温泉旅行編2日目2
とりあえず、事件は起こすことにしましたが、まだ解決しません。
「で?結局買うのかい?」
「もちろんです!」
私達はあれからお土産屋に行くことになり、現在、春の両手には木刀、ご当地ストラップ、キーホルダー、お饅頭、あとはよく分からない品物がいくつかあった。
「今のうちに言っておこう、春、君はそれを買うと絶対に後悔するからやめておきなさい」
「ふっふっふ、先生、私の辞書に後に引くという言葉は存在しないのです!全速前進あるのみですよ!」
だから、考える前に行動に出るんだね君は…いつもの君は確かにそんな感じだよ。
「最後にもう一度だけ忠告しよう。後悔するからやめておきなさい」
「先生、私にも譲れないものっていうのがあるんです」
「くだらないプライドならすぐに捨てるべきだよ?」
「私は決して!悪には屈しない!」
誰が悪だ!…と言ったところで、この娘が訊くハズもないか。
「すいませーん!お会計お願いしまーす!」
ってもう会計に行ってるし!?
「お値段9260円になります」
「そういえば、春、お金はあるのかい?」
「チッチッチ、先生、私を舐めてもらっては困りますよ。旅行に行く前日に、私はママから仕送りを頂いているのです!」
ドヤ顔のところ申し訳ないが、それ、使って大丈夫なの?
「因みに、後どのくらい残ってるんだ?」
「わかりません!」
お母さーん、この娘の仕送りは少しずつにした方が絶対にいいですよー。
と心の中で思ってはみるが、手遅れなのだろうな…仕送りの残りを見てない時点で、もう駄目だと思う。
店員に満面の笑みでお金を支払う春を見て、私はそう思うのだった。
「買った買った~」
「買いすぎだよ…」
現在春は、片手に木刀、もう片手に紙袋、さらにハッピのようなものまで着込んで、どこの新撰組だと思わせるような格好をしていた。
何と言うか…ものすごくダサい。
ビュン!
「うわっ!」
いきなり、春が後ろにいる私に向かって木刀を振ってきた。
「先生、私の後ろに立つと危ないですよ」
「危ないのは君の思考回路だ!」
「悪・即・斬!」
「それ言ったら、もう新撰組じゃん!」
ダメだ…この娘に木刀を持たせていたら私の命までも危険な気がする。
私は、春の持っている木刀を取り上げようと手を伸ばした。
「誰か助けてぇー!引ったくりよー!」
引ったくり!?
私は、春に伸ばしていた手を止めて声のした方へ振り返る。
「春!」
「聞こえてました!ガッテンでい!」
どこぞの大将か!
そんなことより、私は春と共に声のした方へと向かっていった。
私達が声のしたところに駆け寄ると、二人の女性が一つのバックを引っ張りあっていた。
「ちょっと!離しなさいよ!」
「アンタこそ!これはアタシのバックよ!」
…なんか、お互いの意見が食い違ってるように感じるが、とにかく一旦あの二人を引き剥がさなければ
私達は慌てて二人の間に割って入り、喧嘩を仲裁しようとした。
「落ち着いてください!」
「何よアンタ!離してよ!バッグ持っていかれちゃうじゃない!」
「大丈夫ですから、向こうの女性は私の連れが抑えてくれてますから」
そう、春だって経験が浅くても立派な私の助手だ。人一人抑えるくらいなんて事ないハズ
「ほーれほれ、怒っちゃダメですよ~猫じゃらしでじゃれて落ち着きましょうね~」
「アンタ私をバカにしてるの!?」
…前言撤回、初めて会う人を挑発するんじゃない。
その後、二人が一旦落ち着いてくれるまで私達は待つことにしたのだが、春が止めていた女性が中々落ち着いてくれなかった。
まぁ、事あるごとに猫じゃらしであやしてこようとする春を見てたらそりゃ怒りも沸いてくるだろう。
というか、そんな猫じゃらしどこで拾ってきたのさ…
「どうしてあの人は、あんなに怒ってるんですかねぇ?」
「自分の胸に手を当てて考えてごらん 」
春は、自分の胸に本当に手を当てて考えた。
「先生…」
「分かったかい?」
「私って…やっぱり結構胸がある方だと思うんです」
何の話だ…
「いやぁ、実際に触ってみると分かるもんですねぇ」
聞いてないよ…
「この世の、貧乳の民にわけてあげたいです」
そちら側の悩みを持つ人を敵に回すような発言はやめなさい。
さてと、二人がようやく落ち着いた所で、私は二人に質問をする。
「一応確認させてもらいますが、この鞄は一体どちらの持ち物ですか?」
「「アタシよ!!!」」
うん…まぁ、そうなるよね。あんな言い争いしてたんだから。
まぁ、どちらのバッグかなんて中を見れば分かるハズだ。身分を証明出来るものが出てこればその人の物なのだから。
だが、男の私が中を漁るのはさすがに失礼だ。
「すいませんが、彼女にあのバッグの中身を調べさせてもよろしいでしょうか?」
私が漁るのは抵抗があるが、春に調べてもらえばいい。許可さえ貰えればあとは春に任せよう。
「ええ」
「いいわよ」
意外とアッサリと、両方から許可が出たな…どちらかは渋ると思っていたんだが。
「では、春!鞄の中を調べてくr」
「先生!高級そうな化粧品が出てきました!」
許可とる前に調べ始めてんじゃねぇよ…
一応許可は貰ったんだ…調べ始めた後にだが…このまま中をくまなく調べてもらおう。
そして、私はその間に女性二人に事情を訊くことにし、懐からメモとペンを取り出し二人の方に振り返った。
「すいません、すこしばかり事情を確認させて貰いたいのですがよろしいでしょうか?」
「いいけど、何なのよアンタ達」
おっと、そういえば自己紹介がまだだった。
「あぁ、これは失礼しました。私は探偵をしている夢見と申します」
私は、二人に自分の名刺を差し出した。
「先生!名刺なんてズルいです!私も名刺欲しいです!」
いつの間にか、春が私の後ろにやって来ていて、私達のやり取りを覗いていた。
…荷物調べはどうした?
「君はまだ学生だし、私が紹介するから必要ないだろう」
「何か名刺を渡すところってカッコいいじゃないですか!私もやりたい!」
カッコいい?…どこが?
「とにかく、紙の無駄遣いになるからダメ」
この娘なら、出会う人全員に名刺を渡して周りかねない。
そんな事をされたら、いくら名刺があっても足りないしな。
「ぶぅ~」
ふてくされた顔で、春はバックの中身を再度確認しに行った。
「探偵ねぇ、で?あのムカつく子は、一体何なの?」
春に猫じゃらしであやされたことを相当根にもっているのか、春が先程まで抑えていた女性が私に訊いてきた。
「彼女は私の助手でして、小鳥遊春といいます」
「ふぅーん…アンタ、助手はもう少し人を選んだ方がいいわよ?」
まったくその通りだと思います…はい
「とりあえず、お二人の名前を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「柳よ。柳 華」
「橘 和子よ」
春が抑えていた金髪の女性が、柳さん。私が抑えていた茶髪のロングヘアーの女性が橘さんか。
どちらも浴衣姿なのでヘアスタイルでしか判別のしようがないが、ここまであからさまに違いがあれば、まぁ間違えることはないだろう。
「先程私達は悲鳴を聞き付けてここまで来ましたが、引ったくりと悲鳴をあげたのはどちらですか?」
「私よ」
悲鳴をあげたのは柳さんか、ということは、初めは柳さんがあのバックを持っていたということになるな。
「一応、引ったくりにあった時の状況をお訊きしたいのですが」
「私がこの通りを歩いていたら、後ろからこの女がバックを引ったくって行こうとしたのよ」
「ちょっと!引ったくって行こうとしたのはアンタでしょ!」
「はぁ!?アンタでしょうが!」
「落ち着いてください。それを今調べてるんですから」
やりにくいなぁ、二人のどちらかが口を開く度に喧嘩になりそうになるんだから。
「因みに、お二人は何故こんな人気のない場所に?私からすれば狙ってくださいと犯人に伝えてるようなものにも感じるのですが」
「この辺りで有名なお菓子が売ってるらしいんだけど、どこのお店も売り切れてて、歩き回ってたら気がつけばこんなところに来ちゃってたのよ」
「あら、アンタもあのお菓子を買いに来てたのね、アタシもよ」
そんなに有名なお菓子なのか?私は訊いたことないが
「お菓子!?」
また、変なところに春が食いついてきた…バックの中身はどうなったの?
「ちょっと!そんなことより、いつまでバックの中を調べてるのよ!」
しびれを切らした柳さんが、また騒ぎ始めた。
…気の強い二人だなぁ…落ち着いて話しもできやしない。
「すいません。もう少しだけ待ってください」
「先生~財布がありましたよ~!」
ようやくか、財布が出てくればあとは中から免許証などの身分を証明するものを見つけるだけだ。
「しかも2つありましたよ~!そこにいる女の人二人の身分証明がどっちも出てきましたー!」
…事情聴取、続行決定…
毎度思いますが、トリックらしいトリック書けてねぇなぁ…