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31:勝ちたい

大変遅れて申し訳ありません。

これからも遅れるかもしれませんが、なるべく早く更新出来るように頑張ります。

最後までお付き合い下さい


Unknown


ヨーロッパ系の至って普通の住宅街、しかし人の住むような生気が少しも感じられない、その中をナックルガードの付いた槍、ルドラシスを持って歩くククルカン。

人が住むべき場所に人がいない、さすがのククルカンもコレばかりは気付いていた。

そして更に気付く、歩いても歩いても、曲がっても曲がっても景色が変わらない、同じ所を歩いているわけではない、ククルカンが苛ついて壁に開けた穴が無いからだ。


「何処にいるんだよぉ!」


ククルカンは物凄い声量で叫んだ、隣に人がいたら耳が使い物にならなくなっていただろう。


「「「「うるさいなぁ」」」」


イライラした多重声が街に響き渡る、それは反響しているからではない、色々な所から一つの声が聞こえている、ククルカンはそれでココにいるのが誰だか理解した。


「何よ何よ、またあんた?」

「今度はしっかり気を持ってね、死んじゃうよぉ」

「2度も同じへまはしないよぉ」


至るところに現れたアスタロト、その手には双剣のカリバーンが握られている。

しかしククルカンは嘲笑うようにアスタロト達を見ている、気持悪いのに変わりないが、一度見れば平常を保っていられる。


「こんなの冷静になれば怖く無いよ」

「別に怖がらせるタメにやってるんじゃ無いんだけどなぁ」


ククルカンはルドラシスを構えた、それと同時にアスタロト達が走り出す、まるで中世の戦争、人を大量に遣い得物を振りかざして衝突する、まさにその様だ。


「ツイスター【竜巻】!」


巨大な竜巻が辺り一帯を包み込んだ、アスタロトは踏ん張りながらもククルカンに近づく、しかしククルカンの猛攻はまだ終わらない。


「バキューム【真空】!」


竜巻の中を真空が舞い踊り、まさに巨大なかまいたち。

竜巻に入ろうものなら体をつんざかれ、一撃受ければ動けなくなる、そして動けなくなっている間に急所をやられ、致命傷となって死に至る。

致命傷でなくとも深く切り裂くかまいたちに当たれば失血により死。

風神、風の怒りに触れた時、風に体を引き裂かれ、自分の鮮血が風に舞い上がる、全てを運ぶ風は死を運ぶであろう。


「うわぁ、こりゃ酷いなぁ、地獄絵図ってやつ?」


ククルカンの足下から声が聞こえた、ククルカンが下を向くとそこにはアスタロトがいる、地面から上半身だけを出して笑顔を作るアスタロト。


「なになに!?気持悪い!」

「また人の事を気持悪いって言う、傷付くんだから辞めてよ」


アスタロトはカリバーンを振り上げ、ククルカンの足を斬ろうとした、ククルカンは後ろに跳んで避けたが、神技への集中が切れてしまい、近寄れなかったアスタロト達が襲いかかって来た。


「ツイスター【竜巻】!」


ククルカンは一方の集団をツイスター【竜巻】で吹き飛ばし、反対側のアスタロト達に目をやった。

アスタロト達は既に後ろにいて、ククルカンに斬りかかろうとしている、ククルカンはルドラシスを大きく振り、一気に何人か薙払った。


「キツイキツイ!でも負けられない」


ククルカンは体術では確実に圧倒している、しかしアスタロトは量でアスタロトが圧していた。

リーチが長いルドラシスを力一杯振り、何とか近寄らせないようにしているが、体力が限界に近付いて来た。

肩で息をしながら尽きないアスタロトと気力だけで戦っている。


「もう、無理無理」


ククルカンは家の中に逃げ込んだ。


「バキューム【真空】」


家を真空で覆った、コレで暫くは近付けないが、アスタロトが量を蓄える時間も与えてしまう。

そして先ほどアスタロトは地面から出てきた、家の中にいてもアスタロトは家に寄生している可能性がある、それ故にククルカンは警戒を怠れない。


「いるんでしょ?出てきなよ」

「アハハ、バレちゃった?」


壁から出てくるアスタロト、何故かアスタロトは顔面蒼白、ククルカンと同じように肩で息をし、顔には大量の汗を溜めている。


「最悪最悪、もうあんた質悪いよ」

「君もね、私だってコレだけやられたら、精神力が擦り減るよ」


その瞬間外にいたアスタロトが一気に消えた、増やしたアスタロトを操るのには集中力を要する、あれだけの量を長時間動かし続ければかなりの体力を使う。


「馬鹿馬鹿、あんなに出すからだよ」

「うるさい、馬鹿みたいな神技使うからいけないんだよ」


ククルカンはルドラシスに寄りかかりながら立ち上がった、アスタロトはカリバーンを構える。


「神技抜きなら負けないよ」

「私だって一つに集中出来れば強いんだから」


ククルカンはルドラシスを思いっきり振り上げるが、ココは室内、天井に突き刺さってしまった。


「馬鹿じゃないの?」

「うるさいうるさい!」


アスタロトは斬りかかろうとするが、ククルカンは壁を引き裂いてそのまま振り下ろした。


「流石馬鹿力」

「黙れ黙れ!」


アスタロトはギリギリで避けると、踏み込んでそのまま切り返した、しかしククルカンは体を沈めてアスタロトの腹に拳を沈める。


「―――――クッ!」


アスタロトはそのまま家の壁に突き刺さった、そのまま崩れ落ちるように床に伏した。

アスタロトは壁に手を付きながら立ち上がり、口から血を流してククルカンを睨む。


「悔しい、何で私は負けるの?」

「弱いからだよ」


アスタロトは唇を噛み締めながら涙を流した、その光景にククルカンはたじろいでしまう。


「いつも私は足を引っ張ってばっかり、それで悪魔になったのに、悪魔になっても何も変わらないよ、何で私だけいつも弱いままなの!?私だって勝ちたいのに!」


アスタロトはカリバーンを振り上げて床を蹴った、ククルカンに向かって力一杯、体重を乗せて斬りかかる。

ククルカンは跳び上がったアスタロトの斬撃を防ぎ、再び殴ろうとするが、カリバーンに受けられてしまう。

アスタロトは着地と同時に斬りかかった、ククルカンは顔を微妙にずらして避けるが、ジャージの襟と綺麗な金髪が切れてしまった。


「私だって勝ちたい!」


アスタロトはククルカンを蹴って壁に叩き付けた。


「くぅっ!」


ククルカンが座り込むと、アスタロトはククルカンの首を足で思いっきり押した、喉が塞がり息が出来なくなる。


「君を殺して私が勝つ、ルシファー様に認めてもらうんだから」


ククルカンはアスタロトの足を掴んで息を出来るスペースを作った、大きく息を吸うとアスタロトを睨み返す。


「そのルシファーってのが何だか知らないけど、うちには負けちゃいけない理由がある、あんたなんかと違って目的があって戦ってるんだから、あんたなんかには絶対に負けない!」


ククルカンはアスタロトの足を掴んでアスタロトを投げた、アスタロトは壁を突き破り外に出る。

ククルカンも後を追って外に出ると、そこにはもうアスタロトの姿は無かった。


「それでも私は勝たなきゃいけないの!」


ククルカンが背を向けていた壁からアスタロトが出てきた、ククルカンは背中を大きく斬られてアスタロトから遠ざかる。

疲労と痛みで意識が飛びそうになるが、ユピテルへの思いだけで立ち続けている。

ククルカンの負けられない理由はユピテル、ユピテルのタメに死ねないのだ。


「弱い弱い、こんなのじゃあうちは殺せないよ」

「私は君に勝たなきゃいけないの」


先に動き出したのはアスタロトだった、ククルカンに斬りかかろうとするが、ククルカンはアスタロトが自分の間合いに入る前に、ルドラシスを最大限に突き出した。

アスタロトは止まって避けたが、頬に切り傷を作ってしまう。


「勝ちたいだけじゃ勝てないよ!」


アスタロトは間合いを取ろうと後ろに下がったが、ククルカンの猛攻は止まらない。

ククルカンは大きく踏み込むと、素早い突きの連撃を放つ、アスタロトは致命傷にならない程度に防ぐが、体の切り傷の量が劣勢を物語っている。


「うちは生きる理由のないあんたには負けない!」


アスタロトは後退しながら防いでいたため、壁に塞き止められてしまった。


「私は強くなりたい、勝ちたい」

「無理無理、強くなるには生きたいと強く願わなきゃ、あんたはそれが足りないから死ぬんだよ」


ククルカンは迷わずアスタロトの心臓を貫いた、アスタロトは口から血を流し、多少痙攣して動かなくなった、ククルカンがルドラシスを引き抜くとアスタロトは崩れ落ちる。


ククルカンはフラフラになりながらその場を離れたが、既に体力は限界に近く、路上に倒れこんでしまった。

真っ青な空を見上げながら風を感じる。


「ユピテル、うち勝ったよ、だから、ユピテルも帰って来てね」

「それは無理だよ!」


仰向けになっているククルカンを覗き込むアスタロト、体に傷は無く、かなり元気な表情で爽やかな笑顔を振り撒くアスタロト。


「これが私のやりかた、相手が憔悴しきって戦えなくなったら私がサクッと、正々堂々とか面倒だよ、殺せれば良いの、殺せれば。

なんか好きな人がいるみたいだけど残念だね、殺したいと思わなきゃ勝てないよ、生きたいなんて戦いの邪魔、どうやって相手を殺―――」

「バキューム【真空】」


アスタロトが喋ってるのを遮って神技を放つククルカン、真空は喉元を深く切り裂いてアスタロトを殺した。

その瞬間街全体がガラスのように砕け散り、真っ白な世界に黒い穴がぽっかりと空いている。

ククルカンはルドラシスに支えられながら黒い穴に向かう、ユピテルに会える希望と、戦いが終わった歓喜を噛み締めながら、軋む体を前に進めて行った。

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