表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続・お祓い屋 京助 報復の城  作者: 浮子 京
1/17

異能の闇

お待たせ致しました。


前回の「お祓い屋 京助」に引き続き、続偏としてお送りしますが、今回は連載にさせて頂きます。


「続・お祓い屋 京助」前回同様、楽しんで頂ければ幸いです。








天正九年、徳川軍五千をもって、遠州は難攻不落と云われた城を包囲、

籠城を余偽なくされた武田勝頼が家臣、岡部元信率いる戦力は六百足らず。

補給路を断れた城の中は、悲惨なものだった。

餓死者が続出する中、岡部は少なくなった兵を率い、城から討って出る。

結果、全員討ち死にとなった。そして、掃討された鶴舞城は、徳川のものとなる。

まるで鶴が舞が如く美しい形を見せる丘陵、地の利を生かして築城されたこの山城の本名は、高天神城と云う。


これより一年ほど前…


「若ぁ~、待たれよ、暫し、暫し」


土煙の中、疾走する騎馬二つ・・・


後方の馬上、たっぷりと蓄えられた髭の中から、大口を開けて叫ぶ侍従に、


「はっはは 聞こえぬわぁ~、早う来い宗兵衛、日が暮れるぞ」


深く被った編み笠が向かい風の中、激しく揺れている。

若と呼ばれた者の名は、鶴舞城こと高天神城、城代、岡部元信が嫡男、岡部成元と云う。


「どう、どどう・・・」


高く振り上げた手綱が、勢いあまる馬の鼻先を上げた。

成元が止めた馬の横に、少し遅れてぴたりと、宗兵衛の馬も止まった。


「いい加減になされよ、若にもしもの事あらば、大殿に申し開きが出来ませぬ」

上がる息を整えながら、横の若者に苦言を刺した。


「はっははは、相変わらず口が減らんのう宗兵衛は、そんなにわしが阿呆に見えるか」

屈託のない笑みを浮かべ、若者が笑う。


「全く、若には敵いませぬわ、わっははは」

呆れながらも、安心したのか、くしゃくしゃになった顔が大笑いする。


狩場の夕日が深く西に傾き、夜のとばりが近いことを告げていた。

家来十数人、かなり遅れて到着するも、どっぷりと日が暮れた狩場、開けた場所に陣張りをし、夜狩りの準備に暇ない。

その様子を横目で見ながら、六尺もある身の丈をのけ反らし、どんぶりのような茶碗に並々と酒を注ぎ入れ、グビグビと飲み干す大男。

四隅に焚かれたかがり火に照らされて、真っ赤になった頬を、ぴたん、ぴたんと叩きながら、酒臭い息を吐き散らし、狩りの自慢話で得意げになっている宗兵衛に呆れながらも、頼もしいと思う成元であった。


「おいおい宗兵衛、しこたま呑んで居るが、夜狩りは大丈夫なのか」

突然の声に、巨体を捻り振り向いた宗兵衛の前に、にたりと笑い立つ男。


「おお、山脇ではないかぁ~、遅い、遅いぞう・・わっははは」


「何を言うか、おぬしが先走ったのではないか」


山脇と呼ばれた男が宗兵衛の横に腰掛けると、主である成元に向き直り、深々と頭を下げ腰の物を下ろし、あらためて立ち上がった。


「若殿、遅れ申したが、夜狩りに間に合うて御座る」


「山脇か、お前の夜目には感心するばかり、今宵も頼んだぞ」


「承知致しまして御座る」


「ささ、駆け付けに一献、呑めや呑めや」


「かたじけのう御座る、では」


成元から注がれた酒を一気に飲み干した。


「殿ぉ~、殿ぉ~、」


見張りで出しておいた足軽が大声で叫びながら、陣幕を上げ、覗き込んだ。


「何事かぁ~、御前だぞ」

山脇が立ち上がり窘めた。


「や山脇様、不審な輩を捕まえまして、もしかしたら、徳川方の間者かと」

「な何と・・・間者と」


すかさず太刀を腰に戻すと、


「宗兵衛、殿を頼む」


みぢかく言うと、山脇は足軽に案内させ、陣の外に走った。


「何処だ、何処におる」


「はい、其処の杉の木にひっちばってありやす」


それを聞くと、太刀を握り、警戒しながら言われた場所に近づいた。


「おい、誰か、灯りを持て」

山脇の言葉が終わらないうちに、何か所からか灯りが照らされ、杉の木の根元が照らし出された。


「ほぉ~、男が一人、それと、くのいち・・・か」

ずずっと近づく山脇に、


「ち違いますだ、わしら、この先の丹野の百姓で御ぜえます、それと、こいつぁ、わしの女房だで」


必死の形相で否定している男の顔が、今にも泣きだしそうになっている。


「では、何故此処におる」


「女房が身籠で、実家に送り届ける途中で御座いやした、まさか、お狩場たあ、知りもせんで、お許し下さいませ」


全身を震わせながら、懇願する男を見て、嘘をついているようには思えなかった。


「間者とは、何処におる」

成元がその場に現れた、酔っぱらった宗兵衛も荒い息を吐きながら、成元の傍に付いた。


「殿、どうやら通りすがりの百姓の様で」

見立て通りに山脇が言った。


「何だ、つまらん、早々に追い返せ」

その時だった、一つの灯りが女房と云った女を映し出した。


「ほほぉ~、色の白いいい女ではないか」

見るなり、成元が立ち止まった。


(まずい、まずいぞ、若殿は無類の女好き・・・このままでは)

「殿、ささ、構っておらずとも、早ように夜狩りの準備と致しましょうや」

山脇の言葉が終わらないうちに


「宗兵衛、その女、連れて来い」

成元の顔が見る見る好色に染まってゆく。


「ははぁ~、かしこまって御座る、喜べ女、殿が御所望ぞ」


「ああぁ~、御勘弁を、何卒、御勘弁をぉ~」

号泣しながら、亭主の男が懇願した。


「あんたぁ~、怖い様、怖い様」

泣きじゃくる女房を見て、山脇もたまらず言い放った。


「殿、殿、何もこんな百姓の、それも腹ぼての女ですぞ、殿の威厳に関わりまするぞ」


「おいおい、山脇、殿の御命令じゃて、口出し無用じゃ」


「宗兵衛、お前からも、な、頼む」

その間にも、血の気が引いた女の顔が恐怖でゆがんでいる、その脇で、亭主は膝まづき、震えながらも懇願している。


そして、思わぬ結末が・・・

自らの舌を噛み切った女が、その細い口から鮮血を迸らせながら、悶え苦しむ。

そして、時を掛けず絶命した。

倒れこんだ女の顔が、真っ赤な血だまりの中、半分程沈み込んでいた。


「あああ・・・な何と・・・なんてこったぁ~」

へなへなと座り込んだ亭主の肩が、がくりと下がった。


「こんな、ああ、こんなことが」


たまらず口走った山脇の口を、宗兵衛が慌てて両の手で塞いだ。


「山脇、黙っておれ、黙って・・・」


山脇の耳元で囁いた。


「何だ、つまらん、やめじゃやめじゃあ、おい、宗兵衛、帰るぞ城に」


成元がそう言い放つと、陣幕の中に消えた。

それを聞いた亭主の男が、むくっと立ち上がると、


「この野郎ぉ~、よくも、よくも女房を、わしの子供をぉ~、許さねぇ~許さねぇ~」


凄まじい形相で駆け抜けると陣幕の中へと飛び込んでいった。


「し、しまったぁ」


山脇は自分の横をすり抜けられたことに驚き、自らの油断が言葉になった。


「ぎゃぁ~」


悲鳴と共に陣幕が開き、袈裟に切られた亭主の男が、全身を痙攣させながら、放り出された。


「身の程知らずの下郎がぁ~」


真っ赤に染まった陣羽織、返り血で濡れ、鬼の形相となった成元が陣から出て来た。


「と殿・・・」


山脇は、それ以上言葉にならなかった。


「おい、この腐れ外道どもを、そこの池に沈めてしまえ」


成元の言葉に、ひれ伏していた足軽たちが、息絶えた男と女の死骸を素早く担ぎ上げると、

言われた通りに目の前の池に沈めたのだった。


その池は、薙ぎの池と云う、その昔、此の辺りで疫病が流行り、その時に何百、何千と云う屍を此の池に沈めたのだった。

人の消えた村は一つや二つではなかったらしい。

その時、偶然にも通りがかった一人の僧侶が、あまりにも悲惨な光景を目の当たりにし、供養の為、自らもこの池に入り、鎮魂の経を唱えながら沈んで逝ったという。

そして、二度とこのような事が起こらないよう、大蛇となり此の池の守り神となったと云う伝説が口伝されていた。


その薙ぎの池に、今再び、屍が沈められた。


「陣を引くぞ、急げ急げ、ぐずぐずするでないぞ」


宗兵衛の号令と共に、撤収が始まった。

と、同時に静かに雨が降り出した。


帰城を知らせる為、夜目の効く山脇が早馬にて先に城に向かった。

ひたすら無言で走る、振り向きもせず、只、ひたすらに・・・


急遽の撤収にて大騒ぎとなった狩場では、足軽たちのため息が聞こえる。


「全く、あの殿様にゃあ毎度のことだけんが、いっつもこうだ」


「おい、滅多なこたあ言うんじゃあねえだよ、聞こえたら、何されるかわっかんねえんだからな」


「おっかねえ おっかねえ・・・さあ、はよ片付けちまうぞ」


少しずづ、雨足が強くなっていた。


「宗兵衛、そろそろ止めんか、いつまで呑んで居る」

人気のなくなった陣幕の中、成元が、呑み続ける大男を窘めた

「では、この続きは城に戻り、大殿を交えて呑み直すと致しましょうや」

宗兵衛がふらふらと立ち上がり、言った。


「くくく、起きるはずもないわ、親父殿はの」


そう言うと、成元は池の辺の方へと、用を足しに向かった。

その頃になると、雨足はいっそう激しくなっていた。


「ほんにつまらなんだ、ああ、つまらなんだ」


成元がぶつぶつと云いながら用を足していると、池の中ほどから何か聞こえてくる。

ぴしゃぴしゃと聞こえるその音は、どうやら雨の音とは違うようだ。


「ん、何だぁ~」


成元が池の中ほどに目を凝らした・・・その時だった。

杉の大木ほどの闇の塊が、成元めがけて襲い掛かった。


「あああ・・・なな何だぁ~・・・う、うわわうあぁ~」


闇の塊に体半分飲み込まれた男の顔が、恐怖と絶望で歪んでいる。

全てを諦めたのだろうか、両の腕がだらりと下がり、見開いた瞳の生気が消えていった。

そして、ぐらりと横になった影は静かに、池の奥深くに沈んでゆく。


「わ、若ぁ~、若ぁ~」


悲鳴を聞きつけ、宗兵衛が転がるように駆け付けた。

静まり返った池の辺で、茫然と立ちすくむ。


「馬場様、馬場宗兵衛様・・・」


暗がりより近づき、宗兵衛の足元にひれ伏した男達二人。


「おお、草のものか・・・何があったと・・・と、殿は・・・」


草のものと呼ばれた男たちは、かつて、真田家に仕えた忍びの者たちだった。


「申し上げにくいのですが、成元様は・・・池の中かと」


「なな、何を言っておる、池の中とは・・・何のことだ」


宗兵衛が叫んだ・・・雨に濡れた顔じゅうの髭が、ぴんぴんと逆立っている。


「池の奥よりい出し・・・大蛇おろちに食われなされ申した」


静かな口調で言い放った。


それから一刻、降りしきる雨の中、松明を掲げた足軽たちの成元を呼ぶ声が、この池の辺、

止むことは無かった。


尚、城で若殿の帰りを待ちわびていた山脇に、その凶報が届いたのは、半時程経った頃であった。


「で、宗兵衛は?馬場はどうした」


山脇の顔が悲痛に歪んでいる。


「は!馬場殿は・・・馬場殿は、その場で・・・割腹なされたと」


「なな、なんと!誠か!」


 山脇の顔から血の気が引いてゆく・・・。


急遽忠臣された城代、岡部元信は激怒。山脇を筆頭とする侍頭達を呼びつけると、


「お前達、直ぐに狩場に戻り、埋めてしまえ!池を、その池を埋めてしまえ」


深い眉間のしわと共に、逆立った揉み上げが、怖ろしいほどの怒りを露わにしている。


「お、お待ち下され・・・大殿!」


山脇が叫んだ。


「何だ!山脇大全、問答無用ぞ、直ぐに掛かれ!」


「暫し、暫しお待ちを、狩場の一帯は、広く湿地となっており、それ故に・・・敵からの侵入を拒んでおりまする、まして池を埋めるなどと、あってはなりませぬ、西側から侵入する敵に、此の城までの橋を架けるようなもの!」


「ええい!大全、いつから腰抜けになった!お前には見えんのか?わしの後ろには何が見える、言うてみい!」


元信の顔が真っ赤に高揚し、湯気が上がっている。


「ははあ!・・・恐れながら、武田菱・・・かと」


「そうじゃ、武田ぞ!此の旗の元に、何処ぞの弱小大名が刃向かうと言うのじゃあ、

武田勝頼様を、うぬは、愚弄するか!」


「め、滅相も御座いませぬ」


「もうよいわぁ~!、お前のような腰抜けに用は頼まん!今、即刻、侍大将の任は解く、

辞っ居いたせ!」


元信の、怒りに任せた言葉に山脇は呆れた。


(何と愚かな・・・もう、しまいじゃ、此の城もしまいじゃ、信玄公亡き後、

勝頼様では力不足・・・故に、出城も一つ、また一つと落とされておるではないか、

武田は・・・終わった。ああ・・・お館様・・・さぞや、お嘆きで御座ろう)


時を待たずして、裏門から出た山脇の元へ、数人の足軽達が駆け寄った。


「や、山脇様」


「おお、お前達、すまなんだな、もうわしに使えることは無くなった、しかし、安堵せよ、

侍頭の平野幸兵衛に、お前たちの事は頼んでおいた」


「おらたちは、おらたちは・・・どこぞの家来にはなんねえだで、水飲み百姓だったおらたちを家来にしてくれた山脇様より他、使える気はねえだ、こうして母あやガキどもに、まんま食わせられたのも、みんな、山脇様のおかげだで、今度は、わしらが恩返しする番だで、なぁ~に、わしら、根っからの百姓だで、粟や簸えなんぞは、作るなあ、お手のもんだで・・・なぁ、みんな」


「お前達・・・」


その後、城から出た山脇大全は、供養の為、埋め立てられた薙ぎの池の辺に小さな庵を立て、無縁と名乗り、元家来数人と此の地に留まった。


そして、一年後・・・山脇の言った通り、西側から攻め入った徳川軍に包囲され、高天神城は・・落ちた。


その戦にて討ち捨てられた屍達を、ねんごろに弔う姿に感心した徳川家康によって、新たにお堂が建立され、薙ぎの院と名付けられ、無縁は、初代住職なった。

そして、その後・・・此の地は封印され、山脇家により、代々守り続けられるのである。


       雨の白日夢


静かに雨が降り始めた。


「お客さん、窓、拭いていいですかね?」


「あ、じゃあお願いします」


「この車、アルピナですよね、こんな田舎じゃ、滅多に見れないもんで、それと、沢山入るんでしょうね油、でも、ほんとにいいんですか、三千五百円ぶんで?」


「ああ、いいよ、十分だ」

(参ったな・・・これで、スッカラカンだ、俺の財布、大体、何でこんなとこに居るんだよ俺・・・ナビはフリーズしたまんまだし、携帯は壊れちゃったし・・・雨まで降って来るし・・・此処、どこよ? あああ・・・もう、嫌だぁ~)


軽く上げてあったリーゼントが前に垂れ下がり、何となく寂しげに映る男、

未だ、京助・・・帰れず・・・。


        シンクロする意識


「くくく・・・だから、のろまと言っているんですよ」


少しづつ強くなってゆく風に、ずさりと一歩後ろへ下がった京助の体が、硬直してゆく。


(なな何なんだ・・・こいつ・・・)


この商売を始めてから、幾度となく感じてきた恐怖、しかし、目の前にいる男の体から発せられる忌みな力の塊は、今までの恐怖を根底から打ち崩すぐらい強烈なものだった。


「さあ、どうします?もう降参ですか・・・まあ、負けを認めるも何も、はなから見えてましたけどね、あなたも感じていたはず」


確かに・・・飛ばされた念圧の速さは、尋常ではない、避けきるだけで精いっぱい。

京助もそれは分かっていた、言霊を練る間もなかったからだ。

しかし、やるしかないと悟った時、微かに、頭の片隅のリミッターが、外れる音がした。


急ぎ練り上げた言霊を、左右の小指に絡みつかせた。

今、龍言が京助から撃ち放たれる。


「遅い!遅いんですよ!」


 そう言った男の右手が、鎌の形となった。

京助の両耳の真横を、凄まじい勢いとなった疾風が抜けていった。

と、今にも飛び出そうとしていた二つの龍が、一瞬にして消えてゆく・・・。


「くわぁ~!」


京助の絶叫がこの林の中にコダマする。

がくりと膝まずいた体が、バランスを崩す。

必死に立ち上がろうとするが、体が思うように動かない。

そして、激痛が走る両腕を見ると、なんと、左右の腕が両肩から、もぎ取られているではないか。

ほとばしる血液で全身が濡れて行く・・・。


「もう終わりですか?つまらないものですね、とてもお強い物を御持ちだと云うのに、

使い方がまるでなっておりませんよ・・・残念です、せめて、私が楽にして差し上げましょうや・・・」


膝まづいたまま、身体を大きくくねらせた京助の顔が、激痛でゆがんでいる。


(ううう・・・まるで、強大な・・・かまいたち・・・ちッ! 殺られるってか)


「さあ、終わりにしましょう」


今一度、男の腕が鎌の形をとった。

京助の胸を貫いた念圧が、血管と云う血管を引き千切り、心臓もろとも背中から飛び出して行った。

残圧感を残したまま、京助の体が、静かにゆっくりと仰向けに倒れて行く。

即死した京助の額に、静かに雨の雫が落ちた・・・。



響き始めた雷鳴が、少しづつ近づいて来ているようだ。 

激しくなってゆく雨の中、開けたスギ林の中、二つの影がある。


「へぇ~、面白い力・・・持ってんだなぁ~・・・お前」


京助の興味は、目の前にいる若者を捕まえて離さない。


「何なんだよ・・あんた」


窪み始めた足元のぬかるみを気にしながら、若者の目線が京助を睨みつける。


尚も激しくなる雨足が、二人の影をボカシ、消し始める。


「もう一度、打ってみな、その・・・面白い念撃を、さあ・・」


珍しく、京助が挑発している。

その瞬間、若者の右手が、鎌の形をとる・・・。


「ふ、来るか・・・」 京助が身構えた。


ぎゅいぃ~ん・・・擦れ合った金属が、引き裂かれるような音がする。


間合いの中、真ん中あたりで消滅した念撃がむなしく砕け散った。

いつの間に打ったのか、京助の強大な龍が、若者めがけて襲い掛かる・・・。

避けようと飛び上がった若者の体が、一瞬九の字に曲がった。


「ぐげぇ~・・・」


胸から下を喰いちぎられた上半身が逆さに落ちた。

どさりと地に着いた若者の目から・・・光が消えた・・・。


        NEXT

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ