最終決戦 【月夜譚No.125】
受け止めた雫は、存外大きなものだった。掌に収まり切らなかった水は重力に負けて零れ落ち、もうそれはどうにもならないと思っていた。
少年は頽れた足に懸命に力を入れ、立てた剣を支えに立ち上がった。
身体が震える。節々が痛い。呼吸をする度に肺が苦しくて、空気を吸っている感じがしない。
それでも、少年の双眸から光は消えなかった。頭はぼんやりとするのに思考だけは異様に冷静で、「諦め」などという言葉は彼の何処にも存在しなかった。
彼の背後で、共に倒れていた数人が起き上がる。皆一様にボロボロで、生きているのが不思議なくらいだ。しかし、気配だけで彼等が少年と同じ気持ちだということは判った。
きっと、一人では成し得なかった。両の掌だけでは受け止め切れなかった雫は今、仲間達の手を借りて、一粒も逃すまいと神経を尖らせる。
――さあ、最後の仕上げだ。
少年が振り上げた剣は僅かな光を照り返し、目の前の獲物に照準を合わせた。