私は死ぬわけにはいきません Part3
それから5年が経った。時が経つのが早い。5年も経ってわかったことがいくつかある。ここは、オーデン王国の南東に位置する公爵家であることがわかった。ここでは地球とは真逆で南が寒い地域で北が暖かい地域である。そして、南西には魔族領という魔族たちが住む地域がある。
「ステラ様!こちらにいらしたのですね。探しました」
息切れをしたヨシンモリの彼女、エマが図書館の扉の前に寄りかかっている。走ってきたのだろうか。
「どうしたの?エマ」
「ステラ様大変です。旦那さまが……いえ説明している時間がありません。早く書斎に来ていただけますか?」
わかったと一言言って椅子から滑り落ちるように降りた。エマに続いて軽く小走りをして書斎に向かう。ふかふかのカーペットの上で本気で走ろうとローヒールだが足を挫いてしまうので小走りだ。長い廊下を数分小走りすると書斎が見えてくる。先にエマが到着したので、コンコンコンとドアをノックする。ステラ様をお連れしましたと一声かけるとドアが開いた。開くと同時にドアの前に辿り着いた。
「失礼致します。お父様?どのようなご要件でしょうか」
「キヨ人払いを頼む」
キヨがメイドたちを外に追い出し、キヨは中で扉が開かぬか警備しているようだった。
「ステラ。お前に話がある。単刀直入に言うが婚約の話だ」
またか。これだから貴族は嫌だ。婚約だの跡取りだのと言ってくる。まあ今回もお父様の力で断ってくれるだろう。
「申し訳ありませんがお断りさせていただきます」
「おい。即答しすぎではないか?」
珍しく焦っているようだった。どうしたんだろう?いつもならそうかで終わるのに。もしかして……
「お相手ってまさか、第2王子ですか?」
「ああその通りだ。さすがに王族相手に断ることはできない」
ハート家は代々王族に仕えるか、婚約するかだ。どちらかにならないといけない決まりがあるらしい。現にお父様も、第Ⅰ騎士団長として就任している。なんだかこうなるのは知っていたが意外にも早かった。
なぜ知っていたかというと私はステラ・ハート、乙女ゲームの脇役。そして、ストーリーが始まる初めに暗殺されるキャラでもある。というか暗殺されそうになる第2王子を助けて死ぬ役目である。それだけは避けなければならない。私は、死ぬわけにはいかない。私は、推しに会うまで死なないと決めている。その推しというのはもっと最後の方に出てくる魔族なのだ。
そのためにはもっと強くならなければならない。
「嫌です。わがままなのは承知の上なのですがどうしても私は、お父様の跡をついで騎士団長になりたいのです!!」