あの星に願いを
童話と言うには少しだけ違うのかも知れませんが、一応童話のつもりで書きました。
「僕」が星に祈った願いは叶わないのかもしれないけど、僕が探している「君」に少しでも近付けてあげたい様な気がします。
『あの空の向こうには何があるの?』
あの日、今にも消えてしまいそうな声でささやいた君の質問に答える事が出来なかったけれど。
今僕は、君が見ていた空の向こうの本当を見ているよ。
君が、いつか僕が答えを見つけられたなら
あの日の様に、一緒に星降る空を見に行こう
満天の星が流れるあの空を見に行こう、と言って
別れたままのそのままの夜空が、今も輝きを観せている
君のいない夜に
一人でゆっくり歩いて
星空を観に来たよ
僕だけがいる夜に
君がいない夜に
もし今、君も同じ空を見上げていたら
今も同じ気持ちになってくれるかな?
そうだと嬉しいな
ほら観てごらん
薄く藍色に輝く地平線のちょっと上に
ひときわ大きな星が見える
もうすぐ夜になる始まりの合図
この空一杯の星を君に見せるための合図
大きな光に背を向けて
吸い込まれそうな青い夜空を見上げ
夜が始まる合図が鳴ると
また、君に会える気がするんだ
そんな気がするんだ
ときどき君に会いたくて、夜の街を歩いている。あの角を曲がったら君が居ないかと思ったりして、一人でドキドキしながら歩き続ける。
どこまで歩いたら君にあえるかな?もう少し歩いてみようかな?もう少し、もう少しだけ歩いたら会えるかな。
もしかして、下ばかり見て歩いていたから気付かなかったのかな?通り過ぎちゃったのかな?それとも、本当に会えないのかな。
君に会いたくて歩いているのに、いつまで歩いてもたどり着かない。どこまで歩いたら君に届くのかな。
僕が歩いた分だけ君も歩いているのかな、2人歩いていればどこかで会えるのかな?君は疲れて休んでいたりするのかな、急がなくても良いきっと会えるよね。
白い空は朝を連れてくる、夜は終わりまた1日が始まってしまう。また、君に会えなかった。
1日が終わりオレンジ色の空が夜に誘っている、あの夜のどこかに君はいるのだろうか。
また、君に会いたくて歩いてみている。
いつも一人、ただ歩いてみている。
いつまでも明るい街の空は何も映さずに、月も星も窓の灯りも同じ色に飲み込んで。見上げても見つめても、何もかもがくすんでにじんで。今はもう、昼も夜も同じ空になってしまったみたいだ。
明るい夜はいつまでも終わらず、また朝になってしまう。そして、また明るい夜が来る。
僕と君が見たあの夜はどこに行ってしまったんだろう。
暗く青くどこまでも澄んだあの夜は、幻だったのだろうか。
星が見えなくなってからどれだけ過ぎただろうか、月が遠くなってからどれだけ過ぎただろうか。
君がいなくなってどれだけ過ぎただろうか。君を探して続けてどれだけ過ぎただろうか、もう何日経ったのかさえ分からなくなってしまった。
僕はいつまで君を探し続けるのだろうか。
僕も大人になって、君が知らない事も僕が知らない事も。
少しずつ、少しずつ知ってしまって。
見えなかった事も、聴こえなかった事も全部知ってしまって。
あの日2人で流れ星にかけた願いは、叶わなかったけれど。
1人になった今では、流れ星にかける願いもないけれど。
僕たちが失くしてしまったこの空は今も昔も変わらずに、美しくキラキラと毎夜毎晩変わること無く遠く星を降らせている。
僕たちに見えない夜空を流れる星たちは、美しいそのカタチを魅せながら永遠に瞬き流れ続けている。
ここからは見えない夜も、見えない空も。永遠に。
どこを探しても、月も星も君もいない。それでもずっと変わらずにいつまでも。
今もただ明るい空が、朝も昼も夜も続いているだけ。それでも変わることない瞬きを星たちは続けている。
偽物の永遠を美しく観せて、願いの叶わない星がいつまでも輝き流れ続けている。
『あの空の向こうには何があるの?』
知ってしまった今なら、答えられるのかも知れない。
その答えを君が知りたくなくても、言ってしまえたなら。
君はここに帰ってきてくれるのかな…
あの空の向こうは、永遠に変わらない
丸い銀のスクリーンで
光輝く、遠くの星を観せてくれている
いつまでも…いつまでも
君の永遠を叶えるために流れ続ける星たちに
僕は永遠に叶わない願いをかけ続けている
本当はもう出会えないと知っている星を求めて
君を求めて
また今夜も、あの偽物の流れ星が
僕の願いを叶えられない
大人になった「僕」は真実を知ってしまって、それでも「君」を探していきます。切ない気持ちが有りつつも、実際はシビアで残酷かもしれません。
「君」は本当は「僕」なのかも知れませんね。
私もプラネタリウムは好きなのですが、長く座っていることが困難なため今は行けません。