協力
よろしくお願いします
「カワ君ってレン君とザキ君といつから仲良いの?」
今日はザキとレンが都合が合わず俺と柚子の2人で帰っていた。
好きな子と2人で下校というのは凄くドキドキするもので、それを隠すのに必死だ。
「ザキとは確かあれだ、読んでる漫画が被っててその話題から始まって一緒に遊んだりするようになったんだ。」
「あー、そんな感じする。私がザキ君と仲良くなったのもそんな感じだし。」
「俺もその流れで柚子と仲良くなったからな。」
「そうだね〜、お互い何処か遠慮があった頃が懐かしいよ。」
初めてザキを通して知り合った時に俺と柚子は話題を上手く作れなくてギクシャクした。
「今は失礼なくらいになってるがな。」
その失礼なまでな近さに俺は恋をしてしまった訳だが。
「いやー、カワ君とザキ君ってどうもいじり易くてさ。」
「まあレンは弄られるって感じじゃないしな。」
「そうだね、レン君って弄るよりもなんかこう、その弄り弄られを見守る的な?」
「そうだな、昔も今もあいつはそんな感じだ。まあ、あいつが悪戯するとほんとびっくりするけどな。」
「えー、レン君って悪戯することなんてあるんだ。」
「そう思うだろ?あるから驚くんだよ。」
「で、そのレン君とはどうやって仲良くなったの?」
「別にそう珍しいもんじゃないぞ?俺が中学の頃仲良かった奴とレンが仲良かったから、そっから交流が増えて仲良くなった。それだけだ。」
「へー、本当にありがちなことだね。仲良いからもっとなんかあると思ってた。」
「案外そんなもんだよ。」
実際にはもっとなんかあるのだが。それは別にしても高校がレンと一緒だったのは心強かったし安心感もあった。
恥ずかしくて言ってないが、実はもう一つレンと仲良くなったのにはエピソードがある。
俺は中学の頃は今でさえ内向的なのに更に内向的でビクビクしていた。
ある体育の時間、その日はオリエンテーション的な物でドッヂボールだった。
俺側のチームは俺とレンだけになり、相手チームは1人。運動神経が悪い俺が、その時は運悪く最後まで生き延びてしまった。
相手が弱い俺を狙ってボールを投げる。
目を瞑りボールを受け止めようとする。
ドンっ、と鈍い音がした気がした。
俺の両手にはボールは抱えられていた。
周りは運動神経の良いレンにボールを回せとヤジを飛ばして来て、俺もレンにボールを渡そうとした。
しかしレンは、
「お前が取ったボールだしお前が投げれば良いんだよ。」
そう言って俺に投げるよう促した。
俺は全力でボールを投げた。あっさりキャッチされ投げ返され俺はアウトになった。
外野に行くと周りにはバカにされると怯えたし実際文句言ってくる奴も居たが、案外みんな俺を庇ってくれた。
その後授業が終わるまでレンと相手は投げ合いをしていた。
授業の後、レンに話しかけに行くと
「ナイスファイト!」
と言われた。俺はその一言がとても嬉しかった。
それ以降レンと話すようになって今に至るという訳だ。
「ねーカワ君、聞いてる?」
昔のことを思い出していてぼーっとしてしまっていたらしい。貴重な時間を無駄にしてしまった。
「ごめん、なんだ?」
「その、誰にも言わないでね?2人だけの秘密にして欲しいんだけど…。」
照れながら柚子は何かを伝えようとしている。
俺は何を言おうとしているか分かってしまっている。けれど期待している自分もいた。
「私、レン君が好きなの。協力してくれないかな?」
「うん…。分かった。」
分かっていたさそんなこと。
「もっと驚いてよ〜。」
上手く笑顔を作れているだろうか?
「分かり易いから知ってたよ。」
あれだけ目で追ってたら気付いてしまう。それに…
「そっかぁバレてたかぁ…。」
彼女のレンを想う姿は、好意の形は違えど、俺に似ている気がしたから。
だから俺は彼女をサポートすると決めた。
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