貴志 1
一人称の語りがいろいろな人に変わります。
その時の語りを、ローマ字で ***Takashi*** というように表しています。
今回の語りは、Takashi から 途中で Kazuya に変わります。
わかりにくかったら すみません<m(__)m>
*** Takashi ***
その日 ずっと荒れていたカズヤは、帰りに俺を誘ってきた。
しゃあねえなぁ、付き合ってやるか。
…まあ、仕掛けてるの 俺だしな。
「…カズ、いつもに増して よく食うな。 何個目だよ、それ」
「いーだろ。 今日は すっげー疲れたな。 いつもの倍ぐらい走ったんじゃ…」
「んなわけねーだろ。 今日は時間なかったし、たいして何もしてねーじゃん。
燃費悪いやつだな」
「…放っとけ。 …だいたい 一年の奴らがなー… あいつら いつもだらけてやがるくせに…」
…本当に分かりやすい性格だな、こいつ。
「亜莉がモテてるからって、妬くんじゃねーよ。
そんなに焦んなよ、別にいいじゃんか」
「何言ってんだ。 あいつがモテんのなんか、今まで見たことねえぞ」
「あのなぁ…」
俺は思わずため息を吐いた。
「んなの決まってんじゃねーか。 お前、バカじゃねーの?」
「何だよ」
「他の男は眼中にありませんって、あそこまではっきりしてる娘を口説く奴なんか、そうそういるもんか」
「他の男って…え…ええっ!?
あ、あいつ、す、好きな男なんか、いんのか!?」
「…はぁ!?」
俺は、イスから落ちそうになるくらい驚いた。
「…お前って、まさか…」
こいつ、鈍いとは思っていたが、まさか、ここまで全く気付いてないとは…
…本気で、彼女に同情するぜ…
「おい、誰だよ、お前 知ってんのかよ!?」
カズヤは、噛み付くような勢いで聞いてくる。
いつものおちゃらけたような余裕が、全くない。
「…ふーん、気になんの?」
瞬間 奴の顔色は、面白い程さっと変わった。
「な…い、いや、別に、お、俺は…
た、ただ、あいつも一応女だったんだな〜と思って…」
「……」
…なんか この展開、結構おもしれーのかも…
…そういえば、例のモデルのこともあったよな…
最近少し退屈していた俺は、久しぶりに 遊びがいのあるおもちゃを見つけた気分になった。
「実は俺も結構気になってんだけどさぁ。
亜莉って、最近なんか 結構イイ感じじゃね?」
俺のそのセリフに、予想通り 再び色を変えたおもちゃを、俺は満足気に眺めた。
*** Kazuya ***
その後 忘れ物を取りに行くタカシに付き合い、一旦 部室に戻った。
すぐ戻るという彼を 外で待っていたが、何かを言い争うような声に窓からのぞくと、シュウと亜莉だった。
めずらしいな…
「ちょっと、それはマズいって。 美緒に なんて言うんだよ」
シュウが 困ったように言っている。
何か、二人で美緒に 隠し事か?
戻ってきたタカシと一緒に、耳をそばだてる。
「だから、大丈夫って言ってるでしょ。
じゃあ日曜日、2時に駅前で待ってるからね。 絶対に来てよ!」
亜莉は、強引にシュウに言い渡した。
日曜日…駅前…待ってる…って、二人だけで 出掛けるってことか…?
美緒には 内緒で。 それって…
…ありえない。 だいたい シュウが そんな事に乗るわけない。
なんといっても シュウは、美緒にぞっこんなのだ。
「…わかったよ。 しょうがないなぁ。 亜莉には かなわないよ」
シュウがそう言うと、亜莉は ぱっと笑顔になった。
「へえ、亜莉もけっこうヤルねえ。 押し強いじゃん。
でもシュウには、二股は無理なんじゃねーの?」
二人が帰っていくのを見送りながら、俺は タカシに返事をする気にもならなかった。
次回はシュウです。