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恋物語  作者: 黒崎月華
七色の恋物語
6/6

高校生活の始まりの始まり

 高校生活二日目。

 特に授業という授業は行われず、ほとんどがレクリエーションだった。

 周りからは「授業がないとかめっちゃ最高」などというバカみたいな言葉が聞こえるが、確かに授業がない学校はある意味楽しい。

 日常とは異なることをするのは誰しも楽しいと感じるのだろうか。


 今、私たち新一年生は部活動勧誘会に強制参加させられている。

 ここ、月崎高校は文部両道を掲げており、生徒に部活動にも積極的に参加させようとしている。

 私としては落ち着いた部活動にでも参加しようと考えている。

 大人数の部活動は賑わいがあり、楽しそうではあるが私のような自己主張の弱い人が入るべきではないと思う。

 そもそも住む世界が違う人間の集まる場所だ。

 部活に入ることすらおこがましく感じてしまう。


 「まぁ、帰宅部ですって自己紹介するときに言うのが嫌なだけなんだけど……」


 そんなこんなで賑やかな体育館に押し込められる形で各部活の紹介を淡々と聞いている。

 この学校は18個の部活があり、運動部には野球部・シフトテニス部・硬式テニス部・ソフトテニス部・サッカー部・女子バレー部・男子バレー部・陸上部・水泳部・ダンス部・女子バスケットボール部・男子バスケットボール部の計11個の種類がある。

 文化部は吹奏楽部・茶道部・美術部・合唱部・軽音楽部・PC部・書道部の計7つだ。


 月崎高校では文部両道を掲げているだけあってそれなりに有名な部活が数多くあるらしい。

 その中でもサッカー部とダンス部は全国に出場しているレベルらしい。


 「だけどまぁ、そういうのは良いかなぁ」


 そもそも私が求めているのは部活に入っているという肩書だけで、別に部活をしたいと思っているわけではない。

 だが、人前でそんなことが言えるわけがなく、そんなことを話した瞬間、友達0人は確定なわけだ。

 それぐらい予想できる。

 「やるなら何がいかなぁ」

 「そんなに部活に迷っているならPC部がいいんじゃないか?」


 突然横から声を掛けられ、自分でも面白いぐらいに肩が跳ねた。

 横を見ると、横にいたのはクラスの男子だった。

 名前は、確か……


 「宮本琢磨。後ろの席に座っているあんまりよくわかんない男だよ。よろしく」


と、ぶっきらぼうに告げた。しかもこっちを見ずに。


 「……別によくわからないなんて言ってないでしょ。なんで」

 「そう思うかって?お前の顔にそう書いてあるからって答えじゃ納得できないか?」

 「分かってて聞くの?それ」


 男の子──宮本君は私の疑問には答えずに「ふん」と鼻で笑ってそっぽを向いてしまう。


 なんというか、ただ不愉快になっただけの会話だった。それに、まるで自分の心を読んでいるかのように話を進めていく彼がとても不気味に感じた。

 それが宮本君との初めての不思議な会話だった。



** * * * * * * * * * * * * * * * * * *


 体育館で部活動紹介を聞いた後は中庭で勧誘会が開かれた。

 各部活の部員が集まって新入生に声をかける、というのが内容だ。

 そして、一年生は希望の部活動の体験会の詳細を聞いたり、先輩との交流をしたりするのが目的だ。


 「何にしよう。もうここまで来たら無理に入らなくてもいい気がするけど…」

 「そんなに迷うなら、PC部にでも入れば?」

 またもや横から声をかけられた。横を振り向けば松本茜がいた。

 腕を組んで、不機嫌そうな顔で私の方に顔を向けずに立っている。

 そのままこちらに視線を向けることなく、


 「PC部ってあんたに似合いそうな人多かったし、いいんじゃない?まぁ、あんたが機械を扱えるかどうかなんて知らないけど、陰キャの集まり見たな場所だし、いいんじゃなぁい?」

 「……なんで」

 「ん?」

 「なんで私にそんなこと言うの?」


 私は気が付いたら思ったことをそのまま口にしていた。

 口にした後に「しまった」っと焦ったが、松本茜は大して怒った様子もなく、先ほどと変わらない様子だった。


 「別に、あんたのことを思って言ったわけじゃないから。あんたなんてただの弱虫の世間知らずの変人。つまりは誰かのおもりがないと生きていけないのよ。ほんと、可哀想ね」


 そう言って、松本茜は私の方を一瞥してから、後ろの方で待っていたらしい友達と合流しに行った。


 「ごめぇん!ちょっと待った?」

 「待ったも何も、もう5分も待ったんですけど?」

 「だからごめんってぇ!」


 後ろの方できゃあきゃあとはしゃぐ松本茜とその仲間たちの声がする。

 なんだか、その姿を見ていると部活動なんてどうでもよくなってきた。


 「もういいや、帰ろう」


 私は、なんとなく面倒くさくなってしまった。

 下駄箱で靴に履き替え、校門から出る。近所の学校だから歩いて帰れるのは便利だが、知り合いに遭遇するのだけは何としても避けたい。


 何故、そう思うのかはわからないが・・・


** * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


 風邪が体に体当たりをし、風圧によって前に向かって押し出されそうになる。


 「よっと」


 屋上の柵に腕を載せ、近くにある換気扇のようなものに座り、体制を整えてから下をのぞく。

 そこには、校門へ向かう一人の少女がいた。

 たった一人、下を向いて歩いている。

 周りには誰もいない。


「まったく、なんなんだよ……」

 そう静かに呟き、目を伏せる。

 瞼に映るのは今まで出会ってきた人々の姿だ。

 だが、──


 「あいつは、異常だ」


 それが、俺が彼女に抱いた第一印象だ。



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