え、る、瑠璃ヶ城先輩? な、なんでここに!」
眠い目をこすって校門をくぐると、何故か目の前に瑠璃ヶ城先輩と赤木さん。
「わざわざお前を待っててやったんだ、感謝しろ」
「別に頼んでません」
立ち往生している私にはとっても迷惑だ。せめて校門をくぐらせろ。
視線がすごく痛いぞ、気付けよ。主に女子からのだが。というか全て女子からのだが。
ああ、こんなことならもっと早く来るんだったな。
失敗した。あの時あと五分とか許さなければ……自分に甘い私が悪いのか、そうなのか?
「あっはは、嫌がられてんじゃん瑠璃ヶ城! こりゃあ傑作だわ!」
後ろから聞こえた声に振り向く。声の主はそのまま、赤木さんの肩を抱いた。
「こんな俺様瑠璃ヶ城なんてほっといてさ……俺とどっか行こうぜ? なあ、子猫ちゃん」
一瞬間を開けて響いたのは悲鳴だ。ほう、超モテ男と噂されている灰次先輩まで参戦か。
おうおうおう、やばいんじゃないか青柳君。好きな女が思いっきり口説かれてるぞー
しかもダブルで!
さてさて赤木さんは誰を選ぶんでしょうか。
真面目系クラスメートの青柳君か。
俺様系御曹司の瑠璃ヶ城先輩か。
チャラ系女タラシな灰次先輩か。
ううん、乙女ゲームみたいじゃないか。
こういう展開を傍観するのは楽しいね。私の大好物!
「離して下さい先輩。」
「ええ? どうしようかなあ?」
おどけたように笑った灰次先輩。
「離せ、っつってんでしょ!」
ぐるり、上体を捻って、そのまま足を振り上げた彼女。
つま先は寸分狂わず灰次先輩の腹に呑みこまれていく。
「うを。あっぶねえ!」
「近寄らないでください。変態がうつります。」
すっげえ……赤木さん武闘派か。かっけーな。
でもさ、一つだけ言いたい。
私、何時になったら校門くぐれんのかな。
「へえ、面白いね、君。どうかな、帰りお茶でも? 俺、本気になっちゃった。」
ウインクを飛ばす灰次さん。
あの、それはウインクできない私に対しての嫌味ですか。
「だから……私が今攻略してるのは瑠璃ヶ城先輩なんだってば」
は?
「ん? 何か言ったかな?」
「べ、別に何も。ちょっとした独り言ですよ。あ、私急いでるんで。それじゃあ!」
そうして、赤木さんは去って行ったのだけれど。
……攻略? 瑠璃ヶ城先輩を?
一体どういう意味だろう。
なんだかゲームみたいな言い方だな、攻略って。
ますます乙女ゲームっぽさが増してきた。
ううん、赤木さん……いったい何者だ?
謎の美少女転校生とか設定おいしすぎだろ……
やっと開いた校門前。くぐりながら、私は首を捻るのであった。
そして赤木さんの蹴りが炸裂!