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王都、ルクシア。昔までは小さな小国だったが、魔王を倒した勇者パーティの3人がルクシア出身という事もあり、急発展した国である。
魔王討伐から20年が経ち、平和が訪れてからは様々な物が作られた。この子どもの育成と成長を助勢して育成する幼学校も当時はなかったものだ。そして今、このレクアル幼学校は言わば黄金期とされていた。
勇者パーティ五人の子どもが在籍している。更には王族の第一王子や騎士団長の息子、勇者パーティを支えた他国の傑物の子どもたち。第1学年から第6学年まで幅広く在籍し、同じ教室で学んでいる。世間一般から黄金期と言われるのは訳なかったのである。
そんなビックネームが勢揃いの中、彼はというと…
その2mを超える身長と手に持つ大盾で『城壁』と極一部から呼ばれ、現在王国の複数ある城壁の一枚を守護する班の副班長を務めるルイスの長子、名はイージス。つまりはスモールネームである。
そんなスモールネームの彼が、何故か黄金期の面々から信頼されるストーリーである。
城壁班の仕事は交代制である。朝早い日もあれば夜勤だってある。今日は日の出と共に起床するルイスとイージス。
第5学年で15歳のイージスは、来年卒業と同時にルイスと同じ班に就職が決まっている。その為本人と父親の意向もあり、夜勤以外は父親であるルイスと同じく仕事をして現場慣れをするという早めの職場体験を行なっている。
「いつも早いな。おはよう、ルイス、イージス」
「班長、おはようございます」
「おはようございます」
班長に挨拶をすると、班長は徐にイージスの頭を撫でた。
「この表情の硬さはルイス譲りだな? もっと楽にしていいぞ?」
「ありがとうございます、班長」
班長はその後ルイスの肩を軽く叩くとじゃあまた後でな、と言い業務に戻っていく。
ルイスとイージスはしばし班長の後ろ姿を休めの姿勢で見送ると、業務前の訓練に移った。
ストレッチ、トレーニングを終えると、イージスは小盾を構えた。今日はどうやら防御訓練のようだ。
イージスは長い棒を構える。長い腕から放たれる槍を模した棒は簡単にお互いの距離を埋める。最初はゆっくりから始まり、徐々にスピードを上げていく。棒はルイスの怪力と相まってフルスピードでイージスを襲うが、器用に受け止め、躱し、受け流す。
今度は徐々にスピードを落としていく。最後の一発を受け止めると、訓練は終了。またストレッチをすると着替えて業務を行う。この繰り返しである。
「イージスくんすごくね?」
「あの若さで出来る技術ではないよなぁ」
「イージス君入隊したら部下になるのかぁ…」
「ただなぁ、副班長…」
班員の面々は気づいている。ルイスは防御に秀でているが、攻撃面ではセンスがない。つまりあの長い棒はただの力任せの大技である。イージスが動かない為、狙い外れていないだけであった。だが、それを物ともせずに防御するイージスは異常である事にみんなが気づいていた。
「将来が楽しみだねぇ」
班員たちたは別の所から覗いていた班長の言葉は誰の耳にも届く事なく空へ溶けていったのであった。