奴隷解放
翌朝、朝日と共に起きると、昨夜先に到着していた高級馬車の御一行様の使用人と護衛が朝食の支度を始めていた。
ゆいとミンシルが水場に行くと、ヒューマン男性が3人、龍人が好む服で顔を洗いに来ていた。
「あっ!東さんに、皮つ・・奥野君!」
クラスのヲタク系3人組だった。
「君達、奴隷商に捕まって、売られそうだって聞いたんだけど?」
特に不自由な様子も無く、ミンシルが尋ねた。
「俺達さ、龍人マダムに買われたんだ。すげぇ金持ちみたいなんだよね!」
と、隷属の首輪を高級アクセサリーの様に自慢げに見せて、嬉しそうに話した。
3人の話しに寄ると、奴隷商に捕まったが直ぐに売られたとの事。
「私達が買い戻して解放して上げるから、そのマダムさんに会わせて!」
ゆいが提案したが、
「今の仕事気に入ってんだ、この世界じゃ何が出来るか解んないし、冒険者なんて絶対無理だからね。」
ミンシルは食い下がり、
「奴隷の仕事?気に入ったって、何するのよ?」
3人は顔を赤らめ、
「マダムの添い寝係だよ。龍人ってね・・・」
一般的に龍人女性は性欲が強く、その解消に男性を侍らすのがステータスらしい。ゆいはチュートリアルで自分が龍人だった時も、パーティーのウーもそんな傾向は無かったので不思議だったが、嘘や冗談ではなさそうだ。奴隷の価格相場を尋ねたが
「1人金貨180枚を3人で500枚だったって言ってたよ。マダムは良い買い物って喜んでたけど、相場は解んないな。売った方は高く売れて喜んでたのかどうかは微妙かな?」
あまり正確じゃないかも知れないが、一応は参考価格として、17人なら3060枚。魔石が売れればなんとか成りそうだ。60は値切れるかな?
龍人マダム御一行の馬車は4頭立てで最高級の足回りなので、一般的な馬車よりかなり速いだろう。奴隷商の馬車はそれより速い訳はない、ここで待っていれば会える筈。
ゆい達はキャンプスペースで3日待って、ようやく奴隷商と対面出来た。
ゆいが想像していた奴隷商は、思いっ切りアウトローだったが、今まで見た他の商人の馬車と特に変わりは無かった。
勿論、商人自身も極悪人をイメージしていたが、全くのカタギの雰囲気だった。奴隷が合法のコッチの世界では極一般的な仕事で、元の世界なら、ハローワークや就職仲介の様な立ち位置の様だ。ただ裏社会で非合法の取り引きをしている者もあるらしい。
待ち構えていたゆいは奴隷商の馬車を訪れ、
「私、異世界から転移して来た者ですが、一緒に来た仲間が奴隷として貴方が所有していると聞いたのですが。心当たり有りませんか?」
奴隷商は真顔で、
「手前どもは、正式に許可を受けて商いしておりまして、首輪もキチンとしたモノしか扱う事はありません。」
使用人に何か指示すると、後ろの馬車に駆けていき、直ぐにセーラー服を着たドワーフ男性を連れて戻って来た。
「ご覧ください、王国が認めた首輪です。」
『あっ、深平さん!』
ゆいが日本語で呼ぶと
『あ、奥野君だよね?この人達は真っ当な奴隷商なんだけと、捕まったの所がそうじゃなくて、闇ルートでロンダリングされたみたいなんだ。隷属の首輪も良く出来たニセモノの筈!』
ゆいは深平の首輪と、使用人の首輪を鑑定して比べると、明らかに違い、深平の物には全く魔力が籠って居なかった。その事を奴隷商に告げると、首輪を鑑定する虫眼鏡のような魔具で隷属の首輪を調べ、
「ま、まさか!こ、こんなに精巧なニセモノなんて・・・」
青ざめた奴隷商は、
「す、直ぐに!か、解放します・・・コチラでご勘弁戴けないでしょうか?」
ズッシリした革袋を差し出した。非合法取り引きが表沙汰になると、許可が取り消されるので必死だった。
「解りました。でも、ココで解放されてもアシが無いので、カヒサー迄運んでからでは如何でしょう?」
「それでは、一番後ろの大きい馬車を1台差し上げます、私は転売した3人を買い戻したいので、先を急がせて頂きます。
「有難うございます、でも17人と私達3人で20人は無理じゃないかしら?」
『ソレなら俺が説明するよ、アレで充分だから!』
深平のアシストで奴隷商の提案が通った。




