美緒 1
*** Syuu ***
「なんかさ、亜莉先輩 ちょっと可哀想じゃね?」
「すっげ 一途だったもんな。 あれは ちょっとなぁ」
「でも、カズ先輩って まだ レイカとくっついたわけでもねーんだろ?」
「亜莉先輩 応援してやりてーよな」
「そーだなぁ、レイカのジャマしてみたり?」
「おい てめーら、いつまで だらけてやがる!! さぼってんじゃねーぞ!
走ってこい、あと三周!!」
「う、わ、キャプテン、そりゃ ないっしょー! マジ、死ぬって!
せめて 二周に… シュウ先輩、助けてくださいよー!」
「…行って来い」
「…チッ、あいつら 余計なことを… 抜かったぜ。
あいつら 数多いし、向こうに付かれると 厄介なんだよなぁ」
今日 俺達の学年は 補習のクラスが多く、部活に出てきている人数は少ない。
カズヤや亜莉たちも 今日は来ていない。
人数も足りないので、今は だらだらと基礎トレをしているだけだ。
「もう いいじゃんか、そこまでしなくたって。
あいつらが 亜莉につくのなんか、当たり前じゃねーかよ」
亜莉の人気は 高い。
特に 普段から世話になっている彼らならば、なおさら 当然だろう。
「いや、駄目だ。 俺は常に完璧を目指してんだよ」
「めんどくせー奴だな。 完璧って、こんなことで」
「うるせーな。
今度また レイカ来んだよな。 うまいこと カズとデートに…
…ゲッ、う わたっ、…ってー…」
タカシは、妙な声を発しながら ベンチから転げ落ちた。
そのまま 俺の後ろに かくれようとする。
「…美緒」
「あんたたち、また ろくでもない事 考えてるんでしょ!
自分たちこそ さぼってないで、走ってきなさいよ!! キャプテンでしょ!」
「そう言うなよ 美緒、タカシだって 一応…」
「シュウ! あなたが ちゃんと注意しなきゃダメでしょ! だいたい…」
「まあまあ お二人さん、夫婦ゲンカは 家でしろよ」
…こいつ… もう 絶対、かばってなんかやんねー。
「タカシ! どうして あなたは、そういうひどい事 するの!?」
タカシは 地面に座り込んだまま、仁王立ちになっている美緒を見上げて 言う。
「じゃあさ、美緒は 大事な大事な姫を、今のあいつに まかせる気になるわけ?」
「…今のって?」
「浮気相手は きっちり清算させとかないと、結局 傷つくのは亜莉じゃねーの?」
「……」
美緒は タカシをにらんだ。
グランドを走らされていた後輩たちが戻ってきた。
「だからさあ、あの二人 一緒にさせとけば…」
「そうだな、あれ見たら 誰だって…」
三周もさせられたわりに 結構元気で、まださっきの続きを話している。
美緒は あきらめたように 一つため息を吐くと、振り返って 彼らに言った。
「わかってないわね、あんた達。 よーく考えなさいよ。
カズヤがあの人とくっついたら、亜莉は完全フリーになるってことでしょ?」
「!!!!!」
それから数日間、カズヤが亜莉と話せる機会は、ほとんど無かった。
話しかけようにも、近寄ろうにも、何故か 多方向からの妨害が入り、成し得なかったのだ。
「わっかりやすいよなー、あいつら。 まあ、美緒のお許しが出たからな」
「…美緒って、やっぱ すげーよな…」
「タカシ お前、この前の模試、美緒に勝ってんじゃねーの?」
「あったりめーだろ、俺は5位だよ。 美緒は20位ぐらいだったんじゃね?」
「なんか、完全に美緒に負けてるみてーだよな」
「……」
次回も美緒です。




