Card 1‐2
※流血描写,グロあり。閲覧注意,とまではいきませんが。
「それから、彼らは仲間で敵同士、なんて可笑しな存在になったんだ。だけど、仲間と敵、っていうのはどう考えても正反対だろう? いつの間にか、彼らは衝突しかしなくなった。
そんなことが続いたある日の事だったよ。
結構仲が良かったあいつがさ、仲間意識なんて消え去った暗い目でこんなことを言い出したんだ。
『お前を殺せば、俺がここから出られる確率は上がるんだよな』って。
耳を疑ったけど、あいつが向けてきたナイフに嫌でもわからされたよ。
もう、あいつは俺のことを――敵だと思ってるって。
そん時だ。初めて俺は人を刺した。
ズプリ、って嫌な音がしたんだぜ。引き抜くと、あいつの血だけがぬらぬらとしてて。
くるくる、まわって、きれいで、真っ赤で――」
「だまってください」
思わず声を上げて、彼の手を私の掌で包み込んだ。
今の彼は、怖い。
ぎゅっと目をつむった。
「っ、」
「……ごめん。話が逸れてた。あんたにはこの鍵を持っていてほしいんだ。あと、その本も。」
私の手を振りほどいて、彼はそのまま鍵を指した。
「え、」
「あんたがそれを猫からもらったんだろ? だったらあんたのモノじゃんか。」
その指先で、つんと鍵をつつく。
そして綺麗に微笑んだ。
「よろしく、新しい主人。」
「いや、ちょっと待て! なに、主人って」
聞こえた台詞を咄嗟に遮る。
主人だと? 一体だれが!
「……あ。説明してなかったっけ。俺はカード・愚者。あんたはこれから、俺と21枚のカード達を集めなくちゃならない。集めきれば、あんたの願いは叶うよ。でも、できなかった時の為の対価はあんたの命
だ。願いをかなえるにはリスクが必要だからね。対価交換は当たり前でしょ?」
「それって、つまり……」
悪びれもなく、彼は言い放つ。
「集めきれなきゃ死ぬ、ってこと」
「なっ……!」
そこまでで言葉を切った私に、我が意を得たり、と彼は笑った。
「『彼ら』は運命に呪われているよ、間違いなく。そりゃあ怖いのはわかってる。でもさ、助けてやってくんないかな、奴らを。」
首を縦に振ってしまった私は、臆病者なのだろうか。
でも、ここまで頼まれてしまったら無視はできないし、それに。
ああ、また好奇心が邪魔をしたんだ。
カードはまだ一枚。
命が消えるか、願いが叶うか――
残るカードは、21枚。
主人公ちゃんの好奇心はもう軽く常人を越してますよ。