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俺の生い立ちは微妙に最悪だ リカルドside

俺、ことリカルド・ワイブルの生い立ちは、微妙に最悪だ。


生まれた時から、俺には父親がいなかった。

俺の母親は、没落貴族の娘だったらしいが、キチンとした婚姻をせず、俺を産んだ。


母に言わせると、没落前に入学した王国学園で知り合った頭の弱いボンボンが俺の父親らしい。


卒業後に母は実家の没落が免れないと知ると、馬鹿な金持ちの青年に近づき、愛を囁いて、お金を騙しとって逃げたそうだ。

そして、少しして自分の妊娠に気がつき、俺を産んだ。母曰く、「あんたの父親、結構な美形だったし、産むのありだなーって思ったのよ。」だそうで、どうやら母は俺の父親の顔だけは気に入っていたらしい。


俺を産むと、母は騙しとったお金で、王都に小さな酒場を開いた。


母は美人だったし、頭も良かったから、酒場の経営はうまくいっていた。

たしかに庶民ではあったが、食べるに困る様な事も無かったし、庶民としてはやや裕福であったと思う。

貴族を騙してお金を奪うなど、母は男関係が最悪そうなのだが、酒場で働いていても、家に男を連れ込んできたりはしなかった。

ただただとても、忙しそうで、俺はひたすら寂しかった。

小さい頃は乳母がいたが、5歳を過ぎる頃からは、1人で過ごす様になっていた。


1人で過ごす夜は長い。


そんな母が死んだのは、俺が7歳になってすぐの冬の事だった。

珍しく「体調が悪い」と言って店を早く閉め、帰ってきた母をベッドに促したのが、母と過ごした最後の時間になった。


母はつまらない風邪で、あっけなく死んだ。


母が死ぬと、俺はどうして良いか分からずに、ただただ泣いていた。たぶん、孤児院かどこかにやられるのだろうと思いながらも、泣くしかできなかった。


母の酒場の常連さんやら、近所のおばさん達、昔俺を見ていた乳母などが手を尽くし、母の葬儀を行ってくれた。


母の葬儀の日は雨だった。


そして、そこに俺の父親だと名乗る男が現れたのだ。


リチャード・ワイブル。

侯爵だと名乗る、ものすごく俺に似た男。

周りは驚いたが、あまりにそっくりな俺たちは、どう考えても親子でしかありえなかった。


彼は悲しそうに、俺の母親の死を悼むと、父親だから俺を引き取ると少し嬉しそうに言って俺を連れて侯爵家に帰った。


この時、俺は「貴族に引き取られてラッキー。」くらいには思っていた。孤児院に行くよりは、貴族に引き取ってもらえた方が幸せになれると思ったからだ。


だけど、それは微妙に間違いで、「微妙に最悪」の始まりだった。


父は独身だったから、俺を引き取っても何も問題はなかったし、父はすぐに友達にお願いして、俺を正式な侯爵家の者にするという手続きを行ってくれたらしく、あっという間に俺たちは正式な親子になった。


父の住む侯爵家はとても華やかで、沢山の使用人がいた。

彼らは先代からこの家に仕えている者ばかりで、庶民の俺にも優しかった。そして、彼らが何かを俺に期待している事にも気がついた。


・・・実は父と暮らす様になってすぐに、俺は父がかなり残念な男だと気がついた。


父にとって大切なのは、楽しい事とエリオスという友人(しかも男)の事だけ。侯爵としての仕事はしぶしぶやっているだけだった。庶民にとっては、とても大切な事なのに、父はそんな民に何の思いも抱いてはいなかった。むしろ、僕は自分の代だけ乗り切ったら後はどーなってもいいし、僕的にはセーフ・・・くらいの感覚でやっていた。

母は仕事や経営にとても熱心だったし、店を大きくするという先を考えて、仕事に励んでいた。(あっけなく死んでしまったが。)だから、俺は大人というのは、仕事に誇りや野心を持って励むものだと思っていたので、父の態度に衝撃を受け、なぜ熱心にやらないのかと聞いた。


すると父は俺と同じ顔であざとく小首をかしげ、「え、だって僕の人生だよ?楽しくやらなきゃ損じゃん?頑張るとか疲れちゃうよー。」と言ってきたのだ。


その時、俺は決めた。

この侯爵家は俺がなんとかすると。

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