日常と非日常
この物語は結構長くなるかもしれません。物語の内容は非日常を描いています。もし、今皆さんが見ている戦争のニュース。それが我々の国で起こったらどうなるのでしょう…そういった内容を書いています。
これが現実か目を疑った。それはまるでいつもの、あのありふれた日常とは考えられない。
「おい!現状を把握しろ!」
「くそったれ!味方機が撃墜された!」
「これじゃぁ残った市民を助けることはできない!あの墜とされたヘリにはたくさんの兵士が乗っていた!」
「俺たちだけではどうすることもできないぞ!」
「隊長の指示を待て!」
「その隊長がいないんだよ!」
「敵機が来るぞ!!」
「おい!和馬!しっかりしろ!和馬!起きろ!」
そこらじゅうで声が聞こえている
「落ち着いて!近くの護送車に乗ってください!大丈夫です!ゆっくり、ゆっくり!!!」
「うわぁぁぁぁぁん!!おかぁさん!!どこ!おかぁさ…」
「撃ちまくれ!!絶対に敵機を撃墜しろ!避難までの時間をかせ…あぁぁぁ!!」
これが現実とは思えない。それはテレビで他人事のように見ていた戦争映像にそっくりだった。
「君!!ここは危ない!避難しろ!そこの護送車に乗るんだ!!」
体が震えて足が動かない。多分腰を抜かしたんだろう。
「くそっ!!!行くぞ!俺だっていつ死ぬか分からないんだからな!!」
そういうと自分の肩をがっしりとした腕がつかんだ。そこからのことは覚えていない。ただ、目を覚ました時は護送車で移動している最中だった。
自分の名前を言う。俺は斎藤のぼる…俺は斎藤のぼる…ほほをつねってみる。これは現実だ。戦争の夢でもない。俺は高校から帰る途中だった。なんだか騒がしかった。その騒がしいというのは人の声ではなく何か機械的な騒音だった。俺は帰り道で戦闘機の音をあまり聞かなかった。ただ、その日はやけに空がうるさかった。空にはカラスの群れのように無数の戦闘機が編隊を組んで飛行していた。それから間もなくだった。市内の警察がパトカーのサイレンを鳴らしながら、町中を走り始めた。
「ただいま、国内首脳官邸より隣国、アステルとの戦闘に突入したとの情報が入りました!速やかに近くの避難場所に避難してください。繰り返します!…」
俺はとっさに考えたことがあった。これは嘘に決まっていると。そもそも政府がそこまで遅く、しかも突然に発表するとは、考えられない。それに政府は国民に避難マニュアルを作っているはずだ。警察が突然来て、避難指示をするわけがない。これはきっと何かの訓練なのではないかと考えた。
「おい…のぼる…こういう展開、少しヤバくね?」
そう俺の友達である、ゆうきが言った。
「なわけあるか。もし、緊急だったのなら俺の携帯にも連絡が来るはずなんだよ。でもそんなわけでもない…大丈夫だ。何かの訓練だよ。」
俺も少し不安だった。だが、友達のまえだ。それに自分が持っている不安を打ち消すためにそういった。だがそれから少ししてから空で大きな爆発音がした。
「おい!のぼる!マジでやばいんじゃねえか!?この音って、爆発音だよな!」
この爆発音によって町の歩行者たちも少し騒がしくなっていた。
「ねぇ、これヤバくない?」
「大丈夫でしょ?そもそも政府がそんなに重大になる前に私たちに連絡してるって!何も心配しなくても平気よ!」
「でも…爆発だよ?もしかするとだけど、もう私たちは狙われているのかもしれないよ?」
「誰によ!?」
「誰って…敵にだよ!」
「敵!?君たち!いったいどういう事なんだ!!」
「ちょっ!逃げなきゃヤバいでしょ!」
「逃げるってどこに!」
「避難所に決まってるだろ!」
「俺、家にゲームもおいてきてるし、着替えだって持ってきてねえよ!!」
「大丈夫…きっと避難訓練の少し本格的なやつだよ…」
色々な人たちの声が聞こえてくる。
「のぼる!やっぱヤバいんじゃねえか!!」
「あ…あぁ…そうだな…ゆうき!避難するぞ!今すぐ家に帰って服と着替えもってこい!俺も持ってくるから!もってきたら白崎公園に集合だ!」
「わかった、でも、父ちゃん、母ちゃんはどうする!?」
「大丈夫だ、きっと避難しているはずだよ、とりあえずさっさと着替えもってこい!」
「お…おう!」
俺は走って家に向かった。幸い、両親は家にはいなかった。どちらも出張だったのだ。
「俺も急がないとな…」
俺はこのような状況になるのは初めてだった。こんなことを言うのはなんだけど少しうきうきしていた。それは、まるで非日常。変わった町。いつも静かな町。このギャップに俺は少しうきうきした。多分このような状況になるなら、ゆうきと一緒に入れる時間が長くなるかもしれない。別に好きとかいうわけではなかったのだが、それは修学旅行のようだとも考えていた。
ガチャ…
「服…服…よしできた!さっさと出発するか!」
だが、そんなことを考えていたのも一瞬にして吹き飛んだ…
「煙…?煙!?」
そこはゆうきと待ち合わせしていた場所でもあった。漠然とした不安がよぎる。心臓が早鐘のようになる。顔に血が上ってくるのは分かった。
「まさか…」
急いで階段を駆け下りる…そして、道端にでる。足に力があまり入らない。不安が強くなってくる。ゆうきが危ないかもしれない…
公園の近くに行くほど煙の臭いが強くなってくる。町の人たちは気のせいだか見かけない。公園に来る途中には人がまばらにいたが…だが、それも高齢の人たちだ。
近くには自衛隊たちが群がっていた。何かの緊急事態であるのはわかる。そしたら次の瞬間…
非日常をあなたに