修 1
語りは カズヤ、途中から シュウ に変わります。
*** Kazuya ***
いったい、こんなとこで 何してんだ、俺…
日曜日 午後2時、俺は駅前に来ていた。
さんざん悩んだが、結局気になり 来てしまったのだ。
もし二人に見つかったりしたら、なんて言い訳したらいいんだ。
まるきり 彼女の浮気を尾行してるみたいじゃないか。
…なんかそれ、だいぶ 違うぞ。 彼女って 誰だ。
浮気したりされたりとか、俺達は そんな関係じゃねーはず、だ…
それなら 俺は、俺達は、いったい何だ?
二人は、階段の向こう側 南口の正面で、昨日の続きのように 何かを言い合っていた。
亜莉はシュウに、何か大きな紙袋を 押しつけている。
シュウは、しぶしぶのような様子で 受け取った。
何だ、あれ。 荷物持ちさせてんのか? それとも プレゼントとか…
シュウが それほど乗り気ではないように見えるのに比べ、亜莉は とても楽しそうだ。
それがまた 何故か、俺の気に障る。
俺に対しては、いつも つっかかってきて 文句ばかり言ってるくせに…
「ねえ 亜莉、やっぱ一緒に行こうぜ」
シュウが亜莉の腕をつかんだ瞬間、俺はたまらず飛び出した。
「亜莉!」
「カズヤ!? え、どうしたの?」
俺は何かを言おうとしたが、ふと紙袋の中身が目に入った。
その瞬間、完全に意識がそがれてしまった。
何だ? いったい どういうことだ??
紙袋の中に入っていたのは、この前 亜莉が男たちからもらった物だった。
何故、亜莉はこれをシュウに? まったく 訳が分からない。
「…お前、何やってんだ!?」
「今日は練習も休みでしょ。 何してるの、こんなとこで?」
「そんなことより、シュウに今渡したのは 何なんだよ?
それ、お前があいつらに もらったもんなんじゃないのか!?」
「へ? ああ、これのこと? 何言ってるの、違うったら」
亜莉は 一瞬 ぽかんとしたが、すぐに 可笑しそうに笑い出した。
「これはね、皆から 美緒に渡してくれって頼まれたの。
美緒に早く元気になって欲しいって、お見舞い。
ほら すごいでしょ、こんなにたくさん。 やっぱり美緒、人気あるよね」
亜莉は、あの時のように嬉しそうに笑う。
「シュウが 今日お見舞いに行くって タカシから聞いたから、持ってってくれるように頼んだの」
「……」
俺は、その場にしゃがみ込みたくなるような脱力感におそわれた。
昨日の男どもは 亜莉目当てでも何でもなく。
亜莉が嬉しそうだったのは 美緒の為で。
シュウとは デートではなく、荷物を頼んだだけ…
「俺にそんなこと 頼まれても、なあ?」
シュウは俺のほうを見て 苦笑している。
「…亜莉、お前、なぁ…」
普通、他の男からのプレゼントを、その彼氏に託すか?
あいつらが なんでお前に頼んだと思ってんだよ…
俺は、昨日の奴らを少し気の毒に思った。
それらに込められているのは、純粋なお見舞いの気持ちだけではないだろう。
…まあ、そんなことが こいつにわかるわけはないか…
「じゃあ、俺は美緒んとこ 行ってくるよ。
せっかくだし、二人でどっか寄ってったら?」
シュウにそう言われ、俺達は 彼を見送った後、別にあてもなく 二人で街へ出た。
亜莉と二人きりでって、なんとなく今は 気まずいんだけど…
だが、それどころではない窮地に 間もなく陥ることになるとは、この時俺は 気付いていなかった。
*** Shuu ***
カズヤ達と別れて一度は改札へ向かい、彼らの視界から外れると、俺はUターンした。
物陰にかくれる奴の所へ行き、声をおさえて問いただす。
「お前だろ、カズをけしかけたの」
「別にそんなことしてねって。 あいつが突っ走ってるだけだろ。
お前は二股はしねーだろって言ってやったのに」
タカシは ニヤニヤしながら、あっさりと白状した。
「…テメー… いい加減にしろよ」
さっき 亜莉の腕をつかんだのを思い出して、俺は顔をしかめた。
…間一髪、カズヤに殴られるとこだったじゃねーか…
「ほら やっぱ始まった。 あいつら、着火剤いらねーからな」
「…お前、いつまで ここでこーしてんの?」
「シッ、来た来た… おい、見ろよ。 もっとおもしれー事になりそーだぜ」
「…うわ、ちょっとあれ… ヤベーんじゃねーの? すっげ偶然…」
「バーカ、そんな偶然あるわけねーだろ。 あいつ、どーすんのかな?」
「…お前、あいかわらず ひでー奴だよな」
そう言いながら俺も、タカシと一緒に のぞき込む。
約束の時間に遅れたら、美緒に怒られるだろうなと思いながら。
だが、それどころではない天誅が下ることになるとは、その時俺達はまだ 気付いていなかった。
次回は亜莉です。