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03:第10階


Vatican VCSO headquarters


阿修羅あしゅらはヘリオスと一緒に目と鼻の先にある石造りの大きな塔を目指した、教科書などでは見たことの無いいかにも怪しい2つの塔、所々で渡り廊下があり繋がっている。

阿修羅あしゅらとヘリオスの隣を通り過ぎるとお辞儀する者がしばしばいる、恐らくホーリナーに関わりのある者達だ。


「「「ヘリオス様、こんにちは!」」」


小学校高学年くらいの子供達がヘリオスを見て一斉にお辞儀した、阿修羅あしゅらはその奇妙な光景に目を真ん丸にしてヘリオスを見る。


「誰?」

「育成所の生徒ッスよ」

「育成所?」

「知らないんスか?育成所ってのは俺達が見えるような異質な人達をソルジャーにする所ッスね、まぁそれを拒否した人が協力者とかになってるんスけど、ソルジャー達の事を俺らが神だから天使って言ったりもするんスよ」


こんな小さな子供のうちからダークロードと戦うタメの特訓を受けている、そんな現実を知って阿修羅あしゅらは心が痛んだ。


石塔の中は日本支部とそこまで代わり映えはしない、窓から見える景色が山じゃなくてイタリアの町並みという事ぐらいだ。

ヘリオスは阿修羅あしゅらとエレベーターに乗ると最上階に向かう、ヘリオスが乗っていると途中から乗ろうとした者もお辞儀したまま乗らない。


「何で皆乗らないの?」

「俺が神選10階だからッスよ、本当に神様になったみたいで気持悪いけど、すぐに慣れるッスよ」


阿修羅あしゅらは一ホーリナーと神選10階の違いを大きく見せ付けられた。

エレベーターが最上階に着くとそこには大きなドーナツ型のテーブルがある、それを囲むように11脚の椅子、ガラス張りでこの部屋だけ何か違うオーラを出している。


「こっちこっち」


ヘリオスは阿修羅あしゅらの手を引っ張って奥にある扉のドアノブに手をかけた、そこには指令室と書いてある、ヘリオスがドアを開くと大きなデスクに大きな椅子、そして片手にチーズケーキを持った金髪の男性が外を見ている。


「元帥、阿修羅あしゅらって娘連れて来たッスよ」

阿修羅あしゅらちゃん!?」


元帥は慌てて走り寄る、隣にいたヘリオスは突き飛ばされ、阿修羅あしゅらを舐め回すように見る、その間もチーズケーキを口に運び続ける。


「本物の阿修羅あしゅらちゃんだ、可愛い!」

「はぁ、これが私達のボス、先が思いやられる」


元帥は笑いながらマイクのスイッチを入れた。


「あー、あー、神選10階全階、今すぐに会議室の所定の位置に集合」


恐らくこの塔全てに響いたであろう元帥の声、元帥はマイクのスイッチを切ると残ったチーズケーキを口に放り込んで指を舐めた。


「ほら、ヘリオスも自分の席にいてよ」

「了解ッス」


ヘリオスは指令室から出ていくと元帥は笑いながら阿修羅あしゅらに近寄った、阿修羅あしゅらは不気味に思いながらもその場を動けなかった、元帥は阿修羅あしゅらの左腕を掴むと腕輪を何かで包む。


「な、何!?」

「良いから良いから」


阿修羅あしゅらはしぶしぶ待ち続けた、何の違和感もないし少し重いくらい、ディアンギットの腕輪が崩壊する事もあり得ない。


「はい、終了」


腕輪を覆っていたモノが外れたが何の変化も無い、何のタメに着けていたのか理解出来ない。


「ココだよ」


元帥は腕の手首の内側を指差した。


《No.10 floor》

「第10階?」

「そう、阿修羅あしゅらちゃんは今日から神選10階の第10階だよ、まぁこの番号は区別するだけだからあんまり意味は無いんだけどね」


阿修羅あしゅらはその数字を眺めた、神選10階の第10階の阿修羅あしゅらになった瞬間。

阿修羅あしゅらは内心味気ない作業に落ち込んでいた、もう少しそれっぽい事をやるモノだと思っていたのだが、腕輪にナンバーを彫って終わり。


「もうそろそろ集まったかな」

「誰が?」

「神選10階の皆、阿修羅あしゅらちゃんの席は僕の隣だから分かり易いよ」


元帥は先に扉を開いて会議室に行った、阿修羅あしゅらは深呼吸をして会議室への扉を開いた。

丸いドーナツ型のテーブルを囲むように9人のホーリナーが座っている、元帥はヘリオスの隣に座りその隣が一つ空いていて阿修羅あしゅらはそこに座った。

隣にいる小さな女の子が阿修羅あしゅらを舐め回すように見る。


「新しく第10階になった阿修羅あしゅらちゃんだよ」

「うぇ!?阿修羅あしゅらが第10階だったんスか!?」

「何だヘリオス、テメェ知り合いか?」


机に長い足を乗せた紺色の長い髪の毛の男性、かなり妖しい笑い方をしている。


「ココまで一緒に来たんスよ、何でユピテル言ってくれなかったんスか?」

「それはオラが言おうと――」

「酷いッスよね、俺だけ除け者ッスか」


一番ヘリオスが酷いと思える、ザッと見渡すだけでもかなり濃い人物ばかり、阿修羅あしゅらの格好も変には思えなくなるような者ばかり。


「じゃあヘリオスから自己紹介」

「またッスか?」

「やらないの?」


元帥が不適な笑みを浮かべるとヘリオスが焦って立ち上がった、阿修羅あしゅらにはその意味が理解出来ないままヘリオスの自己紹介が始まる。


「第1階の太陽のヘリオスッス、出身アメリカのハワイで18歳でス」


阿修羅あしゅらと同じ年、そしてあえてハワイと言った事からそこに固執しているらしい。

次に隣のバンダナを着けた黒くて長い髪の女性が立ち上がる。


「第2階、月神アルテミス、出身はエジプトで年は20」


白のタンクトップの背中に刺繍、ブーツカットのジーンズでエジプトというよりはラテン風、しかし顔はエジプトの美女を連想させる。


「第3階、芸術神のメルポメネ、出身はロシアで28よ、よろしくね」


おしとやかな感じで裾に刺繍がある真っ白なノースリーブのドレスがそれを際立たせる、ブロンドのウェーブの髪の毛と白い肌が本当に激しい戦いをした者とは思えない。


『綺麗だから騙されない方が良いよ、戦い方は僕よりもえげつないから』

「モリガンには負けるわよ」

「どっちもグロいッスよ、グチャグチャとぺちゃんこっすよ」


阿修羅あしゅらはその会話よりモリガンの全てが気になった。


『第4階、破壊神のモリガン』


そのまま座った、年も出身も言わないままに、モリガンの声は変声機を使ったように中高年の男性の声と子供の女の子の声が混ざった声、服装は露出が無く、顔は白いマスクで覆われ、真っ白なローブをはおっている、袖の所の刺繍だけが唯一白ではない。


「第5階、知識神ダグザ、ポルトガルで25だ」


紺色のスーツで中には白いTシャツ、見えないがTシャツの裾には刺繍がある、ミディアムの茶髪で髪の毛は右側に流している、メガネを着けていて知的な印象。


「第6階、雷神のユピテル、出身はルーマニアの17歳だぁ」


阿修羅あしゅらは隠れている右目が気になってしょうがない、チラリとも見える事が無く見にくいのではないかと不安になった。


「第7階、風神のククルカン、出身はすぐそこのイタリアで年は10代最後の19歳、よろしく!」


襟の高い青いジャージのファスナーを一番上まで上げて口がスッポリと隠れている、白の膝にかかるプリーツスカートの裾に刺繍、セミロングの金髪は自らが光ってるかのように美しい。


「第8階、死神のタナトス、出身はフランスで22だ、今度手合わせ頼むぜ」


タナトスは立ち上がらずに言った、真っ白なロングTシャツの胸の辺りに刺繍、ズボンは皮で髪の毛は肩を覆うくらいの青いロング。


「………第9階、星神、アストライア、カナダ14」


接続詞その他は無い名詞だけの自己紹介、真っ白なパーカーのお腹のポケットの所に刺繍がある、フリルの青いミニスカート、ブロンドの髪の毛をツインテールにしていて幼さが際立つ。

阿修羅あしゅらは人前に出るのが苦手でゆっくりと立ち上がった。


「はぁ、第10階、戦闘神の阿修羅あしゅら、出身は日本で18歳」

「俺と同い年じゃないッスか!」


阿修羅あしゅらは無視して座った、元帥は身を乗り出しているヘリオスを押し戻して立ち上がった。


「これから一緒に戦う仲間だから、手を出しちゃダメだよ」


阿修羅あしゅらのみならず全員からため息が漏れた、元帥は無視して指令室に帰って行った、残った神選10階は全員阿修羅あしゅらを見ている。


『いつ死ぬかな?』

「おいモリガン!いきなりそういう事言うか!?」

『だってそうじゃないか、呪われた第10階、その席に座った奴らは皆早死にする、阿修羅あしゅらはいつ死ぬのかな?楽しみだ』


モリガンは立ち上がり一人でエレベーターに乗り降りて行った、モリガンに食い付いたアルテミスは舌打ちして椅子に背を預けた。


「モリガンは俺達でも良く分からないんスよね」

「アイツはロボットだろ、誰も素肌見た事無いんだろ?」


タナトスが嘲笑うように言った、確かにとヘリオスが食い付き二人で盛り上がる。


「…………血」

「どうしたの?アストライア」

「…………モリガンの見た」

「アイツの血を見たのかよ!?オイルとかだったら笑えるぜ」

「…………真っ赤」


当然だ、ロボットに神が付いたら苦労しない、しかしあそこまで隠しているとなると何かしらあるに違いない、と阿修羅あしゅらは考えていた。


「ねぇねぇ!日本って全部ゴールドで出来てるのよね!?」

「ククルカン、それは大きな間違いだ、ゴールドで出来ているのは通称金閣寺、しかも食事の華やかさを出すのにも使われるあの金箔を張り付けただけの寺だ、足利尊氏が立てた鹿宛寺をマルコポーロが見て『黄金の国ジパング』と言った、ただそれだけの事だ」


無駄に詳しいダグザ、知識神の神徳は伊達じゃない、日本人でもそこまで知っている者は少ないのに、ポルトガル出身のダグザがそこまで詳しくしっていると流石に気持悪い。


「はぁ、それにヘリオスも同じ間違いした」

「ふっ、戦う事しか出来ない馬鹿共が」

「何よ何よ!ダグザに言われるのは毎度の事だけど、ヘリオスと一緒にしないでよ!」

「ククルカン、そういうのを確か『どんぐりの背比べ』って言うんだぞ、そうだよな阿修羅あしゅら?」

「そうよ」


意外にもアルテミスが日本のことわざを知っていた、ククルカンは悔しさから机をバンバン叩きながら怒りを露にした、そんなククルカンをユピテルが慰める。


「大丈夫だぁ、悪いのは黄金の国なんて言ったマルコポーロだべ?ククルカンはわるぐねぇ」

「何かムカつくけどありがとう」


メルポメネは二人の和やかな雰囲気を見て笑って立ち上がった、それを見るとアストライアも慌てて立ち上がる。


「…………戻る?」

「うん、行く?」


アストライアは首を大きく振ると走ってメルポメネの基に向かい、隣に立つとメルポメネの腰の辺りキュッと掴む、二人はそのままエレベーターに乗り込んだ。


「あぁ、かったりぃ!」

「どうしたんスか?」

「これから任務なんだよ」

「タナトスが任務を嫌がるなんて珍しいッスね」

「タイだぞタイ!何であんな僻地に俺様が行かなきゃいけないんだよ!」


色々ぶつくさ言いながらタナトスはエレベーターに乗り込んだ、完全にエレベーターの扉が閉まった後に扉を蹴るような音が聞こえた。


「俺も失礼する、まだ報告書が残ってるもんでな」

「ヤバ!アタイもだ!」


ダグザとアルテミスはエレベーターが戻ってくるのを待って乗り込んだ。


「ククルカン、今日暇が?」

「暇よ」

「楽しそうな映画見つけたから見に行がねぇか?」

「行く行く!」


ククルカンは勢い良く立ち上がってユピテルの手を引っ張った、ユピテルは引きずられながらエレベーターに乗り込んだ。


「俺達だけッスね」

「はぁ、私の部屋まだ聞いて無かった」

「それなら俺の部屋の前ッスよ」

「案内して」

「了解ッス!」


阿修羅あしゅらとヘリオスは同時に立ち上がった、ヘリオスが阿修羅あしゅらに駆け寄ると、後ろから押してエレベーターに押し込んだ。

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