6 アイテムショップ
「いらっしゃいませ」
そう広くもない店内は多くの女性客で賑わっていた。
壁や棚にはたくさんのアイテムが所狭しと並べられており、大半は付与効果ごとにまとめられているようだった。
著名な付与術師のアイテムは、それだけで一つの棚にまとめられている。
「あった! マシュー・レイのアミュレットはこっちですよ!」
キィちゃんが指差した棚の方にずんずん歩いていく。私も遅れないよう小走りでついていく。
マシュー・レイは精霊の扱いに長けた付与術師だ。
火魔法攻撃向上、水魔法攻撃向上など、それぞれの基本魔法の攻撃力を上げるものから、火魔法耐性向上など防御力を上げるものまで基本的なものが取り揃えられている。
中には、精霊と仲良くなる効果があるものや、高位の精霊の召喚を補助するものまで、魔法使いにとっては魅力的な商品がたくさん並べてある。
「あ、このアミュレット良さそう! 基本魔法が上達するアミュレットだって」私がお守りを手に取る。
「お探しのものが見つかってよかったですね。私もなにか一つ買おうかな」キィちゃんが手元にあったアイテムを手に取りながら呟く。
「色々種類があって迷っちゃうよね」
「あ、これ精霊に好かれる香りのする香水だそうですよ。素敵じゃないですか?」
「そうね、キィちゃんはつけたほうがいいかもね」
「どういう意味ですか!?」
私とキィちゃんがわいわいしている横に、レオくんがゆっくり近づいてきた。
女性客が多くて、人を避けながら進んでいたので、ここまで来るのに時間がかかったそうだ。
「あれ、こっちの棚はそんなに人が多くないね」レオくんが一息ついた心地で言った。
言われてみれば、私たちがいるマシュー・レイのコーナーのあたりは客が疎らだった。
店内を見回すと、入り口から最も奥のコーナーに人がごった返している。
「ララ・ラブリのラッキチャームはこちらですよ」
店員のお姉さんが店内に入ってきた客に愛想よく手を振る。
入ってきた女性客は吸い込まれるように奥のコーナーの人混みに入っていく。
よく見ると、そこは女性客ばかりで、きゃーきゃーと黄色い声が聞こえる。
「ラブリのラッキーチャームだって」私がキィちゃんを見る。
「あー、聞いたことありますね。確か、恋愛にご利益があるんでしたっけ」キィちゃんが首を傾げる。
「そうだと思う。私も人気だって聞いたことあるよ」
恋愛運向上のチャームはまだありますか、という声が店内に響く。
ありますよ、と店員が答えると、よかった〜と安堵の声が広がった。
「ラブリのチャームを目当てにしてる人が多いみたいだね」レオくんが店内を見回しながら納得したように言う。
「そうみたいですね」
「マシュー・レイより、ララ・ラブリのラッキーチャームの方が断然人気っぽいじゃん。キィちゃんの情報収集ってたまに偏りあるよね」私が笑う。
「じゃあ聞きますけど、この中で誰か恋愛に興味がある人いますか?」私に揶揄われて、キィちゃんが憤慨する。
「ないね」
「ないかな」
「ほらね」
私たちには要らない情報だったじゃないですか、とキィちゃんが得意そうに笑って、私たちも笑った。