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ごほうび  作者: choco
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和矢 1

 *** Kazuya ***


「おい、あれ」

部室に向かっていると、一緒にいたタカシが 視線でグランドの一角を指した 。

見ると、なにやら固まっている集団がいる。

何故か亜莉が 複数の男子生徒に囲まれていた。


「なんだあれ… まさか あいつ、リンチされてんのか!?」

「お前 バカか? よく見ろよ」


そう言われて見ると、確かにそんな雰囲気ではない。

少し離れているので、声はほとんど聞き取れないが。


彼らは、手に持ったプレゼントや手紙のようなものを亜莉に渡しているようだ。

照れた様子の彼らから 次々と渡されるものを、実に嬉しそうな表情で受け取る彼女。


あれは、サッカー部の一年か。 …いや、違う部のやつも 何人かいる。


全てを受け取った亜莉が、彼らに何か言っている。 極上の笑顔で。

それを聞いて、一様に顔をだらしなく緩める男ども。


「モテモテじゃん。 青春だねぇ」


タカシの声で、はっと我に返った。


「なんて顔してんだよ。 で、どーすんの、お前?」


タカシは、ニヤニヤしながら 俺に言った。


「…何のことだよ!?」


俺はタカシに怒鳴りつけ、部室へと向かった。


モヤモヤした気分を振り払おうと 真っ先にグランドに出て走り込んだが、気分は盛り上がらない。

何故 俺は、こんなにイラついているんだ?


あいつが誰に言い寄られようと、誰とつきあおうと、俺には何も関係ない。

だいたい、あの亜莉に 本気で惚れる男がそんなにいるとも思えない。


…本当に そうか?


飛び抜けて美人ってわけではないが、別に見られないほどの容姿でもない。

いや もしかしたら、結構イイ線いっているのかも…

でも、あの美緒といつも一緒にいたら、男なら 自然に美緒に目がいくだろう。


でも あいつだって、美人とは言えなくても、可愛いというか…


…いや、いやいや、それにしたって、あの色気の無さは絶望的だろ。


一緒にマネージャーをしている美緒は、すごい美人で抜群のスタイル、その上どんな事でもよく出来る。

成績もかなりいいらしいし、まさに才色兼備だ。

マネージャーの仕事も完璧だし、掃除などもよくしてくれる。

何度か手作りのお菓子など差し入れもしてくれたが、出来栄えも見事で、味も絶品だった。


でも美緒は、シュウの女だ。


それに、体の弱い美緒は休みがちで、最近はマネージャー仕事もほとんど亜莉がしている。


亜莉のやつは、大きなミスこそないが、しょうもないポカをしょっちゅうして、その度に俺は後始末に付き合わされる。

勉強でも、特に理数系は致命的に弱く、試験が近くなると俺に泣きついてくるのだ。


手のかかる妹みたいだ。 いや、どちらかといえば弟って感じだな。

本当に高校生か?ってくらいガキっぽいし、女らしさの欠片もない。

学校一のマドンナといつも一緒にいるんだから、少しはそういうとこ伝染したりしないもんなんだろうか?


…でも まあ、よく気のつくところも ある。


部室の掃除や洗濯も、ケガ人などの面倒も よくみている。

料理もできるようで、合宿中は、食事の準備をするおばちゃんを、いつも手際よく手伝っている。


いつでも忙しく、ちょこまかと走り回っていて、泥だらけになって…


レイカみたいに綺麗な服を着て おしゃれしているところなんて、見たことがない。


俺達の練習が終わった後も、残って仕事することもよくある。

帰り道が同じ方向だからと送らされる俺に「遅せーぞ」と文句を言われて、ケンカしながら一緒に帰って。


「…まあ あいつも、がんばっては いるよな…」


あんなに一生懸命で、ケガの手当てなんか優しくされて、喜ばない男はいないだろう。


……


だから、それがいったい 何だというのだ。



その日は 一日中、支離滅裂な思考を 振り払うことが出来なかった。


次回はタカシです。

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