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41:2人の太陽神


Unknown


ヘリオスはニヤリと笑いながら自分の体を切り裂いた、ガクリと落ち込むが、寸前で踏ん張り上目使いでルシファーを睨む。






















「シンクロ【同調】!」


その瞬間ヘリオスの体は傷口から出た炎に包まれた、凄まじい炎は阿修羅さえも息苦しさを感じる熱量。

炎は渦を巻き上げ辺りに風を起こす、炎は真紅から白に変わり、その熱の強大さを物語っている。


「な、何なのよコレ?」

「まさかシンクロ【同調】だと?だが太陽に近付き過ぎるなど物理的に不可能なはず」


ヘリオスの炎は爆発するように全てを呑み込み燃え上がる、あまりの威力でルシファーが一歩退いた瞬間、炎の塊がルシファーを殴り飛ばした。

ルシファーは派手に転がると、辺りの炎が消え、炎の塊が見えた。

人のような形をしているが手足を地面についている、全身が炎、そう、自ら燃える太陽のようになっているヘリオス、これがヘリオスのシンクロ【同調】。


「何故貴様は太陽になっている!?」

「「それは阿修羅のお陰ッスよ」」


様々な場所から聞こえるヘリオスの声、美しいとさえ思えるような和音を奏でている。


「「二つの太陽が結び付いたんスから、欠けてたモノを取り戻したんスよ」」


阿修羅の神徳は戦闘神、しかし阿修羅を太陽神と崇めるような所もある、つまり、太陽に近付き過ぎた、それは阿修羅の唇に触れた事を意味する。

阿修羅は顔を真っ赤にしながらヘリオスを睨むというよりは見つめた、ヘリオスも阿修羅の方を向いているが、口が開くのみで目や鼻は炎に包まれていて表情は判断出来ない、しかし阿修羅には分かる、ヘリオスの柔らかい表情は何も変わっていない事に。

ヘリオスは阿修羅を見ていたかと思う一瞬でその場から消える、凄まじい轟音、それは炎が乱れ、唸り、大気を揺らす音。

阿修羅とルシファーは完全に見失ってしまう、それはベロシティ【光速】をも凌駕するスピード。

ヘリオスは一瞬、刹那でルシファーの背後を取る、そしてほんの一秒するとヘリオスが通った跡は凄まじい炎を巻き上げる。

それに気を取られていたルシファーはヘリオスに蹴り上げられ宙に浮く、ヘリオスを中心に登る火柱、ルシファーは完全に呑み込まれた。

火柱が晴れるとそこには凄まじい速さで攻防を繰り返すルシファーとヘリオス、手足を使うヘリオスに引けを取らないルシファーのスピード、阿修羅はあまりの速さに息を飲んだ。


「あり得ない、何よあの二人の速さ、化物じゃない」

「「化物じゃないッスよ!」」


ヘリオスは戦いの最中というのに阿修羅に怒った、それにより一瞬生まれる隙、それをルシファーが見逃すはずがなくヘリオスは地面に叩き付けられてしまった、何とか防いだため傷はないが、体制が不十分なのに加え髭切を振り上げたルシファー。


「「こりゃヤバいッスよ!」」


ヘリオスは焦っていたが阿修羅が一瞬でルシファーを蹴り飛ばし、ヘリオスから遠ざけた。

ルシファーは着地するがすぐにヘリオスの追撃が待っていた、ヘリオスを髭切で弾き飛ばすが直ぐ様阿修羅が斬りかかる、阿修羅は蹴り飛ばし遠ざけるが間髪入れずに放たれる漆黒の刃。


「ちょこまかと!」


反対側からはヘリオスの火の玉、ルシファーはバックステップで二つの攻撃を相殺すると阿修羅の方に向かった。

今のヘリオスは強すぎる、恐らくルシファーと同等、否、それ以上の強さ、そして阿修羅は天竜の巫女、阿修羅から倒すのが得策と考えた結果だ。


「「そうはさせないッスよ!」」

「そんなの計算済みだ」


ルシファーは既に髭切を振り下ろしてした、それは阿修羅に届かない、完璧にヘリオスを狙ったとしか思えない太刀筋だ。


「まずは一人」


ヘリオスの体はルシファーに両断され……………………揺らぎ、消えた。


「なっ!?」


そしてルシファーは背後にいたヘリオスに体当たりを受けて派手に転がる。

それはヘリオスの炎による熱で光の屈折をねじ曲げた事による錯覚。


「「まだまだ甘いッスよ!2度も同じ攻撃を喰らうのは馬鹿のやる事だ」」

「はぁ、それ、ダグザが貴方に手合わせで言ったセリフでしょ?」

「「いやぁ、一度言ってみたかったんスよね」」


おどけているヘリオスを気にせずルシファーは大きな間合いを一瞬で詰めて斬り掛る、しかしヘリオスは再び揺らいで消える。


「立て続けに喰らうとでも思っているのか?」


ルシファーは背後にいるヘリオスに斬り掛るがそのヘリオスも揺らいで消える。


「3度とも同じ攻撃だと思うな、これもダグザの言ったセリフッスよ」


ヘリオスはルシファーの頭上にいる、そして口から凄まじい轟音と共に凄まじい熱の炎を照射する、ルシファーはギリギリで避けるが、炎は広がりルシファーを呑み込んだ。

ルシファーにダメージはないがココまで追い込まれた事によりプライドと勝利への希望が薄れていった、その表情の変化を見逃さなかったのが阿修羅。


「ルシファー、貴方は何のタメに力を求めたの?」


脈絡のない問いかけにヘリオスとルシファーは止まってしまう。


「貴方はそれだけの力を持っておきながら何でそれ以上に力を求めたの?」

「………貴様には関係ない」

「あら?兄が落ちぶれた理由も聞いちゃいけないの?」


ニヤリと笑ってルシファーを見る、その笑顔は不気味で妖艶。


「貴様に分かるか?全てを知っていて、全てを知らない悲しみが」

「何意味分からない事言ってるの?」

「俺は貴様と違って全てを知っていた、母の阿修羅あすらが当時のルシファーを倒すのと同時に力尽きたのも、父の毘沙門天が助けられるであろう母を見捨てて俺を助けたのも、妹が何も知らずに平和な表の世界で呑気に生きているのも、全て知っていた。

そして、その全てに手が届かなかった、俺は生まれた時から孤独が約束された人生だったんだ、人の温もりを知らず、戦いという裏の世界だけを唯一の居場所としてきた、この生まれた時から生きる道が一つしかない絶望が、貴様には分かるというのか!?」


阿修羅はその気迫と絶望感、悲壮感にたじろいでしまう、“心からの悪は絶対にいない”、それが沙羯羅の信念だったのを思い出す。


「でもそれなら何で私をこっちの世界に引きずり込んで、力を得ようとしたの!?」

「復讐のタメだ」

「復讐?」

「そう、復讐だ―――――」


ルシファーは大きく目を見開き阿修羅を睨む、それは憎悪に満ち、殺気や狂気、悲哀に満ちた恐怖そのもののような目だった。


「俺をこんな孤独にしたあの毘沙門天へのな!母を見捨てずに俺を死なせていれば母は死なず、俺は孤独を知らず、貴様は本物の家族と暮らせたんだ!

それなのに奴はその大きな可能性を捨てて絶望の未来を選んだ!愚かな父への愚かな選択を分からせるために俺は奴を殺す、俺を生かした事を後悔させてやるのさ!」


阿修羅はいつの間にか涙を流しながらルシファーに近付いていた、ゆっくりと、その一歩一歩を確かめるように。

そしてルシファーに手を伸ばすとルシファーの頬を両手で挟む、その目は優しく、敵対はゼロ。


「もう貴方は苦しまなくていい、復讐なんてやめよう?復讐の先には何もない」

「貴様は恨まないのか?俺がいたせいであるはずの全てを失ってしまったんだぞ?」

「恨めない、それは運命だし、過去を嘆いても何も変わらない」

「そうか―――――」


ルシファーの悲痛な表情が再び妖しい笑みになる、それに二人が気付いた時にはもう遅かった。


「やはり愚かな妹だ」


阿修羅はゆっくりと視線を下ろす、そして腹部を見ると髭切が刺さり、阿修羅を完全に貫いている。

ヘリオスの阿修羅を必死に呼ぶ声、ルシファーの不気味な高い笑い方、絶望に満ち溢れた表情でルシファーから目を離そうとしない阿修羅。

阿修羅が倒れ込む前にヘリオスは阿修羅を抱えてルシファーとの間合いを取る、ヘリオスは阿修羅をそっと地面に寝かせるとルシファーに顔を向ける、口だけしか分からないが、明らかな憎悪が読み取れる。


「「消えろ」」


ヘリオスは口を開くと周りのエネルギーが集まるように見える、ルシファーはその大きな隙を利用して逃げようとするが、何故か逃げられない、むしろヘリオスに引き寄せられている。


「クソ、…………クソ、クソがぁ!」


ルシファーに気にせずヘリオスの体は凄まじい炎をあげる、そしてその業火のエネルギー全て口に集約された。

そして、それは凄まじい熱量と勢い、轟音と共にルシファーを呑み込んだ。

ヘリオスの体は燃え上がるがそれよりも先にエネルギーを口に吸い取られてしまう、その力は全てを焼き付くし跡形もなく蒸発させてしまう、しかしルシファーにはプロテクティブ【防護】がある、それを打ち崩せばヘリオスの勝利、逆に持ち堪えてヘリオスがエネルギーを使いきればルシファーの勝ち。

ヘリオスの業火は凄まじい熱量でルシファーを呑み込んでいるが、いっこうに倒れる気配のないルシファー。










かなりの時間が過ぎた、否、実際にはものの数分だがこの凄まじい攻撃を数分も続けているのが奇跡に近い、ヘリオスの体も徐々に炎が薄れ、元のヘリオスに戻りつつある。


バリン!


何かが割れる音、そして………


「ぐぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


それはルシファーの苦痛に歪んだ叫び、悲鳴、そう、プロテクティブ【防護】が崩れ去り、ルシファーが豪華に晒されている。

このままヘリオスが照射を続けていればヘリオスの勝利が約束されていた、しかし限界が来ていたのはルシファーのプロテクティブ【防護】だけではなかった、ヘリオスのシンクロ【同調】も限界が来ていた。

ヘリオスの体の炎が完全に消えて元のヘリオスに戻る、それと同時にうつ伏せに倒れ込み、動かなくなってしまった、エネルギーを大量に使い過ぎた結果だ。

倒れるヘリオス、そして動かない阿修羅、この瞬間ルシファーの完全勝利が約束された。

そのルシファーも限界、体が火傷だらけで、もう天竜の巫女の血による再生能力も底を尽きた。

ルシファーは髭切を持ってなんとかヘリオスの前までたどり着き、見下す。


「これで、終わりだ、俺の、勝ちだな」


ルシファーは髭切の切っ先を下に向ける、その真下にはヘリオスの心臓がある。


「………………死ね」

























「………………やめて」


ルシファーの足首に圧迫感、その先には阿修羅がいる、ルシファーの足首を掴んでいるのは阿修羅。


「もう、ひとを、ころさない、で」

「死に損ないが、貴様から殺してやる」

「おね、がい、…………にい、さん」


ルシファーの手が止まる、初めて感じるこの感覚、不思議な感覚がルシファーの心を支配する、それによって髭切を振り下ろせないルシファー。


「もう、やめ、……………よう。ね?…………に……い、さ………………」


阿修羅はそのまま気を失った、ルシファーはただ立ち尽くすのみ、ただ、地面に倒れている阿修羅とヘリオスを眺めている。


「愚かだ、実に愚かだ」


ルシファーは髭切をしまった。











遂に阿修羅達の戦いが終りました、ラスト2話で最終回です。

次回作もしっかりと続きます、次回作は今までに出た生きてるキャラクターを総動員したいと思っています、真面目な話はおいといて…………みたいな感じです。

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