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07:魔女


Mongolia plain


真っ白なベストをなびかせたヘリオスと、真っ黒な髪の毛が風に舞うアルテミスの自黒コンビは、任務なのに何故か馬に跨っている、その理由はココがモンゴルの大平原だから、下手にその地域の環境を荒らせないホーリナーは地域によって乗り物を使い分ける事もしばしば。


今回の任務内用は大量に出現したステージ5の殲滅、遊牧民の儀式で呼び寄せてしまったステージ5を殲滅する事、先にソルジャーが行って戦っているが、敵のあまりの多さに苦戦中とのこと。


阿修羅あしゅらは大丈夫ッスかね?」

「さっきからお前は阿修羅あしゅら阿修羅あしゅらって!うるせぇんだよ!こっちは任務終わりで疲れてる中での任務だってのに!」

「だって初任務がタナトスとッスよ、そりゃ不安にもなるッスよ」


先程からヘリオスは口を開けば阿修羅あしゅらの名前が出てくる、アルテミスにとっては苦痛以外の何物でもない、そんな話を聞くくらいなら馬と話した方がマシとも思えるくらいだ。


「見えてきたッスね」


二人の目と鼻の先には大量のソルジャーの中でも胸から上が出ているステージ5、そして地面にはソルジャーの死体がいくつか転がっている、無傷の者は皆無に等しい。


「アルテミス、援護頼むッスよ」

「当たってもアタイを恨むな」

「大丈夫ッスよ、信じてるッスから」

「ふっ、任された」


ヘリオスは手綱を持ったまま馬の上に立つ、そして二人は同時に腕輪に触れた、ヘリオスは切っ先が無い片手剣、名はレーヴァテイン、アルテミスはチャクラム、ドーナツ型の暗器で指を輪の中に入れて回しながら投げる、名はフルムーン。


「皆退け!ココからは俺らがやりまスから!」


ヘリオスは馬の背中から高々とジャンプした、大砲のように上がったヘリオスは笑いながらステージ5達を見る。


「インフェルノ【烈火】!」


レーヴァテインを真っ赤な炎が包み込む、むしろレーヴァテイン自体が燃えている。

ソルジャーはあっという間にステージ5から離れた、そしてステージ5の群れの真ん中にヘリオスが着地する。

しかしヘリオスの後ろには斧を振り上げたステージ5がいる。


「エクスペンション【拡大】」


フルムーンは斧を振り上げたステージ5の寸前で大きくなり、ステージ5の首を切り落とす、そして大きなフルムーンはフリスビーのように曲がると、今度はアルテミスに戻って来た。


「チェンジ【転化】、リデューション【縮小】」


フルムーンは元の大きさに戻るとアルテミスの指に納まる、群れの真ん中で助けられたハズのヘリオスは、膨れっ面でアルテミスを睨む。


「ずるいッスよ、せっかく俺がかっこよく斬ろうと思ってたのに」

「知るか、アタイだって見てるだけってのはつまんないんだよ」


ヘリオスはブツブツ言いながらも攻撃してくるステージ5を斬り落とす、斬られたステージ5は燃えながら地面に倒れ、灰と化す、そしてその度に草は燃え、徐々にヘリオスの周りは火の海と化す。

その火の海の中で笑顔を振り撒きながらレーヴァテインを振る、太陽の笑顔に触れたステージ5はその無邪気さで灰と化す、まるでステージ5を灰にして遊んでいるようだ。


「す、スゲェ、化物だ」

「俺達がまとめて戦っても歯が立たなかったのに、ヘリオス様は一人であれだけ………」

「俺、一つの隊がまとめてかかればいくら神選10階様達でも倒せると思ってた、でもあんなの傷一つ付けられねぇ」


アルテミスはソルジャー達の会話を聞いてニヤニヤ笑っている、それはヘリオスが笑いながらステージ5を斬り捨てている訳ではない。


「おい、お前ら」

「は、はぃ!」

「確かにヘリオスが強く見えるだろうけど、さっきからアイツは右足を動かしてないぞ、右足を軸に遊んでやがる」


そう、ヘリオスは右足を軸に体を動かしながら戦っている、ヘリオスが切り込んで真ん中に入る時は常にやっている事、任務を遊び感覚で楽しむヘリオスならではである。


アルテミスは馬から降りて座りながらフルムーンを投げる、標的はヘリオスに向かわずにソルジャーに向かうステージ5。

アルテミスは飛び道具系の得物では世界最強、純粋に命中率や殺傷能力では摩和羅女まわらにょも引けを取らないが、アルテミスはそれだけではない。


「アルテミス様!後ろ!」

「分かってる、いちいち騒ぐな」


アルテミスは投げたフルムーンとは別に新たな得物を形成する、いくつもの得物を作り出せるのは飛び道具系だけの特権。


「エクスペンション【拡大】」


振り下ろした大斧を避けたアルテミスは直径1m以上になったフルムーンを構える、フルムーンは暗器としても近距離の武器としても使える、これが最強の由縁。

アルテミスは内側を持ち、横に薙払うようにフルムーンを振るとステージ5の首を斬り落とす。


「アタイをナメるんじゃないよ」


アルテミスが振り返ると火の海に忽然と佇むヘリオス、ヘリオスの目の前の最後の一体は火が燃え移り、悶え苦しんでいる。

ヘリオスはゆっくりと近付くと、燃えるステージ5を見上げる、金色のハネッ毛は火に染まり燃えてるように見える。


「もう苦しまなくても良いッスよ」


素早い炎の一閃がステージ5の首をはねた、そしてヘリオスはレーヴァテインを戻すと、周りの炎は何も無かったかのように消え去った、しかし地面には灰の山が出来ている、太陽に近付き過ぎた者の末路だ。


「何か呆気ないッスね」

「それはアタイのセリフだよ!全部ヘリオス一人で殺りやがって!」

「どうせアルテミスは戦わないじゃないッスか、仲間が戦うかダークロードが戦うか、人任せな月じゃないッスか」


アルテミスが食って掛ろうとした時、広い平原にソルジャーの悲鳴が響き渡る、ヘリオスとアルテミスはソルジャー達に目を移すとそこには3体のエビルユニオン。


「そんなのまでいるんスか!?」

「驚いてる暇があったら処理しろ!」

「ベロシティ【光速】!」


速く移動するなんてスピードではない、消えて気付いたら現れる、一瞬でエビルユニオンの首をはねた、ヘリオスに反応出来たの者は誰一人としていない、神選10階のアルテミスですら反応出来ないくらいのスピードだ。

光よりも速く、夜よりも静かな神技、殺すという事に特化している、近付こうものなら灰にされ、遠ざかろうものなら知らぬ間に殺される。


「悪いアルテミス、残りそっちに行ったッスよ」


よそ見をしていたアルテミスには、残りの2体が突進してくる。

この状況で笑っているのはヘリオスのみ、ソルジャーは慌て、アルテミスは舌打ちと共にヘリオスを睨んだ。

近距離型の神選10階ならば汗ばむ程度で倒せる、中距離型なら本気を出せば倒せる、しかし遠距離型のアルテミスには危険が伴う、例え倒せたとしても重傷は免れられない。


「ヘリオス様!アルテミス様は遠距離型のハズ、助けに行かなくて宜しいのですか!?」

「まぁ確かに普通の奴ならヤバいッスね、でもアルテミスは最強ッスよ」

「しかしエビルユニオン2体相手には危険です!」

「分からないんスかねぇ?太陽に触れた者が灰になるように、月に魅いられた者は狂っちゃうんスよ、月の美しさの前では誰もが狼ッスよ、まぁアルテミスは綺麗じゃないッスけど」


アルテミスはエビルユニオンを睨むよりキツくヘリオスを睨む、後ろにいたソルジャーはメデューサに睨まれたかのように石と化した。

アルテミスは意識をエビルユニオンに向けると、手の平をエビルユニオンに向けた。


「ルナティック【狂気】」


手の平でフルムーンが周り始め、淡い光を放ち始める、その光をエビルユニオンが見た瞬間、エビルユニオンの動きが完全に止まる。

そして右側にいたエビルユニオンが左側のエビルユニオンを両手で挟む、そして悲鳴とも奇声とも取れない声で唸ると、エビルユニオンの頭が軽々と潰れた。


「何が起きてるんだ?」

「信じられない、ホーリナーしか襲わないはずのエビルユニオンが、同じエビルユニオンを殺した?」


そして残った最後の一体のエビルユニオンは体を掻きむしり始めた、身体中に爪の傷痕ができ、最後には自分の喉元を掻き切って息耐えた。

最強の遠距離型、それは全ての面においての強さを示す、単純に暗殺能力だけなら日本支部の摩和羅女まわらにょの方が上、しかし摩和羅女まわらにょになくてアルテミスにあるモノ、それがオールラウンドの強さ。


「俺聞いた事がある、アルテミス様はその戦う様から‘魔女’と呼ばれている事を……」

「そうッスよ、元来魔女と月っていうのは繋がりが多いんスよね、それにアルテミスのあの戦い方で魔女って呼ばれるようになったんスよね、タナトスが死神って呼ばれてるように」

「ヘリオスだって同じようなものだろ、‘太陽’」


世に名だたるホーリナー等にはこのようにニックネームのようなモノが自然と付けられる、そしてそれを繋げて『死神のタナトス』や『魔女のアルテミス』、『太陽のヘリオス』等戦い方や神技等で呼ばれている。

日本支部で緊那羅きんならが世界的に有名だ、『音速の緊那羅きんなら』と言われ阿修羅あしゅらよりも有名である、その理由は護法神と戦闘神、その二つでVCSOが警戒して出回らないようにしているから。










しかし、阿修羅あしゅらに二つ名が出来た時、それが終焉への幕開け。

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