獣人の集落にて
まだ薄暗い日の出前。ざわつきを感じてゆいが目を覚ました。テントの周囲には結界を張っているので特に心配は無いが、隣のテントから、
「なんか、取り囲まれてるみたい!」
ミューミュが這って来た。
結界の外には、ハンター風の獣人が10人程、入っては来れないし、中は見えて居ない筈。
「あっ!ハーブか?」
嗅覚については遮蔽していなかったので、自分達が使うハーブの香りに違和感を覚えたのだろう。
ゆいは夜明けを待って、視覚と聴覚の遮蔽を解いて獣人達に、
「おはようございます!私達、異なる世界から来た者です。ヒューマンの街に行きたいのですが、道に迷ってしまいました。もしご存知でしたら、御教示頂きたいのですが。」
獣人のリーダーらしき猫獣人が、
「解った、集落に戻って地図で説明しよう。ただその前にひとつ確認したい。」
ゆいは、交渉出来る相手で、レベル20台なので、安心して結界を解いた。想定通り、害獣避けのハーブの件で、元の世界で一般的に利用していたと説明した。
「そうか、俺達の仲間で3日前から戻って居ない奴等が居てな、香草を燃やす匂いかしたんで、奴等が近くに居るのかと思ったんだ。」
「私達は南の方から来たけど、それらしい気配な無かったわ。」
「そうか、なら、付いてきてくれ。すぐ近くだ。」
慌ててテントを片付けていると、
「おお、猫族も居るのか!俺は虎鉄だ、お前は?」
キョトンとするミューミュに日本語で、
「コチラ、虎鉄さん。貴女の名前を聞いてるわ。」
「ワタシハ、ミューミュ、デス」
カタコトのエルフ語で答えると、虎鉄は日本語で、
「こっちの言葉は覚えていないのか?」
「挨拶とか、カンタンな事は解るけど、実際に聞いたの初めてなの。」
「ジャア!ヨロシク。」
虎鉄はゆっくりのエルフ語で話した。
「コチラコソ!」
すぐと言う割に、1時間は掛かって獣人の集落に着いた。草木でカムフラージュしたゲートをくぐると、準備期間に過ごした獣人の集落に酷似していたが、住民も王都迄の地図も全く違っていた。
朝食が振る舞われ、森を横断するには軽装過ぎると、装備の調達を勧められた。チュートリアルで手に入れたアイテムも現金も有ったが、ここで狩った熊の素材と物々交換で着替えと装備を揃えた。
ゆい、桃、ペコラは道順を聞く序でに状況把握。ここは『ロームネン』という地域で島の東端、ヒューマンの街は西端に有るそうだ。男子達が向かった方向には『ミタッキ』という地域が有りそこにも獣人の集落が有るそうだ。同じ様に道を聞けば、かなりの遠回りだが目的地には辿り着くだろう。
委員長とミンシルは、食料の加工等をしている女性達に混ざってお喋りしながら、エルフ語の確認とか気候とか流行りとかを聞いていた。ミューミュも一緒だったが、いつの間にか居なくなっていた。
夕方になると、お風呂の時間。大きな露天風呂が有り、男性タイム、女性タイムに分かれて入浴。
「女子の時間だニャ!」
どこかに行っていたミューミュが戻って来た。昼間は虎鉄と過ごしていて、男性タイムで入浴していた虎鉄から交代の伝言を届けてくれた。
浴場に来ると、元男子のゆいは引き返そうとしたが、
「何か気にする事あるの?」
委員長に引き留められた。地元の女性達を含め、裸を気にしているのはゆいだけだったので、なるべく空を見るようにして湯に浸かった。
「あんね、アタシここで暮らすニャ!」
驚いたゆいは、そちらに気を取られ、自分の視線に罪悪感を持たなくなっていた。皆んなで相談して本人の希望重視と言うことに決定した。




