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08:報告書


Vatican VCSO headquarters


阿修羅あしゅらはやっと報告書を書き終わり、ベッドにうつ伏せに倒れこんだ。

日本支部時代の報告書と言えばアバウトもいいところ、敵の種類とその他のみ、その他は書いても書かなくても何も言われない。

しかし、神選10階の報告書は細かいにも程がある、敵の種類、敵の特徴、敵の得物、敵の身長、敵に会った場所、自分が使った神技、負傷、戦闘時間etc...

阿修羅あしゅらは初めて見せられた時に、本気でそれを放棄するのを考えた、しかし、あのタナトスも大人しく受け取ったのを見て、拒否権が完全に無くなった。


阿修羅あしゅらがベッドにうつ伏せになり、軽く痙攣してると誰かが部屋をノックした。


「はぁ、入って良いわよ!」


大きな声で言うと扉が開いた音がした、足音は阿修羅あしゅらがいるベッドルームの扉の前で止まる。


「…………入る、良い?」

「良いわよ」


扉を開けて入って来たのはアストライア、ブロンドの髪の毛が一瞬、女らしさを見せるがツインテールの可愛らしさが勝る。


「どうしたの?」

「……………メルポメネ、任務」

「寂しいの?」


アストライアは無言で頷いた、白いパーカーのポケットに入れてる手が悲しさを増す。

しかし、こんな気弱な女の子でも神選10階、恐ろしい力を持った神のに愛された者。


「来て良いよ」


阿修羅あしゅらはベッドの端に座ると、隣をポンポンと叩いた、アストライアの顔はパァっと明るくなり、小走りで阿修羅あしゅらの隣に若干寄り添うように座った。


「…………初任務、大丈夫?」

「タナトスと?」


頷いたアストライアの目は不安で溢れている、バチカンにいれば嫌でも耳にするタナトスの噂、当然アストライアも聞いた事があるはず。


「大丈夫よ、それに皆が思ってる程、悪い人じゃなさそうだし」

「……………タナトス、怖い」

「そうかな?」

「……………ダークロード、殺す、笑ってる」


そういえば阿修羅あしゅらはタナトスの戦っている姿を見ていない、任務外は普通の青年だが、もしかしたら戦いでは恐ろしいまでに豹変するのかもしれない。


「アストライアはタナトスと一緒に任務した時はどうだった?」

「……………強い、怖い」


タナトスの対しての印象が良い阿修羅あしゅらには想像がつかない、神選10階を殺したのも何かの間違えだと思えるくらいだ。


「……………ソルジャー、殺した」

「タナトスが?」


アストライアは再び無言で頷く、そして阿修羅あしゅらはタナトスや報告書とは別のある用事を思い出した。


「今から行きたい所があるんだけど、行く?」

「……………何処?」

「私のお友達の所」

「行く」


アストライアにしては珍しく間が無かった、それに心なしか笑みが溢れている。

阿修羅あしゅらは笑顔で立ち上がると、アストライアも立ち上がり阿修羅あしゅらのスカートを掴んだ、アストライアが誰かの服を掴むのは阿修羅あしゅらとメルポメネだけ、アルテミスやククルカンには話すがこのようにべったりになる事はない。

これがアストライアがメルポメネの次に阿修羅あしゅらを信頼してる証拠だ、阿修羅あしゅらの天性の姉貴肌がそうなのかもしれない。



阿修羅あしゅらが向かった先は4階、任務が終わったらシャーリとミルの所に行くのを約束してた。

アストライアは阿修羅あしゅらのスカートを握ったまま辺りを見回す、そして阿修羅あしゅらはシャーリの部屋のドアをノックした。


「どちら様?」

「お姉様」

「お姉様!?」


ドタバタという音と共にシャーリの部屋の扉が開いた、アストライアは驚き完全に阿修羅あしゅらの後ろに隠れる、阿修羅あしゅらはアルテミスの頭を軽く撫でながらシャーリを見る。


「そっちは………」


シャーリからは阿修羅あしゅらの後ろに隠れてるアストライアが見えなかった、そっと覗き込むとそこにはアストライアがいる、シャーリは驚き片膝を付いて頭を下げた。


「あ、アストライア様!申し訳ありません!」

「……………気にしない」

「はい?」

「……………大丈夫」


アストライアは若干微笑んでシャーリを見た、恐らく最初の阿修羅あしゅらと同じような感じだ。


「お姉様、何でココにアストライア様が?」

「一緒に来たいって行ったから」


アストライアはシャーリを見て頷いた、しかし何故かシャーリの顔が凍る。

アストライアの隣にはいつの間にかミルがいた、ミルはアストライアを舐め回すように見る。


「……………ミル?」

「……やっぱり、ルーリスちゃん!」



ミルはアストライアを阿修羅あしゅらからはぎとるように抱きつく、その瞬間シャーリの顔は絶望と不安で溢れた。


「ミル!何してるの!?」


シャーリはアストライアからミルを引き離した、そしてそのままシャーリはミルの頭を押さえてひざまづく。


「アストライア様!あるまじきご無礼、お許し下さい」

「ルーリスちゃん、私だよ!ミル、覚えてるよね?」

「ミル!口を慎みなさい!」

「……………気にしない」


アストライアはシャーリの手を退けてミルを起こした、ミルは満面の笑みでアストライアに抱きつく、アストライアは微妙な笑顔でミルの背中に手を回す、シャーリと阿修羅あしゅらの頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。


「ルーリスちゃんもバチカンにいたんだ」

「……………第9階、アストライア」

「もしかしてルーリスちゃんがアストライア様!?」


アストライアは無言で頷く。

廊下の感動の再開はシャーリの部屋に場所を変更された、アストライアは大人しく座り、ミリはずっとアストライアを見続ける。


「まずは、アストライアとミルの関係から話して」

「私とアストライアちゃんは同じ孤児院にいたんです、でも私がお買い物行って帰って来たら孤児院が無くなってて、みんな血だらけで倒れてる中にアストライアちゃんがいなくて、皆に聞いても孤児院の事もアストライアちゃんの事を知らないって言うの」


恐らく孤児院はダークロードに襲われたのだろう、そしてその一切を忘れたのはホーリナーが関わっているから、それがアストライアか否かは分からない。

アルテミスは腕輪を指差した。


「……………友達」

「友達がディアンギットの腕輪になったの?」


アストライアは頷いた、ディアンギットの腕輪が人に付くのは色々なパターンがある、阿修羅あしゅらは貰った物、アストライアは友達、他にも感情の高ぶりや、特定の場所に行ったから等、色々な理由がある。


「でも良かった、アストライアちゃんが生きてて」

「……………アタシも」

「アストライアちゃん、色々お話ししたい事もあるし見せたい物もあるからお散歩に行こうよ!」


アストライアは笑顔で頷くと、ミルは立ち上がり手を差し出す、アストライアがその手を掴むと、走ってシャーリの部屋を出て行った。

残された阿修羅あしゅらとシャーリは呆然、何となく二人の関係が分かったくらい。


「感動の再開、ですよね?」

「そうなるんじゃない」

「でもアストライア様は神選10階でミルは育成所の生徒、良いんですか?」

「アストライアも楽しそうだったし良いのよ」


阿修羅あしゅらは旧友の事を思い出した、普通の女子高生だった最後の最後まで一緒にいた親友、今でも思い出すと苦しくなる過去である。


「アルテミス様はミルと同じ年なのにあんなに立派で、ミルが迷惑かけなければ良いんですけどね」

「アルテミスも楽しんでるから良いんじゃないの、神選10階になる前の仲間と別れて寂しかっただろうし」


シャーリは何故か苦虫を噛み潰したような顔をした、阿修羅あしゅらはその意味が分からない。


「お姉様、神選10階の仲間は神選10階だけなんですよ」


阿修羅あしゅらは更に難しい顔をする、阿修羅あしゅらには日本支部の面々も仲間だと思っているからだ。


「神選10階になる程の力を持ったホーリナーを支部長達が手放す訳ないじゃないですか、神選10階に来る人はその支部の厄介者なんですよ、支部長が手に負えなくなくなったホーリナーを神選10階にする、言わば問題児の集まり何です」


阿修羅あしゅらは驚きを隠せない、何故なら日本支部長の金色孔雀こんじきくじゃくは、死んでも阿修羅あしゅらを手放さないと思ったからだ、そして阿修羅あしゅらの中に一つの可能性が浮かんだ。


「はぁ、多分私は元帥に無理矢理連れて来られたんだ」

「何でですか?」

「知らない、でも日本支部のボスが女を手放すとは思えない」


バチカンと日本で何かしらの取引があったか、元帥が金色孔雀こんじきくじゃくを脅したか、それに阿修羅あしゅらに変わる誰かが入る予定がある、それしか考えられない。


「仮に問題児の集まりだったとして、タナトスは納得出来る、でもメルポメネやダグザみたいな人を手放すのは分からないんだけど?」

「メルポメネ様はあまりの美しさで、男のホーリナーが任務に集中出来ずに死者が続出したから、ダグザ様は頭が良すぎて支部長をないがしろにしすぎてバチカンに送られたらしいですよ」


この二人ならあり得ないと言いきれないのが凄い、阿修羅あしゅらは苦笑いを浮かべたまま固まった。

神選10階が色物な理由もそこにある、変わり者だからこそ問題児になる。


「お姉様は日本支部ではどんなだったんですか?」

「楽しかったよ、私よりも少し歳上の女の子と、ミルよりも少し歳上の女の子、その3人でよくお菓子を食べに行ってた」


阿修羅あしゅらより歳上の緊那羅きんなら、最強という言葉を阿修羅あしゅらと2分したホーリナー、年下の摩和羅女まわらにょ、遠距離の暗殺や命中力だけなら世界一、アルテミスよりも急所を突くのは上である。


「お菓子の食べ歩きなんて楽しそうですね」

「じゃあ今度行く?」

「良いんですか!?」

「当たり前でしょ、それにイタリアの街も案内してほしいし」

「喜んでお願いします!」


阿修羅あしゅらは日本支部とは違うながらも、着実に穴を埋め初めている。

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