あれ?Cクラスは、面倒くさくない?
あんなに嫌がっていた学園に入学して、1か月が経った。
相変わらず、「勉強しろ」とつきまとうリカルドは面倒くさい。
寮でまったりしていても、探しにきて学習室に連行されるし、休み時間や放課後にもやってきて、一緒に勉強させられる。本当に、うんざりだ。
なぜ、そんなに頑張るの?と聞いたところ、あまりにも情けないリチャードおじ様に代わって、「立派な侯爵様になる」のが目標らしい。・・・素晴らしい心がけだと思う。
私に関係なければね!!!
リカルド的には、私は婚約者だから、「立派な侯爵夫人」に仕立てたいらしいけど、このまま頑張らなければ、ヒロイン(まだ探してない!どこにいんだろ?やっぱAクラス???)が現れて、リカルドと恋に落ちるから、私は婚約破棄されちゃうんだろーし、ますます頑張る気にならないのだ。
なので、私はリカルドを避ける事にした。
どうするかって言いますと、リカルドの他にお友達を作る!
ただそれだけです。
リカルドはとーっても完ぺきなお貴族様で立派な紳士なんだけど、7歳まで庶民暮らしをしていたせいか、知らない貴族の子たちにガンガンいけない。表面を取り繕って、絶対に踏み込まない。
だから、私がクラスの子たちといると、私を無理やり連行したりできないのだ!!!
私にはしつこく勉強しようと言いつのるが、クラスのお友達が「エミリアさんと放課後にお茶する予定ですの。」なんて言ってくれたら、簡単に引く。
・・・そうやってリカルドを避けてたら、私は意外な事に気が付いてしまったのだ。
学校、ちょっと・・・いや、かなり、楽しいんですけどーーー!!!
なんと言うか、Cクラスって最っ高にいい感じなんですけどーーー!!!
Cクラスってね、いわば落ちこぼれなクラスじゃないですか、そのせいもあるのか、クラスの雰囲気からユルくって、みーんなまったり、のんびりしてんですよ!!!サイコー!!!
Aクラスは、幼少よりしっかり学ばれた有力者のご子息・ご令嬢が多くて、いわばエリート揃いですし、それもあって、お勉強も進みが早く高度な事まで学ばれてるそうですし(リカルド談)、Bクラスはもうちょっと頑張って、来年こそはAクラスに、そしてAクラスのエリートにお近づきになりたい!なーんて野心家な方も多くて、ちょっとギラギラした感じみたいなんですけど、まぁぶっちゃけCクラスまで落ちちゃうと、みんな諦めてるのか、クラスのみんなと仲良く楽しく学園生活送ろう!なんて思っている方が多くて、しかもお勉強もゆるめですから、まったりクラスに仕上がってるんですよ。
ちなみに、リカルドにお勉強を強制されてる私は、Cクラスでは秀才扱い!たまんないっす!!!
そんなわけで、1か月ですが、親友もできましたぁ!
1人はアメリア・ラプラス様。
赤みがかった金髪に緑の目の利発でかわいらしい女の子。お菓子作りが趣味なんですって。
南の端の方にある子爵家の五女だそうで、せっかく王都にある学園に通う事になったから勉強なんかより、王都の洋菓子屋を制覇・研究し、卒業後は領地に戻って、お父様に出資させて王都なみの洋菓子店をオープンさせるのが夢なんだそう・・・ちなみにアメリア様のご実家の近くには素敵な海岸があって、リゾート地にもなってるんですって。それで、たくさんの人が訪れるから、お土産にもできる洋菓子屋はイケる!流行る!!!って彼女は意気込んでる。
2人目はロバート・コージー様。
薄いベージュ色の髪にヘーゼルの目、ひょろっとした背の高い穏やかな男の子。趣味は読書とお散歩だそう。
北の辺境伯の三男で、どうせ爵位は継げないけど、騎士団持ちのお家だから、卒業後は家に戻って家業を手伝うんですって。でも、そんなに戦力にもならない自分は(ロバート様は、うん、にぶい。運動神経いまいちなんだよねー。)、日曜学校で子供たちに読み書きや簡単な計算なんかを教えたいんですって。「お勉強、苦手なのに?」とお聞きしたら、「子供たちにお勉強を教えるだけなら、ここ程の授業はいらないんだよー。」って言ってたので、授業の内容よりも学校の雰囲気とか教え方とかを見てるみたい。
そんな訳で、お勉強にもエリートとの接触にも興味のない私たちは、だいたい3人でまったりしている。
大抵はアメリア様の洋菓子屋巡りに付き合うか、ロバート様が読んだ本のお話を聞いたり、お散歩したりしている。
今日は3人で雲を見ていた。
私が生前読んでいた本に「病気の女の子が生きる希望を見出せずに、雲を消えるまで見て時間をつぶしていた」というシーンがあって、それをやってみようという話になったのだ。
「ねえ、エミリア様、エミリア様の読んだ本ってなんてタイトル?」
ロバート様に聞かれて、思わず詰まってしまう。前世の記憶だもん、ここにその本はない。
「・・・忘れました。・・・二人にはエミリアと呼んでいただきたいですわ。」
「私も、アメリアと呼んでください。」
「じゃあ、僕もロバートで・・・。」
3人で中庭にあるベンチにこしかけ、雲を見つめる。
「消えませんね・・・。首、痛くなってきましたわ・・・。」
活動的なアメリアは少し飽きたみたいに言った。提案したのは私だけど、私も少し飽きてきた。
でも、リカルドとのお勉強よりはいい。
「芝生に寝ころばない?アメリア、ロバート。」
「汚れちゃうよ・・・エミリア・・・。」
ロバートは意外とお上品だ。
「いいわね、エミリア。」
アメリアはすたすたと芝生まで行くと、ポスンと横たわった。
私も笑いながら近づいて、その隣に横になった。