02:バチカン
2日前
Japan VCSO Japapn branch office
阿修羅は突然部長室に呼び出された、任務から帰って来たばかりで疲れている中、無理矢理大至急来いと言われてイライラしながらエレベーターを降りた。
何故か部長室は暗く大きな外部と映像通信する時に使うモニターだけが光っている。
「ボス!用って何?これから食べ歩きに行きたいから早くして」
「あぁ、それ無理かも」
阿修羅は小さな階段を登るとモニターには何処かで見た事ある外国人、前と同じような金髪に襟にカミゥムマーンの刺繍の金色孔雀と同じ白いコート、そして前見た時と同じように椅子に座りチーズケーキを食べている。
「うわぁ、阿修羅ちゃんだ!2年前より大人っぽくなってて可愛い」
「もしかして元帥?」
VCSOのトップ、通称元帥、このモニターに映っているチーズケーキを食べている男の一言で裏の世界が動く、それくらい凄い人物、のハズ。
「写真集欲しいなぁ」
「はぁ、ホーリナーはアイドルじゃないのよ」
「そうだね、まぁ良いや、こっち来たら僕が作れば良いか」
「こっちに来てから?」
「そうだよ、阿修羅ちゃん、君は神選10階の第10階に選ばれた、拒否権無しね」
再びチーズケーキを食べて微笑む、阿修羅は固まって元帥を眺める事しか出来ない。
「嫌だ!」
「お、おい!摩和羅女!」
小さな階段を登って摩和羅女が上がって来る、それを追うように緊那羅が慌てて入ってくる。
「ダメだ!阿修羅は日本にいるんだ!」
「摩和羅女、出てこないって約束だろ」
「うわぁ、摩和羅女ちゃんと緊那羅ちゃんだ、日本支部は可愛い娘ばっかりだね」
元帥は笑顔で話しているが、摩和羅女は今にも泣きそうな顔でモニターを睨む、話の中心人物の阿修羅は固まったまま動こうとしない。
神選10階、それは化物の集団、一人で一国の軍隊を滅ぼせると言われてるくらいの力を持った者が10人集まる裏の支配者。
「まぁそういう事だから阿修羅ちゃん、明後日バチカンの本部に来てね、バイバ〜イ」
強制終了、真っ暗な部屋には摩和羅女のすすり泣く声だけが響き渡る。
金色孔雀は無言で電気を付けるとぼーっとしている阿修羅が真ん中にいる、摩和羅女はすがりつくように阿修羅の腕を掴む。
「阿修羅ぁ、行かないよな?」
「行かなきゃダメだよ、元帥が言ってたでしょ、強制だって」
「阿修羅が行かなかったらどうなるの?」
「分かるでしょ?」
念のために聞いた緊那羅に笑顔で応える金色孔雀、摩和羅女はその場に座り込み涙を流した、阿修羅はやっと正気になり摩和羅女に目線を合わせる。
「摩和羅女、泣かないでよ」
「でも、でも、阿修羅は遠くに行っちゃうんだぞ、3人でクレープも団子も食べれなくなっちゃうんだぞ、それでも阿修羅は良いのか?」
「摩和羅女、阿修羅を困らせるな、阿修羅だって本当は行きたいんだろ?」
阿修羅は何も言わずにうつ向くだけ、緊那羅も摩和羅女も知っていた、阿修羅が前々から神選10階に憧れていた事に。
緊那羅と阿修羅は神選10階入りの最有力候補になる程の実力になっていた、阿修羅は体を動かすタメに戦いを求めてる、しかし阿修羅は強くなるにつれ任務が楽になってきた、それで体が動かせなくなったと緊那羅にぼやいていた。
「行って来なよ阿修羅」
「嫌だ!緊那羅は嫌じゃないのか!?」
「阿修羅のタメだよ」
緊那羅は唇を噛み締めながら目を伏せた、摩和羅女もそれを見て涙を拭う、阿修羅は力無く笑って摩和羅女の肩に手を乗せた。
「摩和羅女、永遠に別れる訳じゃないんだから」
「そうだよ、神選10階に俺が任務依頼すれば多分阿修羅が来てくれるよ」
「それは無いよ、私がいるから」
阿修羅は笑うと立ち上がった。
「緊那羅、最後に手合わせお願い」
「負けて自信なくさないでよ」
「大丈夫、私は神選10階、戦闘神の阿修羅だから」
Italy city area
市街地を歩く阿修羅、真っ白なYシャツを第3ボタンまで開けてそこに合わせてカミゥムマーンの刺繍のネクタイをしている、袖は3回折って七分、制服の紺のスカートに黒いスパッツ、そして腰に届くくらいの綺麗な黒髪のストレート。
2日前に金色孔雀に手渡されたのはアバウトなイタリアの地図と紹介状のみ、バチカンの位置は一応分かるが細かい道は分からない。
「はぁ、頭悪い」
阿修羅は地図をクシャクシャにして適当に放り捨てた。
「お゛い!ゴミを捨てるな゛、綺麗なイタリアのまぢが汚くなるべぇ」
「(英語ってこうやって訛るんだ、ってか私が分かるって事は………)」
阿修羅は片耳を塞ぎながら、丸めた地図を広い近くのゴミ箱に捨てた、阿修羅ため息をつくと声の主を捜した。
「ひでぇ奴だぁ、何でゴミすでる、お前何処の隊だ?」
「隊?」
そこに立っているのは赤茶色の天然パーマの髪の毛で右目が見えない少年、大きなジーンズの裾は折って調節してある、白いチェックシャツも袖を何度か折り調節してある、そして何より肩から肘にかけてカミゥムマーンの刺繍、つまりこの少年はホーリナー。
「もしかしてオラの事知らないどか言うんじゃないよな?」
「はぁ、知らないわよ、初めて来たんだから」
「初めて?お前、名前さ何だ?」
「阿修羅よ、日本から来た」
「もしかしで――――」
「何やってるんスか?ほら、持って持って」
後ろから歩いて来たホーリナーに無理矢理ダンボールの山を押し付けられた天パの少年、天パの少年はよろめきながらも何とかダンボールの山を安定させた。
「へ、ヘリオス、その子は―――」
「うわぁ!超可愛いッスね、ユピテルに勿体無いッスよ」
阿修羅を睨む阿修羅と同じ年くらいの男、小麦色の肌に金髪のハネた髪の毛、前髪だけ上がっていて明るさが際立つ、紺色のポケットの多いハーフパンツに、右側にカミゥムマーンの刺繍が入ったダウンベストを全開で着ている、これがヘリオスと呼ばれたホーリナー、そして天パの少年はユピテル。
「田舎者は早く届ける、じゃないとまた料理長に怒られるッスよ」
「それはヘリオスも―――」
「早く行く!」
「あとその女の子は―――」
「気を付けて帰るんスよ」
ヘリオスは殆ど強引にユピテルを帰らせた、ヘリオスは阿修羅を舐め回すように見ている。
「はぁ、何?」
「可愛いッスね」
「はぁ、おだてても何も出ないわよ」
「別に良いッスよ」
阿修羅はヘリオスを無視して歩き始めた、ヘリオスは慌ててポケットに手を突っ込みながら追って来た。
「そうだ、貴方バチカンって何処にあるか知ってる?」
「知ってるッスよ」
「道案内して」
「何で?」
「行きたいからよ」
「へぇ、本部にッスか」
ヘリオスは渋ったような顔をして阿修羅を覗き込んだ。
「多分入れないッスよ」
「何で?そっちから呼んでおいて」
「何だ呼ばれたんスか!」
「当たり前でしょ、じゃきゃこんな所来ないわよ」
「じゃあ行こうか!」
ヘリオスは阿修羅の手を掴み歩き出した、阿修羅は男性に触れるのが初めて、そのゴツゴツした手に多少なりと心拍数が上がっていた。
ヘリオス、太陽のような笑顔に底無しの明るさ、阿修羅はこういうタイプが嫌いだった、理想としては静かでクールな年上タイプが最近出来た好み。
「ジャパンって全部ゴールドで出来てるんスよね?」
「はぁ、いつの時代?全部金なのは金閣寺っていうお寺だけ」
「凄いッスね!全部ゴールドなんスか!?」
「それだけね」
「見てみたいッスね、ジャパンに任務行く時があったら案内頼むッスよ!」
阿修羅は心の中で緊那羅いる限り日本への任務が無い事を分かっていた、万が一緊那羅が神選10階に入るのなら話は別だが。
「それにして変わった格好してるんスね」
「貴方に言われたくないわよ」
日本の制服姿の女にダウンベストの前をはだけた男、どちらも人の記憶に残ったら一緒忘れられない思い出になるだろう。
「これならいつでも海に入れるじゃないッスか」
「はぁ、海に入る任務なんて皆無に等しいわよ」
「分かって無いッスね、世界各地には色んなサーフポイントがあるんスよ、任務だけで世界を飛び回ってたら頭がおかしくなっちゃうよ」
今のヘリオスの一言で阿修羅は世界各地の食べ歩きを想像した、世界には色々なスイーツがある、それを食べ歩ける毎日を想像して生唾を飲んだ。
ヘリオスは阿修羅の手を掴み腕をブンブンと振り回す、阿修羅はヘリオスのペースに呑まれ手を離すに離せない。
「着いた着いた、ココを越えれば向こうはバチカンッスよ。
まぁ俺らにはバチカンって言うより、VCSO本部って言った方が馴染み易いッスね」
阿修羅は恐る恐るイタリアからバチカン、VCSO本部に足を踏み入れた。
ホーリナーに成り2年目、異例の早さで神選10階に入った阿修羅、阿修羅がこの地に足を踏み入れた事により、世界は大きく歪んでいく。