Card 2‐2
「え、え?」
「32頁、問3。ちなみに答えは4√5だ。」
愛想のないそれは、前の席の青柳君だ。
彼とは何回か話したことがある。いつも本を読んでいるイメージしかないが。
大体、あの先生はバラバラにあてるのに、次に私が当たる? 嘘だろ。
「勘試しなら他でやってよ、青柳く――」
「じゃあ、次は……透間さん」
呟いた台詞は先生の声に消えた。な、なんだとう!
「え、は、はい! ええっと、4√、5……です」
「はい、正解。よく解けたな。おおっと、もうこんな時間か。今日の授業はこれで終わり!
ちゃんと宿題やってこいよ!」
そう残して、先生は教室を出ていく。
宿題……どこだそれ。
「36頁、問1~問4。あんた、ほんとなんも聞いてねえのな。」
声の主へと顔を向ける。
青柳君がこちらを振り向いていた。
「あ、青柳君。ありがとうございました。」
私はそれだけ言って、顔をそらした。
「……でも、なんでわかったの? エスパー?」
すると、急に会話に加わる赤木さん。青柳君は不可解な顔をしつつも、答えた。
「昔っから勘だけはよく当たんだよ。それにあの教師、お前の事見てたしな。」
ふうん、と軽く相槌を打つ彼女。
「ここまで来るともう呪いとしか言いようがねえよな。」
そんな言葉に、私はびくりと肩を震わせた。呪いだって?
「呪い?」
赤木さんも私と同じように聞き返す。まあ、私は心の中でだけれど。
「そうだろ、当たりすぎンだよ。俺も怖いくらいな。中学の時はよく気味悪がられてたよ」
無理に笑ったようなその顔。
「そうかな? 私はすごいと思うけどなあ、それ。」
彼女は話し続ける。
「だって、常に頭の中で何が起こるか計算できてるってことでしょう? もう天才じゃん。羨ましすぎるよ。……例えば、枯れてしまった花は戻らないよね? でも、それが枯れる前に気付いて水をあげられるのが青柳君。ほら、そう考えるとさ、なんかかっこよくない?
青柳君、かっこいいよ! ……って、ごめん! 偉そうだった――」
ちらりと青柳君の方を見ると、彼は。
「え、ちょ、」
「はは、いたなあ、昔。同じこと言った奴がさ。」
口元を左手で抑えてはいるけれど、その耳は真っ赤で。
「照れてる?」
「ばっ、だれが!」
少し怒ったような顔で、微笑んだ。
「……まあ、一応。さんきゅな。ちょっと救われた。」
おお。もしかして惚れたか。惚れたのか、青柳君。
そんなバカなことを考えていた時であった。
しゅるん、と青柳君の胸のあたりから何かが落ちる。
それは、青い一枚のカードだった。何の躊躇いもなく、赤木さんはそれに手を伸ばす。
盗み見してみると、書いてある文字は……The Hermit? なんだろう、あれ。
私は不可解に眉根を寄せたまま、次の授業開始のチャイムを聞くのであった。
青柳君,簡単に落ちてしまいましたね……