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1 プロローグ

「それでは始めますよ。よーい」


 ピー


 始まりの合図を示す笛が、静かな教室内に鳴り響く。

 春というにはいささか陽気な日差しが教室の窓から差し込み、机の上に複雑な模様を描いている。

 窓の外からは威勢の良い掛け声が聞こえる。運動部がウォーミングアップでジョギングしているのだろう。


 そんなものには目もくれず、私たちは目の前の一枚の紙とにらめっこしていた。

 かりかりかり、かりかりかり、と鉛筆が紙をなでる音が響く。

 窓から差し込む明るい光に照らされて鉛筆の跡が輝いている。なんと美しい光景だろうか。


 今日、部活に出席したのは4人だ。4つの机を向かい合わせにしてくっつけて、それぞれ机に着席している。

 皆、机に向かって一心不乱に手を動かしている。

 笛を鳴らしてタイムキーパーをしているのは、斜向かいに座っているサーヤ先輩。一つ上の三年生だ。

 向かいに座っているのはキィちゃん。まだぴかぴかの一年生。

 隣に座っているのは同じ二年生のレオくん。

 そして私。


 本日、私たち4人は呪文の勉強に取り組んでいた。

 私たち魔法使いは、精霊を召喚して魔法を使う。この際、2種類の呪文を使用する。

 一つ目は精霊を召喚する召喚呪文。

 そして二つ目は召喚した精霊に唱える契約呪文。この契約呪文を唱えることで、精霊が魔法を行使する。

「火精霊を呼び出してマッチに炎をつけたいが、この場合に唱える契約呪文を簡潔に答えなさい」というのが今日の補習部の活動内容だ。


 どこからともなくため息が聞こえる。

 取り組んでいる課題が難しいのか、はたまた、この静かで厳かな時間に畏敬の念を抱いているのだろうか。




 ここは南の果てにある魔法都市国家アダンのさらに辺境にある、とある田舎の魔法学校。正式名称はロジワール魔法学校という。

 私たち4人は魔法学校の生徒だ。

 今日は来ていない他のメンバーもいるけど、私たち4人は補習部という部活動に所属している。

 部活の内容は、主には自主学習。

 授業でわからないところを教えあったり、皆で難しい課題に挑戦したり、学校で習う魔法を自主的に補習する。それが補習部の活動だ。

 みんなで一緒に勉強するのって、楽しいよね。

 この穏やかで有意義な放課後を私はとても好んでいる。




「ガリ勉〜! ファイト! ファイト! ファイト! ファイト!」


 野蛮な声が窓の外から飛び込んでくる。

 静かな教室の空気が乱れ、集中力が途切れる。いいところだったのに、うるさいね。

 サーヤ先輩がずかずかと窓の方に歩いて行き、がらっと窓を開けた。


「うるさいわね、ホウキ部! 箒燃やすわよ!」


 窓の外から聞こえた粗暴な声の主はホウキ部の学生だった。

 ホウキ部もとい空挺部は、箒を使った競技を行う部活動だ。

 箒で飛ぶスピードを競ったり、障害物競争を行ったりしている。

 正式名称は空挺部だが、カッコ良すぎるからという理由で、校内ではホウキ部と呼ばれていた。


「なんだよ〜、応援してるだけじゃん!」

「邪魔してるの間違いでしょ」

「はいはい、せいぜいお勉強頑張ってくださーい!」


 サーヤ先輩がピシャリと窓を閉めた。ホウキ部の団体の足音が遠ざかっていく。


「えーと、今日の課題はなんだったかしら。箒をこっそり燃やす方法の研究だったかしら?」サーヤ先輩が頬に手を当てる。

「そうですね、乗車中の箒が燃える方がインパクトがでると思います。僕も先輩の研究をお手伝いしますよ」レオくんがにっこり笑った。

「もー、サーヤ先輩もレオ先輩も物騒ですね! 今日の活動は契約呪文の勉強ですよ!」キィちゃんが明るくつっこむ。

「わかってるわよ、それじゃあ課題の続きを始めるわよ」


 私たち補習部は、放課後に教室に集まって自主的に勉強している。

 校内では心ない人からガリ勉部と揶揄されることもあるけど、私は気にしない。

 勉強したいから自ら勉強しているのだ。


 試験の点数が悪いから先生に補習させられているわけじゃ決してないんだよ!

 ただ単に、勉強が好きなんだ。

ライトノベルが大好きなので、自分でも初めて書いてみました。

勉強熱心な南国の魔法使いの物語です。

ゆるゆると更新していきます。

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