7 魔法のアミュレットと香水
結局、私たちは3人とも恋愛運向上のお守りは買わずに店をあとにした。
うーん、恋愛なんてどうやったら関わり合いになれるんだろうか。真面目な私には未知の世界だ。
きゃっきゃしているお姉さんたちを見ながら遠い目になる。
さて、気を取り直して私たちは早速、買ったアイテムを使ってみることにした。
店から出て、人通りの少ないところで3人で立ち止まる。基本魔法が上達するというアミュレットを手に取り、しげしげと眺める。
アミュレットは小さな革袋に包まれていた。革袋の中を開けると、小さな宝石のような綺麗な丸い石が入っている。これがアミュレット本体だ。
水晶のような透明な宝石に見えるが、よく見ると、中に絵具を垂らしたように薄く色が付いている。
色は一色ではなく、赤、青、緑、黄色の各色が薄いもやのように石の中を漂っていて、複雑に絡み合っている。
「スー先輩、それどうやって使うんですか?」キィちゃんが私の手元にあるアミュレットを覗き込んでくる。
「手に持って祈ればいいみたいだよ」
私は眺めていた石を革袋に戻し、革袋を手に持ったまま、右手と左手を握り合わせる。そして、手をぎゅっと握りしめて目を閉じて、真剣に祈る。
「魔法が上達しますように」
祈り終わって目を開けたけど、特に何の変化も感じられなかった。
うーん、効果があるのかはわかんないや。
ぷしゅっ、と顔の横でなにかが吹きかけられた。
「わ!」私は驚いて飛び退く。
にやにやしたキィちゃんがスプレーのようなものを私の方に向けていた。先ほど買った妖精に好かれる香りがする香水だった。
「びっくりした!」
「どうですか? この香水、効果ありそうですか?」
「わかんないけど、良いにおいだね」
「ほんとだ、甘くて美味しそうな香りがする」レオくんも目を細める。
周囲に甘ったるい香りが広がっている。
南国の花のような、トロピカルフルーツのような、匂いを嗅いだ瞬間に別世界にトリップするようなとろける甘さの香りだった。
もう少しだけ香りを堪能したくて、鼻をくんくんさせる。
「ちょっと、あんた!」
遠くで誰かが呼ばれている。
「ちょっと、あんた! 聞いてんのかい」
誰かが叫んでいる。
「あんた! 路上でくさい匂いを撒き散らすんじゃないよ!」
大きな声で怒鳴られて、私は思わず顔を上げた。
視界の端には占いババの店がある。店頭のカウンターで店番をしていた占いババが、鋭い眼光でこちらを睨んでいた。
妖精に好かれる香りは、ココナッツの香りを想像しています。