美緒 4
*** Mio ***
「あれ? さっき ここに居たと思ったけど」
私は、明日の試合の日程表を渡すために タカシを探していた。
廊下に出た時に、となりの空き室から聞こえる声に気付いた。
「なあ タカシ、お前 今一番欲しいものって 何だ?」
カズヤの声だ。
また こんなところで、二人で後片付けを さぼってたな。
「いきなり何の話だよ? 相変わらず 脈絡のないヤツだな。
一番なぁ、何かな… お前は?」
「最高の女」
私はおどろいて、思わず 入り口の少し手前で 立ち止まってしまった。
タカシも おどろいているようで、しばらく 何も言わない。
「無理だな」
「…なんでだよ?」
やがて 答えたタカシに、カズヤが 不満そうに返す。
「さーなぁ? なら、その女の 一番欲しがってるもんでも やってみたら?
振り向いてくれるかもしんねーぜ?」
それに答えるタカシは、すでに からかい口調だ。
「…そいつの、欲しがってる…」
それでもカズヤは、思い当たることでもあるのか 何かを考えている様子だ。
最高の…って…それはやっぱり、あのレイカのこと?
なんで? どうして、いつの間に、そんなことに?
カズヤが 亜莉を、以前にも増して 意識していたのは、明白だ。
もう一押しなのは 目に見えていたはずで、タカシも当然 そう予想していると思っていた。
でも そんなことは、どうなるか わからない。
実際、二人の距離は 以前より離れていたし、彼は レイカに会いに行っていた。
…その時 レイカとの間に、何か あったのだろうか…?
「何だ、美緒?」
タカシに声を掛けられ、私は はっと我に返った。
「あ、明日の日程表…」
「ああ、サンキュ」
カズヤは 私を見ると、何も言わずに 部屋を出て行ってしまった。
「うげ、何で こんな早くから 集合すんだよ」
「タカシ」
部室に戻っていく彼に 呼びかけたが、彼は聞こえないふりで 帰る準備を進めている。
「ねえ、タカシってば。 カズヤが 言ってたのは…」
「あのさぁ!」
タカシは、怒鳴りつけるように言って、私を強くにらんだ。
大股で 私に歩み寄り、壁ぎわギリギリまで 追い詰める。
私の頭の上の壁に 右腕をつくと、顔を下げ 私と目の高さを合わせた。
息がかかるほどの至近距離で、しばらく 見つめ合う。
それほど 怖くはなかった。 無言で にらみ返す。
タカシは、ニヤリとすると 言った。
「根本的に わかってねーんじゃねーの?
俺は お前らと違って、別に あいつらのハッピーエンドを願ってるわけじゃねーの」
不意打ち、だった。
彼は、さっきのように 怒鳴ったりはしなかった。
それでも 私は、あまりの衝撃に 言葉が出ない。
今まで 全く考えなかったわけでは ない。
タカシが、二人の仲を進めるのに 協力をする理由など、何もないのだ。
それどころか、じゃまをする動機のほうが 十分ある。
もしかしたら 私は、とんでもないことを していたのかもしれない。
目の前にいるこの人を、ひどく傷つけたのかもしれない。
私は突然、はげしい恐怖におそわれた。
急に、彼の体が 私から離れた。
「おい」
「…痛ぇぞ」
シュウが タカシの腕をつかみ、乱暴に 引いたのだ。
「タカシ。 美緒に当たるな。 殺すぞ」
シュウは、普段聞いたことのない低い声で 言った。
タカシは、シュウの手を うるさそうに振り払うと、再び 私に言った。
「それに、俺が今 浮かれてない理由も わかってねーだろ」
「…どういうこと…?」
「…俺は お前らより 頭いいからな。
お前には、あいつのセリフの意味が わかったんだろ。
俺には その意味がまだ わからねーからだよ」
タカシは また、意味不明のことを言った。
私にわかるように説明するつもりは ないようだった。
ひとり言というか、まるで 自分でそのことを確認しているような言い方だ。
「んじゃ、帰るわ。 明日 試合よろしく」
私から話を聞いたシュウは、何も言わず ため息を吐いた。
「…シュウ… どうしよう、私…」
「ま、なるようにしか ならねーだろ」
カズヤは、実は これより前のどこかで一度、告白する機会を逃しています。
それで 再度チャレンジのために、タカシに聞いてみようとしたわけです。
でも、カズヤは こういうことで頭を使うのに慣れていないようで、考えることが いまいちズレてます。
タカシにプレゼントと言われ、それを実践してみるのですが…
その話は 後の<和矢4>に出てきます。 うまくいくかな?
なんか カズ&アリよりも タカシの方がメインになってる気がする。
最初は、彼がこんなに出張ってくる予定は 全然なかったんだけど(^^;)
タカシ話を書くのはすごく楽しいのですが、おかげで書きたかったいろんなのが書けなかった(T_T)
レイカ話とか、亜莉&美緒とか、カズ&タカシとか、シュウ&美緒とか、カズ&亜莉とか(←主人公のはずなのになぜ?)
次回は タカシ、試合風景です。 次話で タカシのもうひとつの陰謀?が明らかに…




