私は死ぬわけにはいきません Part2
「奥様!奥様ぁぁぁぁぁ!」
急に誰かの泣き声が耳に入ってくる。空気を吸おうとすると肺が焼けるように痛かった。思わず、号泣してしまった。数分すると慣れてきたのか幾分か息が吸いやすくなる。涙で視覚がぼやけていて何も見えない。状況把握ができずに困惑している私を置いて、端で何かを話している声が聞こえる。私は、耳を澄ませる。
「どうした?」
「旦那さま……奥さまがぁぁ、気を失ってしまって」
低いハスキーボイスの声の人と明るい若い女の子の声が聞こえる。旦那さまと言っているのだから、この低いハスキーボイス人がこの家の主なのだろう。涙でぼやけていた視界がいきなりクリアになる。何事かと周囲を見渡すと、どうやら私は、涙を拭われたようだ。そして、目の前には金髪で40代ぐらいのイケメンが立っていた。金髪と言ってもプラチナブロンドだろうか。そして私は、髪色がストロベリーブロンドのヨシンモリに近い髪型をしたメイドさんらしき10代ぐらいの美少女に抱っこされていた。
「こいつが俺の子か?」
「はい!奥様と旦那さまのお子さまです」
「全然似てないな」
空気が一瞬にして凍りつく感じがした。これぞ氷の王様のような。
それにしてもこんなイケメンが私の父親か、だとしたら酷すぎないか?こいつとか似てないとか言うし。
「で?キヨ、俺の妻はどうなった?」
ヨシンモリの女の子ではなく、年配のメイドさんに視線を向けた。キヨと呼ばれていた人はアシンメトリーで、くせ毛風セミディのような髪型をしていて、年配とは思わせない程美しい。なぜ年配だと判断したかというと優雅かつ気品があり、白髪がちょこちょこと生えているからである。第1印象はしっかりした少し厳しい人のイメージが強い。
「奥様は残念ながらお隠れになられました。」
「そうか」
そっけない返事に、私の父親は何に対しても興味が無いのかと疑問に思う。表情が顔に出ないタイプなのか?それともただ興味が無いだけなのかわからない。そんなことを考えているとキヨが私に視線を向ける。
「名前はどうなさるつもりで?」
「そういえば名前を付けていなかったな。じゃあ適当にステラでいいだろう」
適当って……。こんなのでいいのか?そんなに私に興味無い!?まあステラってきれいな名前そうだしいいか。