戦士の訓練所
集落は女性だけ。人間尺度の見掛けでは10代半ばから後半のお姉さん達。全員武装しているので、駐屯地の様な所なのかも知れない。
身支度を整え、別の家に連れられる。一番大きな家で、中に居た人は周りより少し年上で鎧の羽根飾りがグッとゴージャスなので、きっと隊長とかのリーダーだろう。
『異なる世界からやって来たんだろう、言葉を教えて上げなさい。』
唯一には何を言っているのか解らないが、世話係を仰せつかったらしい、先ほどの娘が自分を指差して、
『私はベスタ。ワタシハ ベスタ』
今度は唯一を指差し、
『貴女の名前は?』
唯一はいつも誂われていた女性名を名乗る事にして、自分を指差し、
「ゆい」
世話係(?)を指差し、
「べすた?」
『そう!ベスタ!』
リーダーを指差し、
『セレス隊長です。』
「せれすたいちょう?はじめまして!」
『ああ、私はセレスだ。』
と握手、初めて会話が通じた。
客人として迎えられた様で、当日の夜は、全員で焚き火を囲んでのパーティーだった。翌日からは班毎だったので、歓迎会だったらしい。
暫く寝食を共にしていると、戦士の訓練所だと解った。最初に会った3人が教官でセレスがその上官らしい。
一緒に訓練を受け、指揮に使われる単語が理解出来る様になると、それを手掛かりに、語彙を増やし、百日程経つと、カタコトのエルフ語が身に着いた。単語は全く違うが、文法が日本語に似ており、英語のRや曖昧音的な、日本語に無い発音が無いのでドンドン上達、若い女性のお喋り好きは世界や種族を越えて共通で、ゆいの言語習得を加速させた。二百日頃には日常会話に困る事は無くなっていた。
「ゆいは、言葉を覚えるのも速かったけど、文字はもっと速いな!」
セレスは他の言語の種族に言葉を教えた経験が有り、ゆいの上達に舌を巻いていた。
「種族が違ったら、言葉も違うんですか?」
「いや、元は色々有ったが、二百年程前からエルフ語が共通語になっている。ヒューマンとドワーフはずっと昔からエルフ語で、他もだんだんとエルフ語になって、最後に龍人が共通語を受け入れたんだ、あの時は大変だったんだぞ。」
「えっ?二百年前にエルフ語教えてたんですか?」
「ああ、今が250位だから、50歳位の頃か?」
長命種とは知っていたが、まさかそんな歳とは思っていなかった唯一は言葉を失った。
「元の世界ではエルフもヒューマンみたいに歳をとるのか?」
「私のいた世界にはヒューマンしかいません、百まで生きるのは珍しいんですよ。」
今度はセレスが黙り込んだ。
文字をある程度覚え、魔法辞書にトライ。最初に覚えたのはステータスの表示と閲覧。早速自身の表示を確認するとレベルは51、ここ来て一つ上がっていた。訓練生たちは2〜5、ベスタは7、最初に会ったもう2人パレスとジュノは9、セレス隊長は12だった。
「51って異常じゃない?何か誤魔化せないかしら?」
辞書を捲ったが見当たらない。後で解ることだが、他人のステータスを閲覧出来るのは極めて稀なスキルで、5倍程度の魔力差がなければ見られ無いので心配する必要は無かった。
唯一が合流して281日、訓練としては1年が経過して、集落に戻る事になった




