ああ、面倒くさい!チェスで性格がわかるなんて!
「とにかく、ロバートには気をつけろ!見た目と中身が違いすぎる!」
「もぉ・・・!ただ単に、頭が良いだけなんじゃない?・・・お兄様だって、チェスやってて、首席なんでしょ?いるんだよ、そういう天才タイプの人。」
私は、うんざりして答える。
リカルドは、厳しい表情を緩めない。
「ユリウス様は、Aクラスだろ?」
「だから、それが何?」
「なぜ、ロバートは賢いのに、Cクラスにいる?この学園での評価は、将来の社交界・・・いや、貴族社会での評判なんだ。男ならなおの事、わざわざCクラスなど入らない。バカで将来性のない男ですって宣伝するようなもんだからな。」
ちょ、ちょっとリカルド、Cクラスバカにしすぎじゃない?!
そんな不名誉な事なの???Cクラスって???
まぁ・・・それは、とりあえず置いといて・・・確かにロバートの考査の順位は真ん中だった。
つまり、Bクラスでも真ん中くらいの学力があるって事・・・だよね?しかもお兄様と遊んでての順位だ。
ロバートがかなり賢いというのは、本当なんだろう。
確かに、そう言われると、なんでCクラスにいるのか、不思議にはなってくる。
「じゃぁ、ロバートは何でCクラスにいるの?・・・まさか私に近づく為とか、そんな変な事をリカルドは思ってるの?」
「いや、変じゃない。少なくとも、俺は疑ってるし、ユリウス様も気にしている。」
「お兄様も???」
「そうだ、彼のチェスの手は、すごく・・・『ひねくれている』らしい。きっと、それが本来の性格なんだ。」
「なにそれ、チェスの手で、性格が分かるっていうの?」
私は、半ば呆れた感じでふふんと笑った。
「分かるよ。だいたいな。エミリア、俺の手は『割と素直だけどねちっこい』らしいぞ。」
「なんか、聞きたく無かった・・・。それと、『素直』ってとこは、賛同できないから、なんとも言えない!・・・ちなみに、お兄様はどんな手なの???」
ちょっとチェスでの性格診断に興味が湧いてくる。
「ユリウス様?うーん。『合理的で腹黒い』かな。結構、コマを見捨てるしな。」
「・・・それは、合ってる気がするわ・・・って、やっぱり、チェスと性格は関係ないわよ!!!」
そう言いつつも、私はリカルドやお兄様とチェスはしないと心に決めた。
こいつら、『エミリアの手は、単純で馬鹿』とか言いそうだ。
「と、とにかく、アイツにも要注意だ。アイツと二人っきりになるな。あの、アメリアって女と一緒にいるんだ。放課後は俺が迎えにいくし、昼も一緒に食おう、な?」
「ええー。なんでそんなにリカルドと一緒にいなきゃなの?ヤダよ。」
「心配なんだ・・・頼むよ。」
リカルドは苦しそうに顔を歪めた。こういう顔をされると、私は弱い。
「はいはい。分かったわよ。」
私がしぶしぶそう言うと、リカルドは、嬉しそうに笑った。
「ねぇ、ところで、その陰謀論にアメリアは含まれないの?」
「アメリア嬢ねぇ・・・。いやぁー、ないだろ。・・・いくらなんでも、ほぼ最下位を取るなんて・・・ただの馬鹿以外にないだろ?」
「はぁ?!アメリアを馬鹿にするなんて、許せない!」
私は、ものすごく頭にきて、リカルドの鳩尾をグーで殴った。痛そうに顔を顰めたけど、知るか!
「アメリアに謝って!!!てか、Cクラス全員に謝れーーー!!!!馬鹿、リカルド!!!」
◇◇◇
私たちは、立ち話をしてしまったので、門限ギリギリに寮に戻った。
疲れてたし、最後はリカルドが失礼すぎて、ムカムカしてたから、ラウンジで別れると、すぐに部屋に戻った。
はぁー。
私は、ため息をついて、ベッドに倒れ込む。
なんだろ、たかが伯爵令嬢を奪い合うなんて、本当にそんな事、あるのかな?
確かに、お父様はうまくやってる方だけど・・・。
それにしたって、残念な仕様の私だ。
リカルドが言うところの、馬鹿で将来性のない、Cクラスに在籍中だし。
そりゃ、ラノベの主人公くらい頑張って完璧な素敵ご令嬢になってたら、モテモテ、逆ハーも分かるけど・・・。
あ・・・私、モテてはいないのか!
そうだ。みんな私を好きな訳じゃない。
みーんな、私の実家の後ろ盾狙いじゃん!私の実家がモテモテ、逆ハーなのか!!!
ええぇ・・・最悪じゃない、なんだよ。それ。
ラブはないの?ラブはさ?ラブあってこそのラノベじゃーん!!!
こんな、愛されてない主人公って酷い駄作じゃない?!
・・・作者出てこい、そして私に謝れ!!!
実家目当てじゃないヒーロー、はよ出せや!!!
・・・はぁ。
ああ、もう、なんかもう、疲れる。
私は、ふーっと息を吐いて、ベッドに仰向けになる。
天井を見つめながら、ぼんやりと考えた。
・・・アーノルド殿下は、まぁいい。
クラスが違うし、徹底的に避ければいい。親しい訳でも、親しくなりたい訳でもない。
今後、殿下には遭遇しないようにする・・・ただそれだけだ。そうしたら、リカルドも満足だろう。
でも、ロバートは違う。
やっとできた、私のお友達だ。
アメリアと3人で楽しくやってきたし、これからだって仲良くしていきたい。
リカルドの言う事は、本当なのだろうか?
ロバートも私の実家を狙ってるのだろうか???
でも、本当にそんな雰囲気を感じた事なんか無い。
ロバートは優しいけど、それは誰に対しても同じような感じだしな。
やっぱり、リカルドが意識過剰なんじゃないだろうか・・・???
そもそも、私はロバートはアメリアに好意を持ってるんじゃないかって思ったし!
何だかんだで、ロバートはよくアメリアをフォローしてた気がする・・・!
・・・あ・・・!
私は、ふと浮かんだアイデアに、ガバッと起きた上がり、叫ぶ。
「そうだ、良い事思いついた!!!アメリアとロバートをくっつければ良いんじゃない?!そしたら、リカルドも変な疑いを持たなくなるだろうし、今までみたく一緒にいられる!!!」
私は、ニヤリと笑った。これはなかなかの妙案だ。
そうだ、リカルドにも協力させよう!
うん、キューピット大作戦。
どうよ?あり、でしょ?
やっぱ、ラノベにラブは必要よ!!!(例え、それが私じゃなくってもね!!!)