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10:祭


Vatican VCSO headquarters


ヘリオスは任務後の報告書との格闘に追われていた、ヘリオスから言わせればエビルユニオンの群れの方が圧倒的に楽らしい、ヘリオスは報告書が溜りすぎて倒れた事もあるくらいだ。


報告書を書き終ったヘリオスは床で死んだ虫みたいになっていた時、誰かが扉をノックした、ヘリオスはゴキブリみたいに這って玄関まで行き、扉を開けた。

こには阿修羅が立っている、阿修羅の顔は何故か暗い、ヘリオスは阿修羅の顔を見るとゆっくり立ち上がった。


「どうしたんスか?」

「ダグザが負けた」

「手合わせでもしたんスか?」

「違う、任務中に悪魔が現れてその悪魔に………」


ヘリオスは阿修羅同様に暗い顔になった、しかし空元気の満面の笑みで阿修羅を元気付けようとするが、阿修羅にはショックが大きすぎたらしい。


「生きてるんスよね?」


阿修羅は無言で頷く、ヘリオスは本当の笑顔で阿修羅の両手をヘリオスの両手で挟む、今の阿修羅にはそれが暖かく感じられた。


「死んでないなら良いじゃないッスか、ダグザも疲れてただけッスよ」

「ダグザの傷は頭からの軽い流血だけ、それにダグザは神技を使ったのに悪魔は武術だけだったんだって」


ヘリオスは今度こそ本気で笑顔を失った、ダグザの神技を知っているからだ、ヘリオスでもダグザと神技ありで戦ったら勝算は低い。


「でも何でダグザと悪魔は戦ったんスか?」

「分からない」


落ち込んだ阿修羅とヘリオスはドアの所で黙ったまま立ち止まってしまった、うつ向き、流れる沈黙、ヘリオスは必死に辺りを見回して話の種を探した。

そしてヘリオスの目はカレンダーで止まった、ヘリオスの顔がパアっと明るくなると阿修羅の肩を掴んで揺らす。


「阿修羅!フェスティバルに行くッスよ」

「お祭り?」

「そうッス!」

「でもそんな気分じゃ――」

「行けば気分も晴れるッスよ!そうと決まったら行動あるのみッスね、行くッスよ!」


ヘリオスは阿修羅の手を掴んで部屋を出た、すぐ近くにあるエレベーターのボタンを押して待つ、阿修羅はあまりの出来事にヘリオスに手を掴まれている事に気付いてない。
















Italy city area


ヘリオスと阿修羅は祭の出店を見ながら歩いてる、日本とは違った華やかさに阿修羅は半分元気を取り戻した、後の半分はヘリオスが阿修羅の腕を振り回すタメに萎えてしまう。

阿修羅は当然スイーツの食べ歩き、相手がヘリオスのせいで名前等は分からないが、薄い記事を重ねて中にクリームが入った物やチーズケーキに似た物、名前が表記されていても英語や日本語ならまだしも、イタリア語を読めるのは恐らくダグザとククルカンくらい。


「よく食べるんスね」

「そう?」

「さっきから食べっぱなしじゃないッスか」


阿修羅はそうかなと言いつつも食べ続ける、二人は歩き続けていると目の前から見慣れた二人が、赤茶色の天パで右目の見えない少年と、金髪のミディアムボブで襟が高いジャージのファスナーを一番上まで閉めた女の子。


「ユピテル!ククルカン!」


ククルカンは大きな手を振りながら走って来る、ユピテルはそのククルカンに引っ張られながらつんのめるような状態で走って来た。


「良いな良いな!スフォリアテッラとパスティエーラだ、一つ頂戴!」

「良いわよ」

「サンキュー!」


ククルカンは阿修羅が紙袋の入れたクリームの入ったお菓子のスフォリアテッラと、チーズケーキのようなパスティエーラを両手に取って頬張った。


「スフォリアテッラとパスティエーラって言うんだ」

「イタリアの南部のお菓子よ、うち的には北部の方が好きなんだけどね」

「南部と北部で何か違うの?」

「全っ然違うって!」

「食べてみたい」

「行く行く!?」

「行きたい!」


ククルカンはOKと言いながら口にスフォリアテッラを放り込んだ。


「コレがら広場で踊りやるみてぇなんだげど、行がねぇか?」

「行く行く!」

「私も行きたい」

「じゃあ俺も行くッス!」


4人は広場に向けて歩き始めた、阿修羅とククルカンは笑いながらお菓子を食べ、ユピテルは3人を先導する、ヘリオスは楽しそうにククルカンと話てる阿修羅を見ながら。




4人が広場に着くと既にイベントは始まっていた、人を掻き分けて一番先頭まで行く、ククルカンにとっては馴染みが深いが、阿修羅にとっては初めて見る踊り、ユピテルは手拍子しながら子供のように楽しむ。


「どうどう?イタリアの踊りって綺麗でしょ?」

「俺的にはフラダンスの方が優雅で良いッスね」

「私の国のよりは良いわね」

「オラの国には踊りがねぇから良いなぁ」

「田舎は踊りも無いんスか?」


ユピテルはヘリオスを見て膨らんだ、阿修羅はそんなに年が、離れて無いのにユピテルがいやに可愛く見えてしまった。


『タラントゥラか』

「「「モリガン!?」」」

「はぁ、脅かさないで」

『僕もこの踊り好きだね』

「本当本当!?やっぱりイタリアは良いよね?」

『イタリアが良いわけじゃないよ、この狂ったようなタランチュラみたいな踊り方が好きなだけだよ』


4人は呆れてため息をついた、モリガンは踊りを見ているが顔を覆う真っ白なマスクのせいで表情が分からない、不気味な二重声が更に感情を隠す、そしてモリガンの真っ白なローブを引っ張る誰か。


「………………任務」

「アストライア、何してるの?」

『そうだ、忘れてた、ユピテルとククルカンはコレから任務だよ』


二人は明らかに不満そうな顔でモリガンを見る、ククルカンよりも小さいモリガンは若干見上げるような形となった。


『僕達も任務だからコレで失礼させてもらうよ』

「………………バイバイ」


二人は人混みを抜けて任務へ向かった、ユピテルはごねるククルカンに手を差し出す、ククルカンはジャージの襟が高く口が隠れてて表情が分かり憎いが、不機嫌なのは何となく分かる。


「行くべぇ」

「行くよ!行けば良いんでしょ!?」


ククルカンはユピテルの手を引っ張ると、人混みを押し退けて任務に向かった。

残されたヘリオスと阿修羅は顔を見合わせ無言で考える、そしてヘリオスは暗みがかった空を見上げ、阿修羅の手を掴んで笑う。


「コレから花火があるんスよ!」

「見るの?」

「とっておきの場所があるからそこに行くッスよ!」


ヘリオスは阿修羅の手を引いて人混みを抜け出し、元来た道を引き返した。

笑いながら走るヘリオス、阿修羅はヘリオスに置いて行かれないようにしっかりと手を掴み、ヘリオスの手を掴んだまま走った。


















Vatican VCSO headquarters


結局バチカンに帰って来てしまった、阿修羅はブスッとしながら本部塔を上がる。

そして物置となっている階で止まる、阿修羅は頭にクエスチョンマークを浮かべながら、ヘリオスに手を引かれて物置を走った。

ヘリオスは荷物を掻き分けて奥に進むと、窓を開けて阿修羅を呼んだ。


「ココはとっておきッスよ」

「え?ちょ、ちょっとヘリオス!」


ヘリオスは阿修羅を手招きすると笑って窓から飛び下りた、ココは地上50m以上、そこから飛び降りたらホーリナーと言えど間違いなく死ぬ。

阿修羅は慌てて窓から顔を出すと下ではヘリオスが手を振っている、しかも地上50mどころか2m程下にいる。


「ココは本部塔と居住塔の連絡通路の屋根ッスよ」

「はぁ、先に言ってよ」

「早く来るッスよ」


阿修羅は安心して窓から飛び下りた。


「あとココ滑るッスよ」

「先に言ってよ!」


阿修羅は案の定足を滑らせ、ヘリオスに受け止められた、阿修羅が顔を上げるとヘリオスの顔が至近距離にある、受け止めたのだから極自然。

阿修羅は顔を真っ赤にしてヘリオスから離れた。


「ちぇ、良い感じだったんスけどね」

「う、うるさいわね」

「それよりも、あっち見るッスよ」


阿修羅はヘリオスの指差す方を見るとそこにはイタリアの街並みが、暗い中で街頭や家の灯り、更には祭の灯りで彩られている。


ドンッ!


真っ暗な夜空に打ち上がる大きな丸い花火、国は違えど花火に大差はない、爆発する度にイタリアは花火色に染まる。


「凄い………」

「立ってないで、座るッスよ」


阿修羅は目を反らさずに座った、地上50mからの花火観覧、真っ正面で上がる花火は同じ物でも一際美しく思える。

ヘリオスは食い入ってる阿修羅の手を握った、阿修羅は気付いていても拒否はしない、応えもしないが。


「夜の太陽みたいッスね」

「ヘリオスと被らせてるの?」

「バレちゃったッスね」


阿修羅はため息をついた、しかし何故か笑みになってヘリオスの横顔を見つめる、花火が打ち上がる度に照らされるヘリオスの顔、お世辞抜きで整った顔と言える、大きな目に大きな口、鼻筋は通っていて日本人とは作りが違う。


「ヘリオス、阿修羅の神徳って何か知ってる?」

「当たり前ッスよ、戦闘神ッスよね?」

「一つはね」


花火を見続けてたヘリオスは大きな目を更に大きくして阿修羅を見る、若干つり上がった目に形の整った目と鼻、大和撫子、それが阿修羅を形容するに等しい言葉。


「戦闘神の阿修羅、でも国によっては太陽神の阿修羅なの」

「本当ッスか!?」

「本当よ」

「何か運命ッスよ!これは運命意外の何者でも無いッスね」


ヘリオスは身を乗り出して身体中で感動を表現した、阿修羅はその時に近付いたヘリオスの顔に見入ってしまった自分を嫌悪した。


「でも太陽が二つもあったらうっとうしいわよね」

「そうッスか?いつでも日が昇ってて良くないッスか?」

「それも嫌」

「じゃあ一つになれば良いんスよ」


阿修羅は目を真ん丸にして、顔を真っ赤にした、ヘリオスは分かっているのかいないのか分からないが、ケロッとしている。

阿修羅は無言で花火に視線を移すが、隣が気になり全く目に入らない。

男性に対する免疫が皆無に等しい阿修羅にとって、心拍数を急上昇させるのには充分過ぎるくらいだ。

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