異世界へ
学校祭のエンディング、フォークダンスの輪で奥野 唯一は肉体的な安堵と精神的な屈辱でただ機械的に踊っていた。
時は遡り、学校祭開会してすぐのクラス展示。唯一のクラスはメイド喫茶を開いた。
ゴスロリ調のメイド服のウェートレスは、コスプレに興味のある女子と、唯一を含む虐められっ子の男子3人。
他の2人はクオリティーの低い女装で、ひとしきり弄られて解放されたが、ホンモノの女子と見分けの付かない唯一は、成りきってしまえば気にならないし、ここで働いている内は、殴られたり蹴られたりしないので、少しの休憩だけでずっとホールに出ていた。
恥ずかしがって困惑する唯一を期待していた虐めっ子達は、笑顔で働く姿に苛立ちを隠さなかった。
3日目迄メイド喫茶を虐めの傘にしていた唯一たったが、最終日の夕方、多数の生徒が期待する、フォークダンスには参加せざるを得ない。
店仕舞いして、制服に着替える。女子達と一緒に着替える訳にはいかないので、皆んなが終るのを待って更衣室にしている一角へ。
メイド服を脱いでバッグを開ける。今朝脱いだ学ランが入っている筈だが、中身はセーラー服。他にはジャージも何も無いので、セーラー服とメイド服の二択。グランドで1人だけのメイド服よりは目立たないと想定してセーラー服に着替えた。
腹立たしい事に、偶然か、狙いか、メイドの小道具として身に付けていたパット増々で膨らませた胸にジャストフィット。ウィッグもそのままでグランドに向かった。
「うわっ!!可愛い!!って、ゴメン、ソレってやっぱり虐められてるんだよね?男子が気付かないうちに着替えて来たら?」
委員長こと、秋田 留美、後半からは小声で唯一を避難させようとしたが、
「メイド服で恥ずかしがらなかったから欲求不満なんでしょ?学ラン返して貰わないとならないからフォークダンスはコレで頑張るよ!もう薄暗いし。」
恥ずかしがったら虐めっ子達の思うツボ。ダンスは練習の時から一番背の低い唯一は、人数合わせで女子パートを踊る事が多かったので、全く問題無く踊り、クラスの男子が相手の内は、ニタニタと冷やかしの眼差しで攻められていたが、パートナーが替わっていき、事情の知らない3年生が相手になると、美少女の手をとっていると思い普通にデレていた。
花火が上がってダンスタイムが終了した。多くの生徒達は名残り惜しく薄れて行く花火の煙を目で追っていたが、唯一はやっと解放されると、虐めっ子のボス、生島を探し、学ランの返還を求めた。
「あ?なんだ、女装なんかして?」
「学ラン返してくれよ。」
「知らねぇって。」
取り巻き連中にも聞いたが誰も答え無い。諦めて自力で探す、殆どの生徒も教師も帰った頃、控え室に使っていた空き教室のバケツにそれらしき物が見つかったが、鍵が掛かっていて断念。着替えを諦めそのまま帰宅した。
学校祭の翌日、片付けに登校し、バケツの中にびしょ濡れの学ランを発見した。私服で来る訳にはいかないのでセーラー服だったが、また着替える事が出来なくなってしまった。
真っ暗で何も聴こえ無い。寒くも暑くもなく、臭いも感じ無い。何が起きたんだろう?
びしょ濡れの学ランを広げた所までは覚えていた。それからどうなった?唯一は記憶を辿ったが、何も思い付かない。
明けましておめでとうございます。
本日より、土日祝の深夜1時更新の予定で連載致します。
先ずは、三ヶ日と4日日曜の4連投からスタートです。
よろしくお願いいたします!




