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最初の一歩
2018年、4月6日───月崎高校の入学式。
月崎高校、正式名称は県立月崎高等学校と言う。
地元の中ではトップクラスのこの学校は、周囲を木々に囲まれている自然豊かな学校だ。私はこの月崎高校の新入生。つまり、一年生になる。
沢山の同級生、沢山の先輩とともに過ごし、高校生活を乗り越え、東京の大学に進学することが私の夢だ。
散々世話をかけた親に孝行したいというのが理由で入ったこの学校だが、私──三上由奈にとっては、人生の難所と言っても過言ではない。
だからこそ、私は今この時、とても不安になっていた。
横を過ぎて行く、おそらく同級生と呼べる人たちの中には「友達」なんていない。もちろん好きな人も話したことのある人さえいない。
私は、一人ぼっちで生きてきたから、これが普通だからだ。
だからこそ──
「最初の一歩が重くても、踏み出す価値はある」
俯いていた心を真っすぐ上に向け、私は一歩踏み出した。