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ああ、面倒くさい!王子様なんて!

ヒロインの登場に、私は固まってしまった。


そんな私にお構いなしで、二人はお互いの健闘を称えあっている。二人は笑顔だ。

美形のリカルドと、マーガレットとかっていう、ものすごく可愛い女の子(あ、ヒロインでしたっけ。)は、とってもお似合いだ。まるで一組のお人形のように、見た目も色合いもつり合いが取れてる。

・・・地味な色合いの私じゃ、そうはならない。


あ、釣り合ってるのは外見だけじゃないのか・・・。

中身も、Aクラスで首席と3位・・・今だって私が手も付けずに放棄したテスト問題(一番最後にあった、すごく難しいやつ!)について、答え合わせしてる。


しかも、リカルドは自然な笑顔を、彼女に向けている。

私は『ふーん、なにその笑顔、そんな顔できるんだ』って気分になりながら、据わった目で二人を眺めた。


なんか・・・む・か・つ・く!


リカルドは、私の婚約者なのに!

ずいぶん親しそうじゃー、ないですか!!!ぽっとでのくせにーーー!!!


イライラして、思わず自分の手をぐっと握り込む。

・・・冷静になろう。


そう、そうよ、リカルドが一時的にあの子と仲良くしたって、最終的に選ぶのは私って言ってたし!

とりあえず、この状況をお父様とお兄様にちくってやる!やに下がってんじゃーねーぞ、リカルド。

ふん、ちょーしにのってろ、バーカ、バーカ、バーカ・・・。


・・・って、私、今、完全に悪役令嬢じゃん!!!


私は、愕然となり、サッと青ざめる。

あ、あ、あ、私・・・。

リカルドとヒロインの恋路を邪魔する、嫌な奴・・・に、なっちゃってるーーー???

いやいやいや、まだなってない!なってない!

まだ、ちくってないし、何も言ってないからセーフ!!!セーフだから!!!


・・・ほんと、落ち着け、私。

私は冷静になる為に、スー、ハーと、深呼吸した。


そうだよ、そもそも私は、リカルドが面倒くさくって、ヒロインに押し付けようとしてたハズじゃないか。リカルドは・・・まぁ婚約者だって言われて育ってきてるし、そりゃーカッコいいし、あと、付き合いも長いし、嫌いじゃないけど、けど、好きとか違うと思うし・・・そういうの、考えた事ないし!

そう、そうよ。例えば、お兄様だって、知らない女の子とイチャイチャしてるのを見たら、ちょと微妙な気分になるわ・・・だから、それと同じ!それと同じだよ・・・この気持ちは。


慣れれば、きっと飲み込める、はず。

・・・多分・・・。


とにかく!二人にいじわるとか、絶対にダメだから!!!

素敵でもない怠惰なだけの私がそれをしたら、完全体の悪役令嬢ですからーーー!!!


二人が楽しそうに話す横で、私がグルグルと考え込んでいると、隣に長身の男の人がやってくる気配を感じた。てっきりロバートが来たのかと思った私は、気分を変えたくて、勢いよくそちらに向き直り、にっこり笑かけた。


・・・そこには、見たことのない、銀髪に赤い目の、鋭い印象を与える、綺麗な顔の男性が立っていた。

そして、私を見つめると、優雅に笑った。


「え?」


私は、笑顔を貼り付けて、固まった。だ、誰???


その様子に気づいたのは、リカルドだった。


「アーノルド殿下!」

リカルドが、その男に声をかける。


あ、いたねー、Aクラスに王子様。さっき2位は殿下ってリカルド言ってたな。

えーっと・・・確か・・・第四王子だったかな?

そうだ、入学する前にお兄様が、「同じ学年に王子がいるけど、どうせ王様になれないから、積極的に関わらなくていい。」やら、「優秀で野心家らしいけど、王位を狙うのには、第三夫人であるお母さまのご実家が弱いから、残念ながら王位継承争奪レースでは大穴扱い」やら・・・言ってた人だ!


ほう。こいつかぁ。

私は、貼り付けた笑顔のまま、動けなかった。王子さまは楽しそうに笑みを深めた。


「リカルド、彼女が君の婚約者?」

「・・・はい、そうです。殿下。」

なんだか不服げにリカルドが答える。

何それ、マーガレットちゃんの前だからか?あぁん???


「殿下、私もまだちゃんと紹介していただけてないのよ。」

マーガレットちゃんが可愛らしく笑い、王子を見つめ、それからリカルドに上目使いで、

「ね、婚約者様を、私たちに紹介して下さらない?」

と言った。


あ、あざとい。この女。

さっきまで、散々私をムシしてリカルドとテストの話してたじゃんか!!!

なんだよ・・・。


リカルドは、しぶしぶという感じで、私を二人に紹介した。


そうすると、王子も自己紹介してきた。

「はじめまして、エミリア嬢。・・・知ってると思うけど、私はアーノルド・ルジャンドル、この国・・・ルジャンドル王国の第四王子だよ。よろしくね。」

「は、はじめまして、アーノルド殿下。私、お顔を存じ上げなくて・・・すみません、失礼な態度を。」

そう言うと、私はきちんとした礼をとった。いくら私でもそのくらいはできる。

「いいよ、エミリア、君とは仲良くしたいからね。」

「ありがとうございます???えっと・・・リカルドと、仲が宜しいのですか???」

「そうだね・・・リカルドとはライバル・・・かな?」

ふむ・・・そっか、2位と3位だもんね。


「殿下!」

リカルドがイライラした様子で間に入ってくる。

「リカルド、すごいわね、王子様にライバルだなんて言われたわ。」

私がリカルドをそう言って褒めると、リカルドは顔を顰め、深いため息を吐いた。


「私にもご挨拶させてくださいな。はじめまして、エミリア様。私はマーガレット・エアリーと申します。エアリー子爵家の娘ですわ。」

マーガレットちゃんはにっこり笑って挨拶をした。

「は、はじめまして、マーガレット様。・・・マーガレット様は、とても優秀なんですね。首席なんて、本当にすごいですわ。」

「そんなこと、ないのですよ。私、お勉強くらいしか、取り柄がありませんの。」

ふふふっと笑うマーガレットちゃん(頭の中でくらい、この女に様はつけたくない!ちゃんで充分だ!)に、リカルドと王子も顔を緩める。

軽く、イラつくな。

勉強しかって・・・嘘だ・・・めっちゃ可愛いじゃん。それに、王子と侯爵令息はべらしといて、何言ってんだか!!!


・・・いかん、いかん。悪役が出ちゃう・・・。落ちつけ、私。もうクラスに戻ろう。


「リカルド、私もうクラスに、戻るね。」

そう言うと、リカルドはあからさまにホッとした顔になった。・・・ぐぬぬ。おのれ!!!


「アーノルド殿下、マーガレット様、それではまた。」


二人にも挨拶して、クラスに戻ろうと歩き始めると、少しして、リカルドが小走りでやってきた。そして、私の手首を掴んで引き留めた。

「リカルド?」


リカルドは、難しい顔で私をじっと見つめると、小さい声で「後で、話したい」と言ってきた。

私がコクリと頷くと、リカルドはすぐに二人の元へ戻っていった。


その時のリカルドの顔は、少しだけ泣きそうに見えた。

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