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ああ、面倒くさい!その後のお話しなんて!

それから、私とリカルドは・・・。


・・・やっぱり、私とリカルドでしかなかった。


だから、やっぱり勉強しろって追いかけられたり、かわして逃げたり、捕まって『怠け者』って怒られたり、そんな感じで過ごして行った。ま、時々は甘い時間もあった・・・かも?


お兄様は卒業して、政界に入って、毎日元気に腹黒くやってるし、たぶん、あと10年もすると、本当に宰相になってしまいそう・・・。


ロバート殿下は、王位継承レースの大本命に躍り出た。

お兄様も、ロバート殿下には乗るらしい。つまりは、そういう事。お兄様と同じ時期に王様になるんだと思う。


アメリアは、あの後すぐに元気になった。

残念ながら、傷は残ってしまったけれど。

それに付け込んだ、隠れ腹黒のロバート殿下に、罪滅ぼしという免罪符でアメリアは婚約者に仕立て上げられてしまった。そして、それ以来、地獄のお妃教育を施されていて、たぶん卒業したらすぐにでも結婚させられてしまうと思うけど・・・アメリアは幸せらしい。なりたい物が洋菓子屋さんから、ロバート殿下のお妃様に変わったってだけだから良いんだって。


アーノルド殿下は、まぁそこそこ。

ロバート殿下が大本命だけど、大穴として、それなりには頑張ってる・・・らしい。


マーガレットちゃんは、やっぱり優秀で、卒業したら外交官になるんだって。さすがだよね。女性初な上に、見た目も良いから、すでに話題の人!

あの、あざと賢い感じで、外交を是非頑張って欲しい。


私とリカルドは、卒業したら結婚する・・・らしい。


リカルドはお兄様の右腕となるべく、政界に入るんだって。

だから、「じゃあ、私は癒し担当だね。手を握ったり、背中を撫でてくれれば良いって言ったのは、リカルドなんだから、それに邁進するよ。」って言ってやったら、苦笑してた。


スチューデント家は、みんな元気。

お父様も相変わらずムキムキ腹黒だし、お母さまもフワフワ天然でやってる。


ワイブル家は、うーん。リチャード様は、やっぱりリチャード様だ。私がワイブル家にお嫁にいくなら、代わりに僕がエリオスの娘になるよ・・・なんて意味不明な事を言って、スチューデント家に住み着いてしまった。


そんな感じで、私やみんなは、何となくハッピーに暮らしてはいる。


だけど、これで私の人生は終わりじゃないし、まだまだ続くんだから、本当にハッピーエンドだったかどうかは、私がこの世を去る時にしか判らないのかもね。


◇◇◇


とうとう明日は、私とリカルドの結婚式。

だから、私は今日どうしても、やらなければいけない事がある・・・。


私は今、ワイブル家・・・リカルドのお家の、執務室にやってきている。


執務室にいるのは、もちろんリカルドだ。


・・・ちなみに、この部屋でリチャード様を見かけた事はない。うん、安定のリチャード様クオリティ。


部屋に入ると、リカルドは、机に向かい、ずっと何かを書いていた。

「ねぇ、リカルド、何を書いてるの?」

私が声をかけると、リカルドは少し驚いた顔して、頭を上げた。

「エミリア、君は・・・暇なの?明日、結婚式なのに、何でこんな所にいるの?マッサージとか、女の子は色々あるよね?」

リカルドはそう言うと、またデスクに齧り付く。


「リカルド、何してるのかなぁーって。」

「・・・お礼状を書いてるんだ。」

「え、まだ結婚式してないのに?」

「・・・式をしてからじゃ、間に合わないだろ?数が凄いんだ・・・。それに、添削もあるしな・・・。」


リカルド、真面目だな。

そんなの代筆屋にお願いして、署名だけすればいーのに。


「何も自分で全部書かなくても・・・。」

「自筆に意味があるんだ・・・エミリア、君も自分で書くんだぞ。この結婚が、感情を伴うものだと知らしめた方が良い。・・・俺が添削するから、書いたら持ってこい。君のは、式が終わってからで大丈夫だ。それまでに俺の分は終わらせておく。」

「え、面倒くさい。」

「やるんだ!」


私は不満そうに睨むが、リカルドも睨み返してくる・・・多分、これは確実にやらされる。


・・・やっぱり、リカルドは面倒くさい。


そこで、私は肝心の要件を話す事にした。

「あのね、リカルド。私、どうしても今日のうちに話しておきたい事があるんだ。」


私がそう言うと、何かを察したリカルドは、ガリガリと走らせていたペンを止め、こちらにやって来て、ソファーに座った。

「エミリアも座って。・・・何?何かあるのか?」

私はリカルドの正面にあるソファーに向かい合う様にして座った。


私は少し言いにくくて、口ごもったけど思い切って言う。

「んー。・・・あのね、今日が最後のチャンスなんだ。・・・リカルドが、悪役令嬢と婚約破棄できるのは。」

「はい?」


私は、もうリカルドの顔を見ずに、全部言おうと決めて、手元だけを見つめる。


「私は、やっぱり悪役令嬢だし、リカルドを不幸にしちゃうかも・・・。リカルドが私から逃げられるのは、今日が最後かも知れないんだよ?!」

「・・・。俺が、エミリアから逃げるのか???」

「うん。」


リカルドがこっちを見ているのが分かる。だけど、顔を上げる事はできなかった。


大きなため息が聞こえる。その後から、リカルドが続けた。

「まず・・・どっから突っ込んだらいいのか、分らないのだが、エミリアは何か・・・犯罪的な事をしてるのか?」

「え、は、犯罪なんか、犯してないよ!!!」

私はあわてて顔を上げた。リカルドとしっかりと目が合う。


「じゃぁ、どこが悪役・・・なんだ???」

「え?・・・えっと・・・どこだろ???・・・うーん。マーガレットちゃんを妬むとことか???」

「妬む・・・ねぇ。そのくらいで、悪役なのか?マーガレットに何かしたのか?」

「・・・心の中では、すごい悪口言ってるよ。」


リカルドは、考え込んでいる。

「・・・じゃぁ、エミリアの言う、素敵令嬢ってのは何だ?」

「みんなに憧れられちゃう令嬢だよ!・・・主人公!ヒロイン!みたいな感じの。」


「確かに、エミリアに憧れる奴は・・・まぁ、いないな。」


リカルド、本当の事だけど、相変わらず容赦ないね・・・!


でも、それは本当。だって、私はずっーと素敵令嬢にはなれなかった。

テストの度に、リカルドが懸命に教えてくれたけど、私はCクラスとBクラスをいったり来たりだった。

マーガレットちゃんは、ずーっとAクラスで、リカルド達と首位を競っていたし、ロバート殿下は殿下バレしてからは、Aクラスにサクッと行って、レースに参加した。・・・そして、あのアメリアでさえ、最終学年ではAクラスに滑り込んだ。・・・アメリア曰く、『愛の力!』らしいけど、私はそれすら無かったらしい!・・・ごめん、リカルド・・・。


そういう意味で、「完璧ヒロインはマーガレットちゃん」だったし「努力系ヒロインはアメリア」だった。だけど私はヒロインにはなれず、未だに「悪役令嬢」のままなのだ。


悪役令嬢なんかと結婚したら、リカルドは不幸になってしまうかもだし、ここはちゃんと最後のチャンスである事を、伝えておかねば・・・!!!悪役婦人が離婚ってのは、ラノベでは聞かない話だしね!


「ねぇ、リカルド、貴方は私みたいな悪役と結婚したら、不幸になっちゃうかも知れないんだよ?それでいいの?」


私が、意を決して言うと、リカルドは目を丸くして驚き、そして思いっきり笑った。


「ははは・・・!だからさ、何で悪役なの?悪役令嬢って、前からよく言ってるけど、なんだよ、それ。そもそも・・・俺はさ、思うんだけど、エミリアは悪役に・・・ものすごく、向いてないぞ・・・!」

「え?」

「エミリアは・・・大抵の事が面倒くさいだろ?・・・誰かを陥れたり、害したりするのは・・・ものすごく面倒くさいんだよ。そんな事を、君がやる???俺には想像もつかないんだけど!・・・悪役ってさ、ユリウス様くらい賢くて、勤勉じゃなきゃ務まらないよ。・・・どうして面倒くさがりなエミリアが、悪役だなんて思ったの?」

「え、私、悪役令嬢じゃないの?」

「・・・エミリアは、残念で面倒くさがりなだけで、悪役ではないだろ?それに誰も、エミリアが悪役だなんて、思ってない。思ってるのは、君だけだ。」


リカルドは笑いながら、私の隣にやって来て、横に座った。


「つまり、私は・・・悪役令嬢にすら、なれてなかったって事???」

「たぶん、ね。そんなのに、なりたかったの?」

私はブンブンと首を振って否定した。

リカルドは、肩を震わせて笑っている。


そして、真剣な顔になって、私に向き直ると言った。

「・・・でも、もしエミリアが悪役でも、俺は不幸にならないよ。」

「何で???」

「それは、『愛しかない』って、言ったろ?」


私は思わず赤くなる。これはいけない。秘密の言葉だ。これを言われると、私は頷く事しかできなくなる。


そうすると、リカルドは私を嬉しそうに眺めて、

「エミリアは素敵令嬢も悪役令嬢も、荷が重いよ。・・・だから、俺と結婚しよう。」


そう言って私にキスをくれた。





【終】



お読みいただき、ありがとうございました。

これにて本編は完結になります。


「おまけ」をあと1話更新して、連載中から完結済に表記を変更します。

(明日、8時に更新予定です。)

最後まで、お付き合いいただけると、幸いです。


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