異能の闇
お待たせ致しました。
前回の「お祓い屋 京助」に引き続き、続偏としてお送りしますが、今回は連載にさせて頂きます。
「続・お祓い屋 京助」前回同様、楽しんで頂ければ幸いです。
天正九年、徳川軍五千をもって、遠州は難攻不落と云われた城を包囲、
籠城を余偽なくされた武田勝頼が家臣、岡部元信率いる戦力は六百足らず。
補給路を断れた城の中は、悲惨なものだった。
餓死者が続出する中、岡部は少なくなった兵を率い、城から討って出る。
結果、全員討ち死にとなった。そして、掃討された鶴舞城は、徳川のものとなる。
まるで鶴が舞が如く美しい形を見せる丘陵、地の利を生かして築城されたこの山城の本名は、高天神城と云う。
これより一年ほど前…
「若ぁ~、待たれよ、暫し、暫し」
土煙の中、疾走する騎馬二つ・・・
後方の馬上、たっぷりと蓄えられた髭の中から、大口を開けて叫ぶ侍従に、
「はっはは 聞こえぬわぁ~、早う来い宗兵衛、日が暮れるぞ」
深く被った編み笠が向かい風の中、激しく揺れている。
若と呼ばれた者の名は、鶴舞城こと高天神城、城代、岡部元信が嫡男、岡部成元と云う。
「どう、どどう・・・」
高く振り上げた手綱が、勢いあまる馬の鼻先を上げた。
成元が止めた馬の横に、少し遅れてぴたりと、宗兵衛の馬も止まった。
「いい加減になされよ、若にもしもの事あらば、大殿に申し開きが出来ませぬ」
上がる息を整えながら、横の若者に苦言を刺した。
「はっははは、相変わらず口が減らんのう宗兵衛は、そんなにわしが阿呆に見えるか」
屈託のない笑みを浮かべ、若者が笑う。
「全く、若には敵いませぬわ、わっははは」
呆れながらも、安心したのか、くしゃくしゃになった顔が大笑いする。
狩場の夕日が深く西に傾き、夜のとばりが近いことを告げていた。
家来十数人、かなり遅れて到着するも、どっぷりと日が暮れた狩場、開けた場所に陣張りをし、夜狩りの準備に暇ない。
その様子を横目で見ながら、六尺もある身の丈をのけ反らし、どんぶりのような茶碗に並々と酒を注ぎ入れ、グビグビと飲み干す大男。
四隅に焚かれたかがり火に照らされて、真っ赤になった頬を、ぴたん、ぴたんと叩きながら、酒臭い息を吐き散らし、狩りの自慢話で得意げになっている宗兵衛に呆れながらも、頼もしいと思う成元であった。
「おいおい宗兵衛、しこたま呑んで居るが、夜狩りは大丈夫なのか」
突然の声に、巨体を捻り振り向いた宗兵衛の前に、にたりと笑い立つ男。
「おお、山脇ではないかぁ~、遅い、遅いぞう・・わっははは」
「何を言うか、おぬしが先走ったのではないか」
山脇と呼ばれた男が宗兵衛の横に腰掛けると、主である成元に向き直り、深々と頭を下げ腰の物を下ろし、あらためて立ち上がった。
「若殿、遅れ申したが、夜狩りに間に合うて御座る」
「山脇か、お前の夜目には感心するばかり、今宵も頼んだぞ」
「承知致しまして御座る」
「ささ、駆け付けに一献、呑めや呑めや」
「かたじけのう御座る、では」
成元から注がれた酒を一気に飲み干した。
「殿ぉ~、殿ぉ~、」
見張りで出しておいた足軽が大声で叫びながら、陣幕を上げ、覗き込んだ。
「何事かぁ~、御前だぞ」
山脇が立ち上がり窘めた。
「や山脇様、不審な輩を捕まえまして、もしかしたら、徳川方の間者かと」
「な何と・・・間者と」
すかさず太刀を腰に戻すと、
「宗兵衛、殿を頼む」
みぢかく言うと、山脇は足軽に案内させ、陣の外に走った。
「何処だ、何処におる」
「はい、其処の杉の木にひっちばってありやす」
それを聞くと、太刀を握り、警戒しながら言われた場所に近づいた。
「おい、誰か、灯りを持て」
山脇の言葉が終わらないうちに、何か所からか灯りが照らされ、杉の木の根元が照らし出された。
「ほぉ~、男が一人、それと、くのいち・・・か」
ずずっと近づく山脇に、
「ち違いますだ、わしら、この先の丹野の百姓で御ぜえます、それと、こいつぁ、わしの女房だで」
必死の形相で否定している男の顔が、今にも泣きだしそうになっている。
「では、何故此処におる」
「女房が身籠で、実家に送り届ける途中で御座いやした、まさか、お狩場たあ、知りもせんで、お許し下さいませ」
全身を震わせながら、懇願する男を見て、嘘をついているようには思えなかった。
「間者とは、何処におる」
成元がその場に現れた、酔っぱらった宗兵衛も荒い息を吐きながら、成元の傍に付いた。
「殿、どうやら通りすがりの百姓の様で」
見立て通りに山脇が言った。
「何だ、つまらん、早々に追い返せ」
その時だった、一つの灯りが女房と云った女を映し出した。
「ほほぉ~、色の白いいい女ではないか」
見るなり、成元が立ち止まった。
(まずい、まずいぞ、若殿は無類の女好き・・・このままでは)
「殿、ささ、構っておらずとも、早ように夜狩りの準備と致しましょうや」
山脇の言葉が終わらないうちに
「宗兵衛、その女、連れて来い」
成元の顔が見る見る好色に染まってゆく。
「ははぁ~、かしこまって御座る、喜べ女、殿が御所望ぞ」
「ああぁ~、御勘弁を、何卒、御勘弁をぉ~」
号泣しながら、亭主の男が懇願した。
「あんたぁ~、怖い様、怖い様」
泣きじゃくる女房を見て、山脇もたまらず言い放った。
「殿、殿、何もこんな百姓の、それも腹ぼての女ですぞ、殿の威厳に関わりまするぞ」
「おいおい、山脇、殿の御命令じゃて、口出し無用じゃ」
「宗兵衛、お前からも、な、頼む」
その間にも、血の気が引いた女の顔が恐怖でゆがんでいる、その脇で、亭主は膝まづき、震えながらも懇願している。
そして、思わぬ結末が・・・
自らの舌を噛み切った女が、その細い口から鮮血を迸らせながら、悶え苦しむ。
そして、時を掛けず絶命した。
倒れこんだ女の顔が、真っ赤な血だまりの中、半分程沈み込んでいた。
「あああ・・・な何と・・・なんてこったぁ~」
へなへなと座り込んだ亭主の肩が、がくりと下がった。
「こんな、ああ、こんなことが」
たまらず口走った山脇の口を、宗兵衛が慌てて両の手で塞いだ。
「山脇、黙っておれ、黙って・・・」
山脇の耳元で囁いた。
「何だ、つまらん、やめじゃやめじゃあ、おい、宗兵衛、帰るぞ城に」
成元がそう言い放つと、陣幕の中に消えた。
それを聞いた亭主の男が、むくっと立ち上がると、
「この野郎ぉ~、よくも、よくも女房を、わしの子供をぉ~、許さねぇ~許さねぇ~」
凄まじい形相で駆け抜けると陣幕の中へと飛び込んでいった。
「し、しまったぁ」
山脇は自分の横をすり抜けられたことに驚き、自らの油断が言葉になった。
「ぎゃぁ~」
悲鳴と共に陣幕が開き、袈裟に切られた亭主の男が、全身を痙攣させながら、放り出された。
「身の程知らずの下郎がぁ~」
真っ赤に染まった陣羽織、返り血で濡れ、鬼の形相となった成元が陣から出て来た。
「と殿・・・」
山脇は、それ以上言葉にならなかった。
「おい、この腐れ外道どもを、そこの池に沈めてしまえ」
成元の言葉に、ひれ伏していた足軽たちが、息絶えた男と女の死骸を素早く担ぎ上げると、
言われた通りに目の前の池に沈めたのだった。
その池は、薙ぎの池と云う、その昔、此の辺りで疫病が流行り、その時に何百、何千と云う屍を此の池に沈めたのだった。
人の消えた村は一つや二つではなかったらしい。
その時、偶然にも通りがかった一人の僧侶が、あまりにも悲惨な光景を目の当たりにし、供養の為、自らもこの池に入り、鎮魂の経を唱えながら沈んで逝ったという。
そして、二度とこのような事が起こらないよう、大蛇となり此の池の守り神となったと云う伝説が口伝されていた。
その薙ぎの池に、今再び、屍が沈められた。
「陣を引くぞ、急げ急げ、ぐずぐずするでないぞ」
宗兵衛の号令と共に、撤収が始まった。
と、同時に静かに雨が降り出した。
帰城を知らせる為、夜目の効く山脇が早馬にて先に城に向かった。
ひたすら無言で走る、振り向きもせず、只、ひたすらに・・・
急遽の撤収にて大騒ぎとなった狩場では、足軽たちのため息が聞こえる。
「全く、あの殿様にゃあ毎度のことだけんが、いっつもこうだ」
「おい、滅多なこたあ言うんじゃあねえだよ、聞こえたら、何されるかわっかんねえんだからな」
「おっかねえ おっかねえ・・・さあ、はよ片付けちまうぞ」
少しずづ、雨足が強くなっていた。
「宗兵衛、そろそろ止めんか、いつまで呑んで居る」
人気のなくなった陣幕の中、成元が、呑み続ける大男を窘めた
。
「では、この続きは城に戻り、大殿を交えて呑み直すと致しましょうや」
宗兵衛がふらふらと立ち上がり、言った。
「くくく、起きるはずもないわ、親父殿はの」
そう言うと、成元は池の辺の方へと、用を足しに向かった。
その頃になると、雨足はいっそう激しくなっていた。
「ほんにつまらなんだ、ああ、つまらなんだ」
成元がぶつぶつと云いながら用を足していると、池の中ほどから何か聞こえてくる。
ぴしゃぴしゃと聞こえるその音は、どうやら雨の音とは違うようだ。
「ん、何だぁ~」
成元が池の中ほどに目を凝らした・・・その時だった。
杉の大木ほどの闇の塊が、成元めがけて襲い掛かった。
「あああ・・・なな何だぁ~・・・う、うわわうあぁ~」
闇の塊に体半分飲み込まれた男の顔が、恐怖と絶望で歪んでいる。
全てを諦めたのだろうか、両の腕がだらりと下がり、見開いた瞳の生気が消えていった。
そして、ぐらりと横になった影は静かに、池の奥深くに沈んでゆく。
「わ、若ぁ~、若ぁ~」
悲鳴を聞きつけ、宗兵衛が転がるように駆け付けた。
静まり返った池の辺で、茫然と立ちすくむ。
「馬場様、馬場宗兵衛様・・・」
暗がりより近づき、宗兵衛の足元にひれ伏した男達二人。
「おお、草のものか・・・何があったと・・・と、殿は・・・」
草のものと呼ばれた男たちは、かつて、真田家に仕えた忍びの者たちだった。
「申し上げにくいのですが、成元様は・・・池の中かと」
「なな、何を言っておる、池の中とは・・・何のことだ」
宗兵衛が叫んだ・・・雨に濡れた顔じゅうの髭が、ぴんぴんと逆立っている。
「池の奥よりい出し・・・大蛇に食われなされ申した」
静かな口調で言い放った。
それから一刻、降りしきる雨の中、松明を掲げた足軽たちの成元を呼ぶ声が、この池の辺、
止むことは無かった。
尚、城で若殿の帰りを待ちわびていた山脇に、その凶報が届いたのは、半時程経った頃であった。
「で、宗兵衛は?馬場はどうした」
山脇の顔が悲痛に歪んでいる。
「は!馬場殿は・・・馬場殿は、その場で・・・割腹なされたと」
「なな、なんと!誠か!」
山脇の顔から血の気が引いてゆく・・・。
急遽忠臣された城代、岡部元信は激怒。山脇を筆頭とする侍頭達を呼びつけると、
「お前達、直ぐに狩場に戻り、埋めてしまえ!池を、その池を埋めてしまえ」
深い眉間のしわと共に、逆立った揉み上げが、怖ろしいほどの怒りを露わにしている。
「お、お待ち下され・・・大殿!」
山脇が叫んだ。
「何だ!山脇大全、問答無用ぞ、直ぐに掛かれ!」
「暫し、暫しお待ちを、狩場の一帯は、広く湿地となっており、それ故に・・・敵からの侵入を拒んでおりまする、まして池を埋めるなどと、あってはなりませぬ、西側から侵入する敵に、此の城までの橋を架けるようなもの!」
「ええい!大全、いつから腰抜けになった!お前には見えんのか?わしの後ろには何が見える、言うてみい!」
元信の顔が真っ赤に高揚し、湯気が上がっている。
「ははあ!・・・恐れながら、武田菱・・・かと」
「そうじゃ、武田ぞ!此の旗の元に、何処ぞの弱小大名が刃向かうと言うのじゃあ、
武田勝頼様を、うぬは、愚弄するか!」
「め、滅相も御座いませぬ」
「もうよいわぁ~!、お前のような腰抜けに用は頼まん!今、即刻、侍大将の任は解く、
辞っ居いたせ!」
元信の、怒りに任せた言葉に山脇は呆れた。
(何と愚かな・・・もう、しまいじゃ、此の城もしまいじゃ、信玄公亡き後、
勝頼様では力不足・・・故に、出城も一つ、また一つと落とされておるではないか、
武田は・・・終わった。ああ・・・お館様・・・さぞや、お嘆きで御座ろう)
時を待たずして、裏門から出た山脇の元へ、数人の足軽達が駆け寄った。
「や、山脇様」
「おお、お前達、すまなんだな、もうわしに使えることは無くなった、しかし、安堵せよ、
侍頭の平野幸兵衛に、お前たちの事は頼んでおいた」
「おらたちは、おらたちは・・・どこぞの家来にはなんねえだで、水飲み百姓だったおらたちを家来にしてくれた山脇様より他、使える気はねえだ、こうして母あやガキどもに、まんま食わせられたのも、みんな、山脇様のおかげだで、今度は、わしらが恩返しする番だで、なぁ~に、わしら、根っからの百姓だで、粟や簸えなんぞは、作るなあ、お手のもんだで・・・なぁ、みんな」
「お前達・・・」
その後、城から出た山脇大全は、供養の為、埋め立てられた薙ぎの池の辺に小さな庵を立て、無縁と名乗り、元家来数人と此の地に留まった。
そして、一年後・・・山脇の言った通り、西側から攻め入った徳川軍に包囲され、高天神城は・・落ちた。
その戦にて討ち捨てられた屍達を、ねんごろに弔う姿に感心した徳川家康によって、新たにお堂が建立され、薙ぎの院と名付けられ、無縁は、初代住職なった。
そして、その後・・・此の地は封印され、山脇家により、代々守り続けられるのである。
雨の白日夢
静かに雨が降り始めた。
「お客さん、窓、拭いていいですかね?」
「あ、じゃあお願いします」
「この車、アルピナですよね、こんな田舎じゃ、滅多に見れないもんで、それと、沢山入るんでしょうね油、でも、ほんとにいいんですか、三千五百円ぶんで?」
「ああ、いいよ、十分だ」
(参ったな・・・これで、スッカラカンだ、俺の財布、大体、何でこんなとこに居るんだよ俺・・・ナビはフリーズしたまんまだし、携帯は壊れちゃったし・・・雨まで降って来るし・・・此処、どこよ? あああ・・・もう、嫌だぁ~)
軽く上げてあったリーゼントが前に垂れ下がり、何となく寂しげに映る男、
未だ、京助・・・帰れず・・・。
シンクロする意識
「くくく・・・だから、のろまと言っているんですよ」
少しづつ強くなってゆく風に、ずさりと一歩後ろへ下がった京助の体が、硬直してゆく。
(なな何なんだ・・・こいつ・・・)
この商売を始めてから、幾度となく感じてきた恐怖、しかし、目の前にいる男の体から発せられる忌みな力の塊は、今までの恐怖を根底から打ち崩すぐらい強烈なものだった。
「さあ、どうします?もう降参ですか・・・まあ、負けを認めるも何も、はなから見えてましたけどね、あなたも感じていたはず」
確かに・・・飛ばされた念圧の速さは、尋常ではない、避けきるだけで精いっぱい。
京助もそれは分かっていた、言霊を練る間もなかったからだ。
しかし、やるしかないと悟った時、微かに、頭の片隅のリミッターが、外れる音がした。
急ぎ練り上げた言霊を、左右の小指に絡みつかせた。
今、龍言が京助から撃ち放たれる。
「遅い!遅いんですよ!」
そう言った男の右手が、鎌の形となった。
京助の両耳の真横を、凄まじい勢いとなった疾風が抜けていった。
と、今にも飛び出そうとしていた二つの龍が、一瞬にして消えてゆく・・・。
「くわぁ~!」
京助の絶叫がこの林の中にコダマする。
がくりと膝まずいた体が、バランスを崩す。
必死に立ち上がろうとするが、体が思うように動かない。
そして、激痛が走る両腕を見ると、なんと、左右の腕が両肩から、もぎ取られているではないか。
ほとばしる血液で全身が濡れて行く・・・。
「もう終わりですか?つまらないものですね、とてもお強い物を御持ちだと云うのに、
使い方がまるでなっておりませんよ・・・残念です、せめて、私が楽にして差し上げましょうや・・・」
膝まづいたまま、身体を大きくくねらせた京助の顔が、激痛でゆがんでいる。
(ううう・・・まるで、強大な・・・かまいたち・・・ちッ! 殺られるってか)
「さあ、終わりにしましょう」
今一度、男の腕が鎌の形をとった。
京助の胸を貫いた念圧が、血管と云う血管を引き千切り、心臓もろとも背中から飛び出して行った。
残圧感を残したまま、京助の体が、静かにゆっくりと仰向けに倒れて行く。
即死した京助の額に、静かに雨の雫が落ちた・・・。
響き始めた雷鳴が、少しづつ近づいて来ているようだ。
激しくなってゆく雨の中、開けたスギ林の中、二つの影がある。
「へぇ~、面白い力・・・持ってんだなぁ~・・・お前」
京助の興味は、目の前にいる若者を捕まえて離さない。
「何なんだよ・・あんた」
窪み始めた足元のぬかるみを気にしながら、若者の目線が京助を睨みつける。
尚も激しくなる雨足が、二人の影をボカシ、消し始める。
「もう一度、打ってみな、その・・・面白い念撃を、さあ・・」
珍しく、京助が挑発している。
その瞬間、若者の右手が、鎌の形をとる・・・。
「ふ、来るか・・・」 京助が身構えた。
ぎゅいぃ~ん・・・擦れ合った金属が、引き裂かれるような音がする。
間合いの中、真ん中あたりで消滅した念撃がむなしく砕け散った。
いつの間に打ったのか、京助の強大な龍が、若者めがけて襲い掛かる・・・。
避けようと飛び上がった若者の体が、一瞬九の字に曲がった。
「ぐげぇ~・・・」
胸から下を喰いちぎられた上半身が逆さに落ちた。
どさりと地に着いた若者の目から・・・光が消えた・・・。
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