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1. 変わり者の令嬢

己の癖に忠実になって書いた結果。

そこのあなた、「なんかニマニマしている不審者だぁ·····」と周囲の方に引かせるので覚悟して下さい(笑)!!



「········君は、こんな呪われた俺を、ずっと厭われてきた俺のことを、·············見捨てないでくれるか。」


 彼は弱々しくそう言うと、紅と金の瞳でこちらを見上げた。僕は彼へ囁く。


「勿論。もう大丈夫だよ」


 もう独りにさせはしない、と。



 独りだった君も僕も、すべて呪いであり祝福だから。




     ◇     ◆     ◇




 レアニカ皇国で大きな権力を誇るリーヴァン公爵家。大貴族リーヴァン家の娘――ラウルは、大変変わり者だった。

 新雪のような短い銀髪に紺碧の瞳、クールな造形であるが人懐っこさもある整った顔立ち、長い手足に高い背丈という、女性にかっこいいと騒がれそうな容姿を持っているまでは変人要素はない。むしろイケメン令嬢だと言われるだろう。



 彼女が変人と呼ばれる所以は、公爵家の令嬢であるのに、女性らしいことは一切せず、男のような容姿と口調であるからだ。



 今まで公爵令嬢でありながらSSランク傭兵騎士の肩書を持つ者はいなかった。それは決してリーヴァン公爵家の権力を使ってではない。彼女は己の実力でこの称号を掴んだのだ。

 しかも彼女が叩いた門は、その名を聞けば傭兵でも冒険者でも震え上がるような強靭で恐ろしい傭兵騎士を雇っているギルド、ラグナギルドだ。彼女は圧倒的な闇魔法と剣術の才能で頂点まで登り詰めた。

 行き当たりばったりのようで隅々まで計算された行動、それに加え化け物のような強さを誇る。

 なのに驕らず、弱者にも強者にも等しい態度で接する人柄は、密かに、けれど多くの傭兵騎士の憧れでもある。美術品のように美しいの外見は、一見とっつきにくいのかと思われるがそんなことはなく、むしろ「人懐っこいと言うか善意の擬人化」だと彼女に関わる者は口を揃えて言った。


 傭兵騎士というのは、報酬に応じて戦闘を行うフリーの兵士だ。低ランクの傭兵は蔑みの視線を受けることも多い上、放浪の生活を送っていく者がほとんどである。

 強くなくては負けてしまう。そんな厳しい世界で、最上ランクであるSSランクというのは、国単位でもたった数名。ほんの一握りだ。



 そして、そんな選ばれし強者たちは、一同に集い歓談をしていた。


「ラウル、お前っていつ傭兵騎士になったんだよぉ〜」

「ルーガさん酔ってるでしょ·······。えー、そうだなぁ、14の時かな。僕は今二十歳だから6年前か。」

「あーんなにちっこかったラウルが今はもうあたしたちと酒飲んでんのよ?時の流れって早いわねぇ」


 ルーガと呼ばれた赤髪隻眼の男はラウルの背をバッシバッシと叩き、滑らかな黒髪に深紫の瞳を持った妖艶な美女はずいっと顔を近づけた。


「別にちっこくないし!アリアさんはおばさんみたいなこと言わないでって!」

「あら、不老不死舐めないでよね?少なくとも300年は生きてるわ」


 美女――アリアは豊満な胸を誇らしげにさらに張った。ラウルは苦笑いを浮かべ、ルーガは豪快に笑う。


「そういえばラウル。噂で聞いたんだが、第二皇子と婚約するらしいな。」

「へえぇ、そうなのか。第二皇子って、確かアルヴァ様だっけか?なんか嫌な迷信聞いたことあんぜ。えーと·······。」

「『呪い子』、だよね。なんでも左右で眼の色が違うとか!いやぁ、こんなこと言うのは良くないのかもしれないけど、かなり珍しいからね!興味深いよ〜。」


 ラウルに話し掛けるのは、常磐色の髪と瞳のセルシオ。それに反応するのはロイヤルブルーの髪に金の瞳のギレン。にこにこと喋るのは金髪でグリーンターコイズの瞳の少年、シュメルだ。


 ラウル、ルーガ、アリア、セルシオ、ギレン、シュメルの6名が、レアニカ皇国のSSランク傭兵騎士だ。全員強いことは確かだが、いかんせん癖も強い。一番年下なのにラウルが場をまとめることになるのはいつものことだ。


「うん。アルヴァ皇子と婚約することになったって父上が言ってたから、いいよーって言ったら婚約することになった!·······まぁ、僕は婚約者が呪われていようが希少な生物だろうが、結婚することに変わりはないから別に良いんだけどね」


 レアニカ皇国第二皇子、アルヴァ=レアニカ。彼が呪い子だと吹聴されるのは、彼の瞳の色の所為(せい)だった。

 右の瞳は紅玉(ルビー)のような紅色。左の瞳はシトリンのような金色。シュメルが言う通り左右で眼の色が違うのだ。



 ―――きっと悪魔に魅入られてしまったんだ。これは呪いだ。



 誰が言い始めたか、その言葉は波紋のように広がっていった。その意識が皇子の周囲に影響を及ぼす程に。

 皇子は孤独になってしまった。たまたま、眼の色が違うというだけで。



 くだらない。何が呪いだ。



 アルヴァが婚約者になると聞き、少しばかり彼のことと瞳について調べたのだ。忙しい任務の合間を縫って図書館をあちこち巡るのは大変だったようだが。


 左右で瞳の色が違うのは呪いなどではなく、アルヴァ皇子の場合は先天的な特徴だ。ヘテロクロミアやオッドアイと呼ばれることもあると言う。なのに世間は彼を忌避し、独りへ追いやった。このことを知った時、貴族には馬鹿しかいないのかと腸が煮えくり返る思いだった。


 ラウルはその憤りをまた再度沸騰させるもかろうじて飲み込み、無邪気に笑った。


「明日のパーティーがはじめましてだから頑張るよ。」




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