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第10話 「道中」

 十年の間に、大陸には鉄道網が築かれていた。


 未だ舗装された街道は少なく、基本的に土肌そのままの道は季節や天候によってぬかるんだり凍結したりで悪路となることが多かったが、そんな中で鉄製の軌道(レール)を敷いて「道」を確保した鉄道は乗り心地もよく、また輸送性にも優れていたため瞬く間に普及した。


 車を引くのは未だ馬であるが、魔力を用いた機械「絡繰り」による車の動力確保はできておらず、蒸気機関も最近になってその技術開発に取り組み始めた状況では、馬車鉄道は人と物の流通を担う重要なインフラとして大陸全土に敷設する事業が進められていた。


 路線が特に多いのは南方である。金の話に敏感な商人気質のクラーナ人は当初、王都の馬車事業者が考案したその計画をどこからかかぎつけ、いち早くその将来性に着目し、積極的に出資して公的な輸送網として地元各地に張り巡らせたのだった。


 「宿借り」によって破壊されてしまった都を復興して間もなく鉄道事業に乗り出したクラーナの財政は最初こそ火の車で、特に西方カシュニーなどからは「骨を折った奴が治る前から走り始めた」と呆れられたものだった。


 彼らはそれでも自分の直観を信じて事業を押し進め、今では大陸各地を繋ぐ網の目を築いた。それは間違っても「意地」などという言葉では語れない、先見の明であった。


 現在、グレニス連合王国内で最も輸送量が多いのは、国をぐるりと一周する環状路線である。


 神都プラディナムの麓、氷都ペンカーデル、碩都カシュニー、商都クラーナを回り、それら四大都市から王都ラド=ウェリントンへと向かう路線だ(プラディナムについては標高の高い山岳地帯に都があるため、その麓街に停車場が設けられている)。


 そして四主都から各地方の街へと鉄道は枝分かれし、各個の生活を結びつけているのだ。


 ソルテ村を出たシリウスたちは南側の麓街へと下りてきていた。そこで街道を行く従来の馬車に乗り、今はちょうど、北方の田舎に唯一の鉄道駅を持つ街へと移動してきたところだった。ケイから金庫番を任されたエースは人数分の乗車券を買い、出発時刻を待つ馬車へと皆を連れていく。


 車は幌掛けではなく箱型の物で、それを引く馬は一頭である。定員は十名ほどで、車内の長辺に渡した木製ベンチの上に、人数分のクッションが置かれていた。


 ドカドカと荷物を積み込んだエースたちはその一角を陣取って座り込んだ。やがて時刻が近づくと、馬のいななきと共に車輪が動き出し、街道を行くよりは振動も少なく快適な鉄道旅が始まった。


 途中の停車場で弁当を買い、エースを除く一同は一斉にふたを開けて目を輝かせた。


 それは、ペンカーデルでは主食となる白米に鳥肉と卵のそぼろをかけ、余ったスペースに野菜の煮物を詰め込んだものだった。


 全体的に茶色く質素な見た目だが、旅先で食べる弁当は家での食事とは異なり、特別な味わいがある。一日のうちでこの時間を一番楽しみにしていたミラは父親譲りの仕草で食べる前の祈りをほんのちょっぴり捧げると、早速そぼろ飯に箸を着けた。


「おや。何とも美味しそうだ」


「シリウス様も食べれたらよかったのにね~」


「本当にね。でも、こうして皆が食べている姿を見ているだけでも、僕も食事をした気分を味わえる。さあさあ、どうぞ美味しそうに食べておくれ」


 シリウスは満面の笑みを浮かべて、ミラの食事の様子を見守った。


 ちなみに、今もなお菜食主義を貫くエースはそぼろの代わりに醤油とみりんで煮た昆布を散らし、同じく煮物を詰めたものであった。


「それにしても、食べ物一つ取ったって僕の生きていた頃とはだいぶ違うんだなぁ」


「シリウス様──というか、聖霊族の皆さんはどのような食事をなさっておいでだったのですか?」


 料理が得意なジーノは(いにしえ)の食生活に興味がわき、食べるのを中断してそう聞いた。


「うーん……もっと粗食だった感じかな? とりあえず栄養になればいいからって、味付けや彩りにもあまりこだわりがなくて、素材そのままだったような? こうして今の時代の食事を見た後だと、記憶にあるそれは全く美味しそうじゃないんだよねぇ」


「そうだったのですか……」


「よくあんなの食べてたな~って思うよ」


 シリウスは遙か昔の記憶を思い出し、悔しげに言う。


「僕もお弁当、食べてみたかったな」


 しんみりとした気持ちを交えつつ、彼はふっと息をつく。しかし彼はその湿った空気が周囲に浸透する前に、何かをひらめいたようにして明るい表情で指を鳴らした。


「そうだ! 食れぽしてよ!」


「しょく、れぽ……?」


 エース以外の三人がきょとんとした顔で聞き返す。ニコニコと笑ってばかりのシリウスを前に、彼らはエースの方を向いて解説を求めた。


「確か……食べた物がどんな風に美味しいか、言葉を尽くして他者に感想を伝える……んだったかな」


「それそれ。ご飯とか出てきて一人だけ食べられないのも雰囲気落ち込むから、舌で味わえないなら代わりに耳で聞かせてもらえばいいってソラが言ってたの。もっと早く思い出せばよかったよ。年なのかな……?」


「それってつまり、ミラたちがおしゃべりして、シリウス様をおいしい気持ちにさせるってことです?」


「そういうことだね。三人は同じ物を食べているわけだし、なかなか面白いことになりそうだ」


 シリウスの提案に、普段から言葉によく触れているセナは一人勝ち誇ったような笑みを浮かべ、すぐさまつらつらと味わいを語り始めた。これが意外にも詩的で、見かけに寄らず繊細な語り口にシリウスは感心していた。


 一方で、ミラも負けじと頭の中の引き出しを開け放ち、やや大味ながらも表現力の高さを示した。


 エースはなまじ料理の経験が豊富であるためか、味の感想というよりは調理の解説に近いことを言った。


 語彙に自信がないジーノはひたすら「美味しい」を連呼するにとどまった。


「言葉の料理はセナが一番上手いみたいだね」


「ミラは~?」


「もちろんキミも上手かったよ。伸びしろがある。今後に期待だね」


「そっかぁ。お勉強がんばろっ……!」


 食べ終わった弁当箱を次の停車場に設置された回収場所に置いてきた後、講評を聞いたミラは両手に握り拳を作ってそう意気込んだ。


 そこからまたいくつかの街を経て、東方のプラディナム地方へと入ってくると、景色もがらりと変わった。


 緩やかな丘陵地形が多いペンカーデルと異なり、険しい山々が地方全域に広がる……来るものを拒み、立ち入ろうとするのであれば命の危険と隣り合わせの過酷な道を行くことになる修練の土地だ。


 数多の人命によって切り開かれた天空の街にはいつしか信心が生まれ、大地を作り命をはぐくむ一方で、土地を風化させ生命を奪うその営みを神の御業として畏れた──それが東方の成り立ちである。


 エースたちが目指すのはその信仰の総本山、神都プラディナムだ。彼の地へ連なる山脈には要所に人が暮らす街や村があり、麓から神都へと至る中間地点あたりまでであれば、鉄道は開通している。終点までは馬車鉄道を使うとして、そこから先は徒歩で登山をすることになる。


 その行程をシリウスに伝えると、彼は「歩く分には平気だ」と言って了承した。疲れない体だから、むしろエースたちよりはさっさと進んでしまうかもしれない、と彼はそんな冗談までも言った。


 そして鉄道の終点へとたどり着いた一行は、本日はひとまずその街に一泊することにし、翌日に次なる山間の街を目指して旅立つことを決めた。昼過ぎには馬車を降りていた彼らは午後の時間一杯を登山の準備に費やした。


 といっても、医術と魔女の研究で各地を回り、当然のことながら東方の山にも慣れているエースとセナがいたため、必要なものはすぐにそろってしまった。そうなると、余った時間は自然と観光に当てられることになった。


 エースは手持ちの資金の引き出しで一行を離れ、セナはあちこちを歩き回るシリウスの保護者としてついて回り、ジーノとミラはそんな三人の気配を遠くに捉えながら、互いに手をつないで市場の露店をうろうろとしていた。


 市場は混んでいたが、人の波に揉まれるほどではなかった。だからだろうか……ジーノたちは奇妙な風体の小男にしつこく絡まれていた。


「お嬢さん方、この山を登りなさるのかね? お二人じゃあ危険ですよ。どうです、あっしを案内役として雇いませんか?」


 玄人の顔つきで山道の案内を買って出るわりに、その男は少しも日に焼けておらず、手足もひょろひょろとして頼りなく、とても登山を生業にする者には見えないのだった。


 ソラが救ったこの世界だが、残念なことに暴力や騙し討ちと言った卑劣な行為は後を絶たない。女二人であるジーノとミラは最初から警戒して小男を無視していたが、相手はいつまでたっても諦めるつもりがないようだった。


 男はジーノたちが身につけているものを見て、決して貧乏人ではないことを見抜き、カモを逃してたまるかとつきまとっていた。


 加えて、ジーノの容姿がずば抜けて美麗であったことも、相手の目を引いてしまっていた。金品を奪った後であわよくば……と下衆な企みを抱いていることは明白だった。


 ジーノはその汚らしい視線からミラを遠ざけ、今こそ魔法の代わりに身を守る術としてケイから教わった柔術を繰り出す時かと身構える。──と、どこからともなくエースが現れて彼女を背中にかばった。


「失礼。妹に何かご用でしょうか?」


「おやおや、お兄さんもご一緒でしたか。行き先はどこなんでしょうかねぇ? プラディナムですか?」


「貴方にお教えすることはありません。今すぐお引き取りください」


「そう言わずに! あそこまでの道はかなーり辛いですよ? 小さなお子さんを連れてというのは危険じゃないですかねぇ。その点、あっしなら安全で楽な道を知ってますんで──」


「道案内は無用です。何度も来ている道なので」


 押しつけの親切をはっきりきっぱりと断り、秀麗な顔に冷たい表情を浮かべるエースに、小男は怯んで一歩下がる。そこに、シリウスとセナの声が届いた。


「おーい! エース、どこに行ったんだい~?」


「エースさん!」


「セナ、こっちだ」


 エースは迷わず、一行の中で荒事の対処に長けているセナを呼ぶ。彼はシリウスの首根っこを掴んで、手を挙げて居場所を示していたエースのもとへやってきた。


「俺はもう駄目だぜ、エースさん……。この人ちょこまかして一人じゃ面倒見きれねぇよ……」


「すまないね、セナ。僕の時代にはなかった珍しいものがたくさんあって、つい目があちこちに移ってしまうんだ」


「悪いと思ってんなら少しは自重して──」


 そこで、セナは厄介ごとの空気を嗅ぎ取ったようで、エースとジーノが険しい顔つきで見つめる先に目をやった。


「エースさん、こいつ誰?」


「知らない人だ。俺たちの道案内がしたいらしいんだけど……」


「ああ、ぼったくりか強盗の類ですか。常套手段ですね」


「何を言うんです。こっちの兄さんは失礼だなぁ! あっしは善意から……」


「分かった分かった。善意だろうと悪意だろうとどっちでもいいが、こっちは大陸中旅しててこの辺りの道も慣れっこなんだ。お呼びじゃねぇんだよ。失せな」


「そ、そう言われてもね……是非とも案内させていただきたいんですよォ」


 セナは虫を追い払うように、手の甲を上に向けて前後に振る。しかし小男は意地悪く食い下がった。もういっそ無視することもできるが、そうすれば男はきっと明日から始まる山の道にも勝手についてきて、着いた先で「ここまで案内をした」と屁理屈をこねて金銭を要求することだろう。セナは面倒くさそうに頭を掻くと、口をへの字に曲げ地を這う声で言った。


「さっさと消えろ」


「……金」


「アン?」


「金。払えば消えてあげますよ」


「話になんねぇな」


 言いながら、セナは小男の手を掴むと素早く足を払い、伏せた背中に腕を捻り上げて拘束した。


「ぎゃあ! いたたた痛い痛い折れるッ!!」


「馬鹿。このくらいで折れやしねぇよ」


 どの程度の力であれば骨が折れるかを熟知しているセナは、悲鳴を上げる男の腕をキリキリと押さえつける。ひょっとして乱闘騒ぎになるのではと周囲の人間は逃げていき、遠巻きに円を描いて事態の行方を見守る。


 そこに、ヒィヒィと言う小男の声を聞きつけて大柄な男が現れた。大男は野次馬をかき分けてセナの上に影を作る。


「俺の手下に何してんだ?」


「んだよ、一人じゃなかったのか。面倒くせぇな」


 男は腕の長さほどの棍棒で肩をたたき、セナを見下ろす。ついに殴り合いでも始まるか……と思いきや、大男は呆れた風にして小男を見やって言った。


「ったく、いい加減シノギくらい一人でこなせよ。何でテメェはいつもこう……」


「ワリィ、兄貴……」


「ってわけで、あんちゃん。すまねぇがそいつの手を離してやってくれねぇか」


「ああ、それは構わないぜ」


 存外、親玉は話の分かる相手なのかもしれない。皆がそう楽観する中、セナは「これで済むわけがない」と今後のお決まりな展開を予想しながら、小男を蹴り飛ばして解放した。


 そんな予感はしていても、やはり争わないに越したことはない。セナはエースに声をかけてその場をさっさと立ち去ろうとする。


 その肩に、待てと言わんばかりに棍棒の先が置かれた。


 セナはそれを腕で押しのけ、振り返って大男を睨みつける。


「おい、どういうつもりだ? お前の手下は解放したんだ。話は済んだはずだろ?」


「それはそれ、これはこれ。うちのモンが世話になった礼はしねぇとな」


「アハハハ!!」


 ──と、冷めた声で笑ったのはシリウスだった。


「あ。ごめんごめん。ちょっと昔を思い出してしまって。目先のことしか考えない愚か者っていうのは、いつの時代もいるものなんだね」


「シリウス様、にこやかに煽らないでください」


 矢面に立つセナは大男から視線を逸らさず、半眼になってシリウスを咎めた。男の方は口元をわずかにひきつらせ、後方にいるシリウスを怖がらせてやろうと凶悪な人相を作った。


「……おい、そこの白い姉ちゃん。口は災いの元って言葉、知ってるか?」


 しかしながら、そんな脅しが千年の亡霊にきくわけもなく……。


「おやまぁ。これは意外だよ、ジーノ」


「そうですね、シリウス様。あのような風体であんな言葉を知っているだなんて。私、想像もしていませんでした」


「本当にねぇ」


「だから、煽るなって……」


 今度はジーノまで一緒にニコニコして相手を挑発しにかかってくる。頭を抱えたセナは一転して臨戦態勢になり、眉をひくひくとさせて青筋を立てる大男を前に身構えた。


 男は言葉もなく、棍棒を振り上げ問答無用で襲いかかってきた。


「こうなっちゃ仕方ねぇ! エースさん、ミラたちを頼んだぜ!」


「分かった!」


 基本的に相手に手を上げないエースに守りを任せ、セナは一人先頭に立って暴力に拳で立ち向かう。騎士の職に就いていた時に持っていた武器がない今、使えるのは己の体一つである。騎士を辞して魔女の研究を本格化させてからも、旅に危険は付き物だからと日々の鍛錬を怠らず、ケイにも稽古を付けてもらっていた。要するに、獲物がなくともセナは勝つ気満々でいた。


 だが、屈強な大男が振るう樫の棍棒を素直に受け止めるのは避けるべきだろう。セナは振り下ろされる大振りの攻撃を素早いステップで避け、怒りゆえか単調な行動になりつつある男の懐に踏み込むタイミングを狙っていた。


「わぁ! お父さんやっちゃえ~!!」


「ミラ、あまり前に出ると危ないですよ」


 ジーノに抱え上げられたミラが後ろから声援を送る。


 ミラはああ言ったが、我が子の前で親が暴力を振るうのも考えものだ。セナは極力痛めつけずに制圧しようと、緩く握った両手を体の前で前後に構え、靴底で砂利を鳴らしながらじりじりと間合いを詰めていった。その間にも何度か棍棒は振るわれたが、上下左右どこに振り抜こうとも、大男の攻撃はセナをかすりもしなかった。


 やがて男は回避に徹するセナにしびれを切らし、一気に勝負を決めようと巨体に似合わぬ速度で正面から突っ込んできた。まるで轢き殺さんばかりの勢いであるが、先ほどから全ての行動を見切っていたセナが大人しく巻き込まれるわけがなかった。


 その身構えから、エースはセナの次の行動を推測する。


「ジーノ! シリウス様! こちらへ!!」


 エースはとっさに声をかけ、二人を連れて待避した。


「さすがだぜ、エースさん」


 セナはニヤリとし、突進してくる男の腕に手を伸ばす。確実にそれを掴み取り、しなやかな動きで懐に入り込んで体を反転させ、厚い胸板を背に負う。勢いのまま、セナの背中に乗り上げた男は肩のあたりを軸にぐるりと回転し──。


 気がつくと空を向いてセナを見上げていた。セナは掴んだままの手を間髪入れずに捻って、図体の大きさで有利であっても身動きができない体勢に持ち込む。


 かくして、セナは暴漢の鎮圧に成功した。


「やったー! お父さんかっこいいー!!」


「よせよせ。照れるだろ」


 大男を組み敷きながら、セナは親馬鹿の顔になってデレッと表情を崩す。周りの野次馬たちからは歓声と指笛が響いた。自分に被害が及ばないのであれば、こうした大立ち回りは見せ物として喜ばれる。しかも、屈強な男に細身の若者が勝ったとあれば、その興奮はひときわだった。


「……」


 その歓喜の中で、一人冷静な人物がいた。


 シリウスである。


 千年を経ても、人間は少しも変わらない。これまで何度となく救済が失敗してきたことから分かってはいたが、人はやはり、理不尽な理由で他者を傷つけ、騙し、己の利を得ようとする。


 なぜ、大局を見ようとしないのか。


 どうして、こうも利己的なのか。


 世界の平定を使命にしてきた聖霊族(シリウス)には、そういった人の心が分からなかった──いいや。時が経つごとに、彼は理解し始めて(・・・・・・)しまっていた。


 心のどこか、片隅に。けれどそれは確かに、そこにある。


 憤懣。


 自分だったらそうはしないのに、という不愉快な気持ち──そそくさと逃げていく大小の男を見ながら、思う。


 それが生じてしまったから、自分はもう駄目なのだ。いつか平定を自ら壊す前に、役目を交代せねばならない。


 シリウスは切迫する思いを胸に、エースの背中を見つめていた。

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